38+そんな日常が素晴らしい。
「今日の体育は野球をやるぞー」
こんな寒空の最中何をやらせる気なんだ此の体育教師は……!
こんにちはアサキです。体育で野球とか怠さ極まりない。うちのクラスは十九人だからー……二チームって訳か……。二組も合わせて四チーム……そんなに分けて沢山やって何が楽しい野球。いや、野球は大好きだけども。寒い時にやるもんじゃない。
「ねぇアサ君」
「何ユウヤ」
初心者ながら普通にヒットを打ったユウヤがただ今一塁ベースに立ってます。あ、僕ファーストなんで。ただ今一組守備。
「何でアサ君一塁に居るか当ててあげるよー」
「さぁ何故でしょう」
「動きたくないから」
大正解。
基本ファーストは塁に居て良いもん。バントとかしても俺は動かない。ピッチャーのカイトに任す。
「もう眠いんだよ俺は」
「だよねー、俺も眠いのよ。昨日マヒル兄の家が幾分疲れた所為だよねー」
昨日はとても疲れた。マヒルの家から学校に来て、それだけで重労働だったのに頭痛いわ眠いわ……一体何があったと言うんだ、マヒルもセツさんも教えてくれやしないし。
カキーン!
「アサキ!」
「は?」
カイトが打たれました、僕の方に飛んできました。
――スルーだな。
『ええええええええええ!!!!』
「ッるせぇんだよ! 外野内野共々叫ぶな! ライト捕りやがれ!!」
「無理言うなよ!」
ライトからそんな声。あれ、ライトはハルナだったみたい。そしてランナーがダッシュしてる……って早、ユウヤもうサード回ってるよ。
『……』
「……なーいすバッティーング」
え? クラスから変な眼で見られてる? ……知らないよそんなの。どうだって良い、動くのは嫌なんですよ。僕は動かないで捕れる場所のしか捕らん。
「選手交代!」
お、カイトが賢明にもそう叫びました。正しい判断だな、とっとと僕をベンチに入れろ。
「アサキピッチャーやれ」
「ふざけろ」
なめてんのか。
「だって動かないじゃねぇかよお前!」
「塁に飛んで来た球は捕ってやってるだろ」
「其れだけしかしてないじゃねぇか!!」
五月蝿ぇな。捕れば良いんだろ捕れば。つーか、お前が打たれんのが悪い。
「アーサくーん! 皆様に迷惑かけちゃメッ! だよー!!」
「五月蝿ぇド阿呆!!」
真反対の位置から叫んでくんな馬鹿! 何がメッ! だ! 僕は幾つの餓鬼だよ!!
「良いなぁ……」
「何が?」
ところ変わって体育館です、外で男子が野球をやっているのを見ています。あ、こんにちは、モモです。
「男子って……楽しそうじゃない?」
「男子……っていうか、リョウちゃんはアサキ君が見たいだけでしょ?」
「ち、違うわよ! 何で私がヒコクアサキなんか……!!」
だったら何で授業サボってまで体育館に居るのかな、リョウちゃん……(※三組は別授業です)。
まぁ、未だ気持ちに気付いてないみたいだから仕方ないけどさ。
「はぁ……」
「ふふ、リョウちゃんったら……」
恋する乙女は大変だなぁ、リョウちゃん。……あ、そーだ。
「リョウちゃん」
「ん、何?」
「今度の土曜、一緒に買い物行こ?」
「土曜? ……あ、嗚呼、うん、そうね……家でいっかな?」
「うん、それが良いな!」
だよリョウちゃん。頑張ろうよ、リョウちゃん!