374+マシンガン充填中。/前
休みなのに学校とか無い本当馬鹿じゃないアサキだけど。
明日で一学期終わりだっていうのにどうして祝日に学校に居るのか、無論生徒会の仕事で来させられたんだが、二年で呼ばれたの僕とゼン君だけって何なんだイジメか――ただ役員ってだけなんだが――。
「庶務なんてなくなれ……」
「副会長はなくなっちゃ駄目だろうなー」
「あ、お……疲れ、様です」
用事は終わり、帰宅するは昼過ぎ。学期中に終わらせなければならない仕事の為にやむなく掛けられた収集だったらしく、流石の先輩達も皆死に掛けていた。特にハヤ先輩は動かせない、と外に出る用事は専らサチト先輩が動いていて、ゼン君なんて「サチ其の内溶ける気がする」と真顔で呟いていた。
そそくさと帰宅した三年達の後、何処かに寄るかとっとと帰るか、ゼン君と談義した結果暑過ぎて死ぬからと図書室に寄ることにした僕等。夏休み前の休みで誰も居ないかと思ったが、何故か其処にはムラサメが居て。夏休み前に宿題をやってしまおうとしたらしく、何処かの兄貴に見習わせたいと思った。
そして、今が其の帰り。
「休憩した意味あったのかしらね」
「其れを言うな、暑い」
「まぁいーんだけどねぇ、ナツメ君の宿題も手伝ってあげられたし」
「其れもそうだ」
「……ありがとうございます……」
馬鹿という訳ではないが、教科によって浮き沈みがあるムラサメの宿題に茶々を入れていたら時間が経った訳だ。ある意味暇潰しになったんじゃないかな。
控えめな礼にゼン君と顔を見合わせて思わず失笑、何だか平和だ。
「あー、平和だねぇ」
「本当に、馬鹿が居ないとこんなにも平和か」
「ねー。……こういう日は、何も起きないでのんびりさせて欲し――」
ガシャアン!!!!
『――ッたァ……!』
「――いねぇ……?」
そんなこと言ったから、なのかは定かでないが、今すんごい音が何処かからした。ゼン君の言葉を遮る形で響いた衝撃音、ええと――明らかに、進行方向からですね。
校門の方から、そして僕等は其方に向かっている。一体何の音だったのか、と、歩調を緩めることなく近くまで辿り着けば、
「――はぁ……」
ゼン君が至極大仰に溜息を吐いた。
「さて問題、喧嘩、イジメ、リンチ、どれだと思うー?」
うちの高校の生徒が、何だか揉めている様子。にしてもゼン君、其の質問もそうだが清々し過ぎるよ笑顔が。
「リンチ」
「リンチ、……って何ですか……?」
「私的制裁ってやつ」
純粋なムラサメにそんなこと教えるのも悪いが、聞かれたので即答したら戦かれた。
さっきの衝撃音は二人対一人の生徒の内、一人の方が門に叩き付けられた音だったらしい。
「っていうかあっ君見てよあれ」
「……あ」
二人組から僕等は見えていないらしく、棒立ちしながら遠めに観戦と洒落込んでいれば。ゼン君が其れを指差し僕を見るから、指されたものを見てやる。
其れ――というか人は、何時ぞやの文化祭で僕が殴りたくて仕方なかった先輩方だった。覚えてない方はそのまま忘れていてくれた方が良いです。
「……知り合い、で――」
「「いや全然」」
「すっ、すみません……」
怒った訳じゃあないんだが、アレ等と知り合いなんて滅相もない。僕等に失礼だ。
と、そんな冷静に解析してる場合ではなくて、其の人論外の輩達に突き飛ばされ誰かが門に叩き付けられたという事実(※本当は推測)があるんだった。元々アレ等の方々を好かない僕としては今から飛び蹴りかましたって良い訳だと思ったんだけど、――僕より遥かに喧嘩っ早いのが横に居たのを思い出した時には、既にゼン君は鞄をムラサメに預けて数メートル前に歩みを進めていた訳でした。
『はろうはろうこんにちはお久し振りです先輩達、日中から宜しく後輩虐めと洒落込んでいらっしゃるところごめん遊ばせ?』
『な、お前あの時の……!』
『あら、覚えてて下さったみたいで嬉しいなぁ、カワイイ女の子ならもっと良かったんですけどね』
「ムラサメ、下がろう」
「え、……良いんです、か……?」
良いも何もお前にはあのイキイキとしたゼン君の笑顔が見えんのか、本業だろ完全に。というかさっきの清々しい笑顔は何処行った。
全くの死角で僕等からは被害者側の――だと思われる――生徒は見えないままだったけれど、きっとゼン君ならひとりでどうにか出来るだろう、と割り切り、日なたは暑いから近くの日陰で事が終わるのを待つことにした。
悪いことしてる訳では無いし、止める必要は……無いよな。