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372+友人と友人と。


 ぴんぽーん。


 インターフォンが鳴った、アサキです。良く鳴るインターフォンだ、とかどうでも良いこと考えてみるけれど、そういや今僕しかいなかったんだ。しかし怠い、出たくない、出たくないったら出たくない。


「――……チカ、行ってこい」


 こんな真昼間に来る人なんざどうせ知り合いだ、猫が出たって構わないだろう。にゃう、とひと鳴きしたチカはてててっと本当に玄関に向かっていって、やはりあいつ賢いなぁと僕を感心させた。






「――って、猫が出てったら駄目だろう」


 がばり。

 節電貢献中につき限界までクーラー使用を抑えていた所為か、頭がふやけてるぞ僕いやマジで。慌てて――も速度は変わりませんが――玄関に向かう、が、しかし。

 僕はチカと自分の思考能力を甘く見ていたらしい。



「アサキ、お前大丈夫か?」


「あぇ?」


 玄関に着く前に声を掛けられた。ええと、……嗚呼そうか、うちに来る客に家主に遠慮するなんざ崇高な思考を持ち合わせた方いらっしゃらないもんね、自分で言ってんじゃん僕、はっはっは。

 ――と、いう訳で、チカを抱えた見慣れた銀髪こと、セツさんがいらっしゃっていた。


「何がっすか? つーかセツさん猫に迎えられてよく入りましたね」


「新手の嫌がらせだと踏んだんだよ、けど違ったみてぇだな」


 セツさんは苦笑しながら、チカをリビングで下ろしてやる。其れから僕を見て一言、


「――真っ直ぐ歩けねぇくらい暑ィなら、クーラー入れろお前」


 そう一言告げたのだった。……え? 歩けてない?













「飲み物勝手に取って下さい」


「ちょい家主、やる気無さ過ぎねぇ?」


 あー、涼しい。涼しくなった部屋で存分に涼む僕、逆に動きたくなくなった。

 文句を言いながらも数分前まで外に居たセツさんは暑いらしく、渋々と自分でキッチンの冷蔵庫を漁っていた。


「ついでに僕のも」


「へいへい、使えるもんは誰でもってか」


「良いじゃないですかー、暇な人使ったってー」


「……」


 ――本当に暇人だったのか。

 冷たい飲み物が出て来てから、何か用事があってきたのだろうとセツさんに尋ねてみたら。


「ん? いや、今日辺りマヒルが自宅帰るつってたからよ」


「は、そうなんですか」


 弟の知らない事実をあっさり述べたセツさんは、チカにちょっかいを出して遊んでいる。ん、兄貴が帰るのか、しかし未だ帰って来ていないということはこのままセツさんはうちに居座るのか? ……まぁ、やること無いし良いんだが。





「――こんにちはー!」


 ゲームでもするか、と立ち上がろうとした最中。セツさんだってとりあえずインターフォンは押したぞ、なのに今度はいきなり玄関から声が飛んできて僕とセツさんは視線を合わせた。


「お前等ん家って完璧なセルフなん?」


「違いますって、ちゃんと迎えますって」


 けれど、出迎える前に廊下にまでやって来る足音が聞こえた。トタタッと小走りなのは良いんだが、――今ズッコケた音したんだけど廊下に何か物置いたっけか。


「お邪魔しまー……お、居るじゃんアサキ!」


「……誰かと思えばトウマかよ」


「ちょっ、言い草ひっど! そして先に言おうごめん廊下の掃除機ぶっ倒した」


 端に寄せておいた掃除機に引っ掛かんな……!


「アサキ、誰?」


「トウマ、兄貴の高校の時の友人兼、うちの学校の教育実習生」


「あ、挨拶遅れましてすみません。私アマギリトウマと申します」


「はっ、あ、いや、何故そんな深々とお辞儀を……!」


 兄貴とセツさんは大学からの付き合いだからトウマを知らないんだった、キョトン顔で僕に尋ねるから簡単に説明したら、トウマは何処の上司にするんだかなお辞儀をセツさんに繰り出し、セツさんをしどろもどろにさせた。セツさんを半ツッコミにさせるとは恐るべきトウマクオリティ。


「貴殿のお名前を頂戴しても?」


「何処の時代だよ……あーっと、アヤメセツ、マヒルの同期なら俺もタメな」


「あ、や、め…………貴殿ってもしかして、サッカー部じゃないですか?」


「え?」


 立ち尽くしたまま思考を展開し出したトウマは、セツさんの名前を聞くなり首を傾げる。


「おう、サッカー部だった……ぜ?」


「――やっぱり! 名雪なゆき高校のアヤメ君だね!?」


「は!? な、何で高校名!?」


 こいつ怖っ……! と身を少し引いたセツさん。僕はすっかり蚊帳の外なので、そのまま見物させて貰うことにする。


「だってスポーツ校として有名じゃないですか! サッカー部のエースだったアヤメ君!」


「ま、待て、もうひとつ聞きたい。名雪なんてこっから何時間も掛かる場所だぞ? そんな情報がどっから仕入んだよ」


「仕入れるとかじゃないですよー! やだなぁアヤメ君ったらー」


 そっかー、マヒル凄いお友達出来たんだなぁ! と、ひとりぶつぶつ言い出したトウマ。だが、セツさんが元サッカー部で、それなりに凄い選手だったことは今分かった話なんだけども。



「遠方の情報だって――一度耳にしたら忘れないでしょう?」


 頭脳明晰アマギリトウマに味方しない情報は無い、と、……そういうことで良い?











「ただい――」


「やっぱあの人が徳川じゃ一番良いと思うんだけどなぁ」


「暴れん坊が暴れ過ぎたんだよ!」


「そうそう! 家宣は優しい人だったと思うぜ俺!」


「あの人には長生きして欲しかったよね!」




「――アサキ、今の状況を十文字で」


「……波長が類似してる模様」


 兄貴が帰って来たのは其れから二時間後、僕がひとりゲームを始めてから、何だか二人で盛り上がり始めましたとさ。



「だからって……徳川の話題で盛り上がるなよ……」


「嗚呼、ツッコむところ其処なんだ」





基本的この小説に出てくる地名学校名は架空のものです(知ってます)


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