370+今年の夏の予定。
〜♪
赤い携帯から着信音が流れている、アサキです。ちなみに赤い携帯というのは別に恐怖の類ではなく、ただただ僕の目の前にあるユウヤの携帯が鳴っているということだ。
「ユウヤ、携帯鳴ってる」
「えー、誰ー?」
天気が良いからと張り切って洗濯に励むユウヤにそう言われ、仕方なく読んでいた本を横に置いて携帯を覗き込む。……先輩? ……あ、サチト先輩か。
「ユウヤ、サチト先輩」
「先輩? ――うわったった!!!!」
「……」
ユウヤが消えた、大量の洗濯物を持っていたのだ仇になってバランスを崩したようだ。……仕方ない。
かち。
「――ただいま留守にしています、ピーッという音の後――」
『アサキだろ、お前アサキだろ』
「……ユウヤが手ぇ離せないんで」
あわよくば切ってもらいたかったが仕方ない、用件くらい聞いてやろう。
『先輩からの電話を良い度胸だな』
「先輩身体大丈夫なんですか?」
『は? 何が?』
「いや、体育祭の時の話ですが」
『……嗚呼、全然おけ』
「そうですか」
『悪いな…………じゃなくて』
此の人馬鹿だなー(※失礼)。
『別に急ぎじゃねぇんだけどさ、お前等夏休みって何処なら暇?』
「……夏休み?」
『おう』
何だ、部活の話か。期末も終わって半日になるし。……夏休みに部活やる意味あるのか、とか思わない訳では無いがまぁ良い。
「未だ分からないですけど、今のところ何処でも空いてるかと」
『ユウヤもか?』
「――ユウヤ、お前夏休み用事「なーい!」……そうで」
『……暇だなお前達』
夏休みの予定なんざ未だ決まらないでしょう誰も。
『じゃあ支障無ぇな』
「何がですか」
『――合宿』
「………………は?」
ぶら下げるように携帯を持っていた手をちゃんと握り直す。ええと、――え?
「合宿、……って、聞こえたんですけど」
『おう、そう言った』
「……は?」
『お前改めて言うなよ』
合宿って、え、一体何の?
「先輩、合宿って――練習とか研修などの目的で多くの人が一定期間同じ宿舎に泊まりこんで生活することを言うんですよ?」
『分かってんよ』
「――うちの部活で一体何の練習するんすか」
何だってんだ、合宿とか何だってんだ。
サチト先輩は電話越しにて笑い、確かになー、なんて呑気に呟いた。
『まぁ、部活はおまけだよ』
「……そうなんですか」
『目的は勉強、提案者はハヤな』
「――勉強……だと……?」
サチト先輩は続ける。
『おう、俺達今年受験らしいし、勉強合宿なんてどうかってよ。ついでにお前の兄貴とかお前のダチとかが来年恐ろしいことにならねぇように、お前等もまとめてどうか、ってこった』
「……」
『あ、金銭面は気にすんなよ。フウカん家の別荘だし、移動も(ハヤが死ぬから)車出すってよ』
「べっそ……!?」
……そういやフウカ先輩はお嬢様なんだったか、ゲーム思想過ぎて忘れてた。
『ゼンとカイリにゃもう連絡取れて行くっつってる。……問題はお前とナツメだったもんで、ナツメはハヤに任して、俺はユウヤに電話を――』
「行きます」
『……はぇ?』
聞こえなかったか。
「――行くに決まってんじゃないですか」
『……マジかよ』
「先輩が僕をどのような人間と受け止めているのかはどうでも良いですが、僕はユウヤやカイトに勉強をさせる為なら何処にでも行きますが」
あの馬鹿共全ッ然勉強やんねぇんだよ、部活という名目であいつ等缶詰に出来んなら、
「――喜んで行きます」
『……なら良かったが』
喜んでる感が一切伺えない声音で返せは、サチト先輩はじゃあまた後日な、と言って電話を切った。
「サチト先輩、何か用事だった?」
「うん、お前夏休み覚えてろよ」
「……え?」
内容は後で聞け、――駄々こねても連れてくがな。