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369+自力本願だけは無理。


 カイリだ、たまに自分の名前忘れそうになんだがそりゃ完全にあいつらがカイトって呼ぶからだ。




「――……テスト爆発しろ」


 テンションのまま机に突っ伏してそう呟く俺、今日はテスト一日目、昨日アマギリの奴にこてんぱんにやられた(※ある意味悪い意味で)からなかなか出来た気もしなくもない、が。


「ちょっとアンタ、何ぶっそうなこと呟いてるのよ」


「テストなんか無くなりゃ良いんだ!」


 俺の切なる呟きに目敏く反応したリョウコが呆れ気味に呟くのが聞こえる、丁度通り掛かったんだろう。くぐもって聞こえたであろう叫びにも溜息を吐くのが聞こえた、何だよ仕方ねぇだろ馬鹿なんだから。そして其の横からはそんな声とは真反対のテンションの声が聞こえるんで、恐らくテナが居るんだろうと考えた――考えただけだけどな!――。


「頭がそこそこ良い奴に此の気持ちは分からんのさ、嗚呼分からんのさ」


「私だってテストはあまり好きじゃないわよ」


「ほら“あまり”つった! 本当の馬鹿はあまりなんて言わねぇんだからな!! だからお前は一組の頭脳明晰集団から外れんだよ!!」


「何其の集団!?」


 一組の三人――シキも入れちまえば四人だな――って馬鹿みたいに頭良いんだよいやマジで。アサキは言わずもがな「半日だから好き」だし、ゼンは「授業無いのなんて最高じゃない」だし、ミノルは「通常授業よりは好きだな」だし! 何なんあいつら! ガチで爆発しろ!!!!


「ちなみにシキは『運動やるくらいなら勉強する』って言ってたわよ」


「四天王の完成だな!!」


「何処のポケ○ンよ、何地方よ」


 顔を上げて叫べばやはり隣にはテナが居て、きゃらきゃらと楽しそうに笑っていた。お前もあんましテスト良くなかったよな、何故に笑ってられんだ。というかリョウコのツッコミが奥深くなってんだが此れは何故だ。


「あんだけ勉強したっつーのに古典の出来中途半端だったしよ……数学って何?」


「あれ、もうひとつは?」


「カイちゃん化学はあ?」


「は? あんなん捨て教科だろ」


 現在の単元が暗記のもんなんざ俺にどうにかなると思うな。理科系教科ならお任せしろい、なリョウコはマジかよ、的に表情に驚愕を晒していたが俺は知らん。


「昨日アマギリに勉強教えて貰ったのは良いんだけど、前半ふたつで手一杯だったっつの」


「あら、じゃあ数学と古典は高得点狙えるのかしら?」


「…………」


「ロクジョーカイリ、目が合わないんだけれど?」


「さあって、帰って英語の勉強を――」


「アンタ英語私より出来るんだから他やんなさいよ!!」


 やったってどうにもならないことだってあるんだっつーの! そそくさと教室を出て隣のクラスに向かうことにする、とっととアサキ連れて帰るぜー。











「アマギリくー――先生!」


 ユウヤだよ! 昨日早く寝たらメッチャ元気になった! 睡眠って偉大だね!!

 今日の報告をすべく職員室に向かえば、開口一番にアマギリ君を呼んだ。毎回癖でアマギリ君って言いそうになるけど、仮にも先生なんだよね、職員室くらいそう呼ばなきゃ。


「ん、あ、はいはい居ますよー!」


 姿が見えないから居ないのかと思ったけど、奥の……ええと、印刷室? からアマギリ君は顔を出した。テスト期間は職員室に入っちゃいけないらしいから――もし俺が事前にテスト問題見てもどうにもならないと思うけどね!――其処で待つこととする。

 書類に埋もれそしてずっこけ、書類を職員室に撒き散らしてから俺の所にやって来てくれたアマギリ君。後ろでハヤサカ先生が書類拾い集めてるのは見なかったことにしてあげるね!


「どしたの?」


「あのね、俺今日のテスト何時もより出来たと思う!」


「ホントに? 其れは良かったじゃない!」


「其れも此れも先生のお蔭! ありがとうございました!」


「や、やだなユウヤ、改まって言われると僕何か恥ずかしいっていうか」


 アマギリ君は後ろ髪に手を置いて、照れたように微笑みを浮かべた。っていうか実質照れてますな。


「でも、今週中はテストでしょ?」


「うん、でも、毎回アマギリ君に教えてもらう訳には行かないから、今日からは一人で頑張ってみるね!」


「うんうん、良い向上意欲さね。僕、応援してるよ」


 本当はあんなに長いこと続く勉強を後数日続けなきゃなのはしんどいからなんだけどね、許せアマギリ君。



 後ろのハヤサカ先生の視線が痛くなってきた頃、職員室を後にする。

 しかし、だ。一人で、と言ったものの英語なんてほぼアイアムジャパン(※訳:私は日本です)くらいしか分からないのに無理に決まってる。



「……帰ろ」



 ってことはやっぱり家だな、家だったらアサキと――多分来るだろう――カイト君が居るし、英語の勉強も捗るに違いない。他の教科は半諦めモードではあるけれど、少しくらい触れなきゃだなぁ、なんて思いながら、俺は荷物を取りに教室へと戻るのだった。


 あと三日、頑張るぞーう。





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