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368+テスト前夜にしたいこと。


「た、だい、ま……」


 ユウヤですよ、ええ。近年稀に見るテンションの低さをお披露目していますよ、もう無理だって色々と……!


 ただいま既に夜の八時、今の今まで俺が何をしていたかと言うと――勉強していました。

 ……いや、無論あれだよ? 自主的とかじゃないよ? 当たり前でしょ? 勉強を教えてもらうという名義で放課後、カイト君と二人でアマギリ君のところに行ったら……そりゃあもう、大変なことになりまして……。



『え、あ、そっかー、明日テストかー。……いいよっ! 今から明日の三教科、徹底的にやろうじゃん?』


『いや、アマギリく……先生は数学の先生なんだから数学だけで――』


『大丈夫大丈夫! 僕高校の勉強くらいならテキスト無しで教えられるよ! ――全教科』


『全教科ァ!?』


『ようし、Let's go your classroom!!』


 勉強はやっぱり教室が一番だよね☆ と――はた迷惑な――ハイテンションで此の時間までみっちり詰め込まれた訳です、はい。おかげで頭ん中数式と古典の文法だけだよ! いとあはれなり何とやら!!



「そりゃ分かりやすかったし少しは頭に入ったけどだからってこんな長い時か……ん?」


 ぶつぶつと文句を言いながらリビングに向かっていると、ふと違和感に気付く。……何故にリビング真っ暗?

 外の電気を付けてくれていたということは、アサ君が帰って来ていない訳ではないということ。なのにリビングは真っ暗……って、え? まさかアサキ上で勉強とかしちゃってる訳? 此の時間まで? ――いやいやいや其れは無いだろあのアサキだよ? テスト勉強よりゲームやってる時間のが長い我が弟ですよ?

 頭の中で色々考えながらリビングに入れば、見た通り其処には誰も居なかった。


「にゃう」


「うわびっくりした」


 と思ったけど違った、チカちゃんがいらっしゃった。俺に自分から近付いてくるなんて滅多に無いのに、ふと足元に現れたチカちゃん。壁の電気スイッチを付けてから抱き上げて、「アサ君は何処行ったい」と駄目元で尋ねてみるも、チカちゃんは可愛い声でまたひとつ鳴き声を挙げるだけだった。畜生可愛い。



「ってことはやっぱ上か……?」


 可能性を考えてみる。いち、俺の帰りが遅くて夕飯が遅くなるからとゲームをしている。に、途中まで同文からのたまには勉強するか。さん、同文からのふて寝。恐らくどれかだ。

 チカちゃんと荷物を下ろして二階へ向かう俺、寝ていたとしたら起こしちゃ悪いからゆっくりと階段を上がって部屋の前までやってくる。個人的には三番が正解だと思う、なんて思いながら部屋のノブを捻れば、



「……半分正解」



 ――アサキは机に伏して眠っていた。

 正解は二番と三番の半々で、勉強してみたが途中で寝た、でした。正解者から抽選で三名様に――何も無いけどね、疲れてると悪ノリも面倒になってきた。

 近くに言っても起きる気配の無いアサ君の机を覗き見れば、俺が教室やらされた数学の数式がつらつらと書き連ねられていた。お前が此れ以上頭良くなってどうすんだ。暇だったから数学でもやってるか、とか思ったのかな。眠かったなら普通に寝れば良かったのに。


 とりあえず思ったのは、このまま寝てたら首とか痛くなるだろうということ。とんとん、と肩を叩けばアサキはあっさりと目を覚まして、目付き悪く俺を見れば「……お――り」と。多分お帰りって言ってくれようとしたんだろうけど、寝起きで声が出切らずにそう聞こえた。


「うん、ただいま、遅くなってごめんね」


 俺が笑顔でそう言えば、アサ君は特に返事もせず立ち上がって――ベッドに倒れた。


「も、……寝る」


「ご飯は?」


「明日の朝でいい……今日は要らん」


 テスト前夜だと言うのに何たる。まぁ、俺も疲れ切ってたしまぁ良いか、何だか疲れ過ぎてお腹も空きゃしない。

 はいはいお休み、と短く返して、俺もとっとと寝てしまおうと考えた。もういい、行動するのは明日の朝でもういいや。今はとにかく、そう、




 ――寝かして下さい。

 ただ切実に、そう思った。





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