356+絶好日和? 体育祭!/昼休憩
「え、あの二人来てたの?」
リョウちゃんがめっちゃ訝しげにそう言った、ユウヤだよ!
「高校行ってからあの二人がハツラツ過ぎて俺爆笑」
「アイツ等……まぁ、二人共頭は良いから大丈夫でしょうけど」
カイト君の真顔の爆笑も気になるけどリョウちゃんの頭は、の下りも充分気になった。確かに頭良いし、でも性格だって良いもん! 特にアスカ!!!!(※色んな意味で)
ただ今俺達は旧生徒会室。昼飯食うだけなんだけど、教室がどうも暑くてこっちに移動した。ちなみに部活メンバーだけじゃなくてミノルちゃんとかシギ君とか皆居ます、……ちゃんとハヤ先輩には了解取ったもんね! 先輩達やムラサメ君は多分教室使うみたいだから、今は俺達の城みたいなもの、計九人! 九人入っても悠々自適ってやっぱり凄――――
バァン!!!!
『…………』
と、俺が浮かれていたからアサキ辺りに叩かれたのかと思ったけれど、生憎身体の何処にも痛みは無い。
今の音はそう、部室の扉が蹴り開けられた音。――そりゃ皆黙るだろ。
「嗚呼、皆居たの」
「……ゼン君?」
其れをやったのはゼン君だった。九人――実は其の中にゼン君はおらず、アサ君曰く実行委員の見張りに向かったまま戻ってきてなかったんだよ。そんなゼン君が片脇にファイルを挟んで部室にやって来た、さっきシギ君に此処に居るってメールして貰ったし、其れで来たのかな――とは思ったんだけれども。
「ゼン! 扉足蹴にして開けんなよ!! 心臓飛ぶかと思ったろ……!!!!」
扉を背に向けて床でウミさん特製弁当を食べていたカイト君はいち早く我に返り、ゼン君に文句を言う。
「うんごめん。でも此の扉外開きだし、足で外にやってもカイ君には当たらなかったでしょ」
「そりゃそうだけ――」
「だったら良くない、物理的に心臓が飛び出した訳じゃないんだし」
そしてゼン君はそのまま、奥の生徒会長席の上に其のファイルを――ほぼ叩き付けた。
『…………』
カイト君も黙って、皆黙った。
……ええと、ひょっとしなくても、キレてますよね、ゼン君。
ゼン君が其のファイルの中身に集中し出したのを見れば、皆がアイコンタクトで原因を探り出した。
先ずは幼馴染、――俄然首を横に振る。まぁ午前ほぼ俺達と居たものね。其の後其の隣の我が弟に視線がスライドされたけど、――何こいつ普通に弁当食ってる。
ってことは知らないんだろうな、……じゃあ。カイト君が机にあった消しゴムをアサキに投げる、基本的投げられたものは取る習性があるアサキは其れに気付いて顔を上げキャッチするけど。
(聞けや)
(は?)
小声ではなく、視線と動作の会話を二人が交わせば、他の皆の視線もしっかりアサ君に向いていた。
普段あれだけ騒がしい――人のこと言えないけど――ゼン君が人一倍キレやすい性格なのは周知のことだけど、だからってこうやって他人にも影響出るようにキレてるのを初めて見た。そしてこんなに近付き難いとも初めて知った。
「……ゼン君」
「なーにあっ君」
意を決――した気配は毛程も感じられなかったが――してアサキが声を掛けると、ゼン君は何時もの口調で何時もと違うトーンの返事をした。最早棒読みである。
と、声を掛けたもののアサ君は一瞬言い淀んだ。え、どうしたの? って思ったのは多分俺だけじゃないけど、直ぐにまた口を開いて――こう言った。
「また実行委員、やらかした?」
――ゼン君の動きが止まった。大正解らしい。
此の後どんな反応に出るのかと最早皆びくびくしてる――ちなみに俺が見た限りシギ君が一番びくびくしてる――訳だけど、ゼン君は視線をファイルからアサ君に向けると、
「――そうなんだよ! 本ッ当聞いてよあっ君!!!!」
なんかころっと戻った。……あれ?
がたん、と立ち上がり透かさずアサ君の方に行けば、何故か其の隣のシギ君に引っ付く。
「あいつ等マジでカスなんだよ! 今度何したと思う!? 何もしないんだよ!! ある意味ふざけとしか考えらんねぇのよ!!」
「へぇ」
「実は当日の今日実行委員長休みらしくてさ! 元々カスなのにもっと運営回ってねぇで午前の得点表もろくすっぽ集計し終わってないんだよ! やれよ! 馬鹿かよ! お前等の腕で午後も合わせて終わんのかよ!!」
「ふぅん」
其の後もつらつらとゼン君の愚痴が続き、アサキの適当な――そりゃあもう適当な――相槌が入る。シギ君はゼン君に捕らえられてるから身動き取れてないけど、慣れてるのか離されるのを黙って待っている様子だった。
「――で、その仕事をゼン君掻っ攫ってきた訳?」
「そういうこと。このままだと終わらないし、俺がやんないとどーせハヤ先輩が手伝っちゃうし」
「其れは駄目だ」
「でしょ? ただでさえ奇跡的に動いてるハヤ先輩に無理さしたくないし、っていうかあの三年マジでハヤ先輩と同い年なの? 全ッ然思えない、使えるだけサチの方がマシ」
ははっと楽しそうな様子のゼン君、いつの間にやら完全に元通りのゼン君に戻っていた。皆も其の気配を悟ってか若干ホッとしているけど、俺はマジでキレたゼン君なんて二度と見たくないと思った。……いや其れこそマジで。
「ねぇ、ワタヌキゼン」
「ん、なーにカトウちゃん」
という訳で。落ち着いたゼン君にリョウちゃんが声を掛ければ、ゼン君は何時も通りににっこりと微笑みながら応対した。
「アナタ、昼ご飯は?」
「あ、やっべ忘れてた、今日学食のつもりだったのに。もう無ぇだろうな……」
「ゼン君! ボクが行った時に買っといたっす! チョイスはアサキ君ですけど」
「え、マジで? サンキュー二人共、二人には礼としてゼン君の愛をあげます」
「要らん」
「俺も一緒に買いに行ったんだけどなー」
「プラスハクにも」
「はいはあい! テナもゼン君の愛が欲しいよお!」
「じゃあついでに私も」
「わたしも」
「ついでに貰うものじゃないわよミノルにシキ!?」
「何言ってんの、ゼン君女の子には既に全員愛を注いでるのよ」
「リョウコは要らねぇだろ、他から欲し――今箸投げたろ!!!!」
「五月蝿いわよ馬鹿!!!!」
一気に騒がしくなったなぁ、普段の部室とは違った盛り上がりを見せる今に俺はつい笑みを零した。やっぱり、学校はこうでなくちゃね!
皆でこうやって集まれるから行事って嫌いじゃない、っていうか馬鹿騒ぎは大好きだから行事は元々大好きだけど。テンションがマックス級に高い中、俺は自分の弁当を食べ切ってから其れに応戦することにした。
っていうかよく考えたら、此処からが本番だよね?