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346+二度めましてのはずなんです。



「ええっ!? ムラサメ君部活来たの!?」


 アサキです自宅です。


「あーああーあ会い損ねた、ファーストコンタクトし損ねたよゼン君」


「別に良いじゃん、次会えば」


 なのに何故かゼン君と、


「そうっすよ、其の彼が部活に入ったなら直ぐ会えるじゃないっすか」


「ねぇねぇシギくん、ぶかつってなーに?」


 フドウとそしてみーさんまでがいらっしゃる。


「え、ぶ、部活? ……えと、皆でこう、頑張って運動したり……遊んだり――」


「好きなことを皆でたーくさんやるものだよ」


 お前は部活の意味を多少なりとも過程出来ないまま茶道部してたのか。ゼン君のアシストにほっとしているような表情を見せたフドウは、机上に置いてあるオレンジジュース――無論出したのは今買い物に出掛けているユウヤだ――に手を掛けた。

 ……で。



「何しに来たのお前等」


 さっきからずっと僕は一人楽しくゲームに勤しんでたはずなんだけどなぁ、と考えてた訳だけど、一体全体何がどうなってこうなった。


「え? 普通に遊びに来ただけだけど」


「突然すみません……」


 キョトン顔のゼン君とか申し訳無さげなフドウとかもう見飽きた、お前等何なん何でそんな自由なんそしてみーさんきらきらした眼でこっち見ないで下さい。


「前もそうだけど、ゆっ君にちゃんと連絡したよ?」


「そりゃ分かってるけど何でユウヤに連絡入ってんのの対応が僕な訳? そして何故姪まで連れて来た?」


「今日日曜なのにクソ姉貴が仕事行っちゃってんのよ、ミヤ一人になんて出来ないじゃん?」


「……しずかにしてるよ?」


 いやそりゃ良い子なのは嬉しいんだが。


「其れとフドウ」


「はい?」



「――テストを前にしたお前に遊んでいる時間なぞ無いはずだが……?」


「や、嫌だなぁアサキ君、何のことを言ってるんす――すみませんすみません帰ったら直ぐやりますいやほんとすみませんでした」


「あっ君勉強のことになると厳しいよね」


 好きで厳しくしてんじゃねぇんだよバカヤロウ、テストの点此れ以上低空飛行されたら堪ったもんじゃない、泣き付かれんのは僕なんだぞ。(※該当者多数)


「本当はテストなんざ前日やりゃどうにかなるんだけどな」


「其れはヒコク君とゼン君だけに通じるものなんですっ!! 常識じゃないっすからね!?」


「失敬な、ゼン君は授業だってちゃんと受けてるもん」


「え? ほぼ寝て……え……?」


「ゼンくんねてるのー?」


「寝てないよー? ゼン君真面目だもーん。――あっ君其処は花を持たせて欲しいな」


「ごめん、つい本音が」


「もういいよ……」



 そうやって何をするでもなくやる気なく他愛ない世間話――別名僕のやる気がとことん無い――をしていれば。



 ガチャン! バタンッ!!



 玄関の戸が開いた音がした。しかも、物凄く勢い良く。



「……ゆっ君帰って来たのかな?」


「いや、違う、……多分――」


 ユウヤだったら普通にリビングに入って来るだろう、なのに戸を開け放った主はリビングではなく一目散に二階に向かっていった。階段を駆け上がる音が聞こえたし、ってことはだ。



「……マヒル?」


「えっ、もしかして例のあのお兄さん?」


 例のって何だよ。ゼン君の発言にそんなことを思いつつも、もしマヒルだったとしても何をそんなに急いでいるのか疑問だったし、まぁ単純に気になったから立ち上がって、廊下へ繋がる扉から階段側を覗き見た。

 そして丁度、先とは違う緩やかな足取りで階段を下って来た予想通りの姿に視線をやる。


「何してんの」


「おうアサキ、友達来てんだろ?」


 質問してるのは此方なのだがまぁ良い、靴で分かったんだろうが其処を見る余裕があるなら階段を駆ける必要はあったのだろうか。

 友達が居ようが居まいが気にしないマヒルは、当然の如く僕が引っ込むと同時にリビングに侵入。こんにちはー、と緩い挨拶だが恐らく誰ひとりとして見ていないであろう感じでキッチンへ向かった。



「あ、こんにちはー、お邪魔してます」


「「……」」


 …………嗚呼、そういや初対面の兄貴は万人うけしないんだった。忘れてた――フドウと最早ビビり気味なみーさんの様子を見て思ったけど、ゼン君はそうでもなく至って普通にへらりと笑っている。一回文化祭で会ったとはいえあれは見たってだけでろくに会話してなかったっけか。……というかどれだけ急いで来たの此の兄貴、とりあえず何時も通り目付きは悪い。

 マヒルがキッチンの死角に入って直ぐみーさんはゼン君の引っ付き虫と化し、フドウはおっかねぇよおい、とでも訳せば良いのか僕をちらりと一瞥した。


「前も思ったけどあっ君達のお兄さん、カッコイイけどおっかなそうな外見だね」


「ぜぜぜ、ぜ、ゼン君!?」


 そしてただひとり笑顔なゼン君は、みーさんの頭を撫でつつそんな本音を漏らしていた。っていうか僕だけじゃなくて完全に聞こえてますけどね、ええ。

 そして其の声に無論反応したマヒルは、冷蔵庫から出したのだろう清涼飲料水をコップに注ぎながら数回瞬きして、


「……あれ? 俺会ったことないメンツ?」


 とあっけらかんと言ってのけた。ちなみにおっかなそうと言われたことに対しては何のツッコミも入れない、何せ本人も僕等も聞き慣れているから。

 しかし何が悪いって何時もタイミングが悪い、僕等が家に人呼んで初めてマヒルに会う時、大抵マヒルは寝起きか今みたいにガチなやる気ダウンテンションというか――言うなればマイナス気ばかりだという。何でも良いが服装どうにかしろ、お前のファッション似合い過ぎて怖いらしいぞ。



「あ、高校の。お前の友達金髪とか居んのな、って思った感想」


「俺は金ってよか茶混じりなんですけどねー、こっちが生粋の金髪って感じ?」


「えぇ!? ちょっ、振らないで下さいよ!!!!」


 そしてビビられて気にしないのがマヒルクオリティ、外見からでなく性格から入れば完璧なのに。そしてフドウ、あん時お前格好良かったとか言ってたよな?



「――と、そうだ時間無ぇんだった。忘れもん取り来ただけだから」


「あ、そうなの?」


「おう、……そういやユウヤは?」


「買い物」


「そか、じゃあ俺行くわ」


「……さようなら……」


「兄ちゃんに向かって今生の別れみたく言うのやめない?」


 苦笑しつつそう言えば、忘れものを取り来ただけらしいマヒルは右手に持っていたファイルを少しだけ振り上げて、皮肉なく笑った。



「それじゃあごゆっくり、――ゼン君にシギ君、其れにミヤちゃん?」


 ぱたん。

 忙しい兄貴だな、なんて思いつつ溜息を吐けば。


「……あれ? 何でお兄さん俺達の名前知ってんの?」


 ゼン君が少しキョトンとして首を傾げた。


「ユウヤが友達の話するからだろ」


「あ、そういうことっすか。ミヤちゃんのことまで知ってたからびっくりしました」


 フドウは何処かどころか安心し切った様子で、深々と溜息を吐く。





 うん、じゃあ言わないでおこう。話はしたけど――僕もユウヤもお前等の容姿の話まで交えて話しちゃいない、って話は。

 本当、何で分かったんだろうか。




(断片的に与えられた情報を継ぎ接ぎして導き出しただけなんだがなぁ……)

とか、マヒルはきっとそんな感じ。

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