343+議題:今年のGWはどうしますか?
会話だけでお送りします。
ワタヌキ宅。
「はぁ? 今何て?」
「だぁかぁらぁ、海外にいらっしゃるアタシのダァリンからメールがあってね? 『GWは帰れないけど、夏休みに帰れたら帰るね』――って愛のメッセージが届いたのよ」
「嗚呼そう、義兄さんが帰って来るのは大いに喜ばしいことだ。……で? の次何つった?」
「あなたどうせ暇なんだから、ミヤを何処かに連れてってあげてくれない?」
「…………は?」
「いやぁ、アタシだって出来れば自分が何処かに連れてってあげたいのよ? でもウチ、GWだってのにろくすっぽ休みくれないし、今日だって一日家ん中掃除して終わっちゃったし? 其の点マイリトルブラザー、あなた暇でしょう?」
「何言ってんの? 馬鹿なの? しぬの?」
「ミヤはアタシに似て可愛くて良い子だから――」
「違うからね、あんたじゃなくて義兄さんに似たんだからね、あんたには可愛い要素も良い子要素も無ぇから」
「――文句ひとつ言わないけど、きっと何処かに出掛けたいと思うのよ。だってGWなのよ? ミヤは未だ保育園児、小さいのよ、遊びたい盛りなのよ、分かるでしょ?」
「そーですね」
「けどママであるアタシは遊びに連れてってあげられない。本当に苦しい」
「そーですね」
「だからアタシは恥を忍んで頼んでるのよ、昔は可愛かったのに今や全ッ然可愛くなくなった弟に――」
「あ、今のダジャレ? ゼンだけに」
「……あなた本当にアタシの話だけはちゃんと聞かないわよねぇ」
「だって価値が無いじゃん。世界中に居る女の子達を一としたら、姉貴なんて最早地球上に存在してないから」
「あなたねぇっ!!」
「わーってるっつーの」
「何が!?」
「ミヤはちゃんと遊び連れてく、何の為に俺が居ると思ってんの?」
「……ゼン……」
「俺はミヤのことを義兄さんに頼まれてるから此処に居るだけ、じゃなかったらとっくに一人暮らししてるし」
「――あなたが居るのは、お姉ちゃんが大好きだからでしょう?」
「……お前の頭蓋カチ割ってやろうか」
フドウ宅。
「お兄ちゃん、お電話光ってたー」
「え? あ、携帯すか。ありがと、ソオ、……あ、ゼン君」
「ゼン君から?」
「うん、そうみたい。ええっと、……あ、ソオ、ユリは?」
「お姉ちゃんはさっきお部屋にいたよ」
「今ゼン君からメールで、皆で遊び行かないかって」
「行く! ソオ行きたいです!」
「ふふっ、なら良かった。じゃあユリにも聞いて――」
「行くに決まってんじゃん馬鹿なのお兄ちゃん」
「ふぉお!! 何時から背後に居たんすか!?」
「今だよ。GWっつったってどうせうち出掛けたりしないんだから、だったらゼン君にたかって美味しいモン食った方が良い」
「ゼン君にたかるんすか!? 其処はちゃんとお母さんからお金貰っていきましょうよ!!」
「大丈夫、ゼン君お兄ちゃんと違って金持ってる」
「もってる!」
「ソオも何言ってんの!?」
「だったらお兄ちゃんもバイトして金出せや」
「ぐ、」
「まぁお兄ちゃん、ゼン君と違って馬鹿だからバイトなんてお母さんが許さないけど。てか人見知り激しいお兄ちゃんじゃバイトとか無理じゃね?」
「ぐぐ、な、何も言えない……」
「ソオ、後一年だけ待ってな。お姉ちゃんが高校生になったら沢山バイトして、美味しいもの沢山食べさせてあげるから」
「はーあい!」
「良いなぁ、あたしゼン君の妹になりたかった。あんな優しくて格好良くて頭良いお兄ちゃん……文句無いね」
「……」
「あ、でも前ソオとミヤちゃんが言ってたお兄ちゃん達の友達ん家も良いかな。優しくしてくれたって言ってたし」
「……アサキ君ん家っすか?」
「あさき君とゆうや君! アイス美味しかったよー! ゆうや君は優しかったし、あさき君はソオって呼んでくれたー」
「……え、ちょっと待ってソオ。アサキ君に名前で呼ばれたんすか?」
「うん」
「(僕は苗字で呼ばれてるのに……)」
「どんまいお兄ちゃん」
「な、何も言ってないじゃないすか」
「お兄ちゃんは何でもかんでも顔に書いてあるからね」
「……」
「……ま、でも仕方ないからあたしはお兄ちゃんで良いや」
「え、」
「ソオはお兄ちゃんがお兄ちゃんが良い!」
「びっくりするくらい何言ってるか分からないね其れ。……お兄ちゃんも、こんな可愛い妹が二人も居ることに感謝しなさいよね」
「ユリ……ソオ……」
「――まぁでも一回其の友達ん家は遊びに行ってみたいなぁ、アイスあたしも食べたい」
「ソオも行きたーい」
「……今後、聞いてみるよ、うん」
カトウ宅。
「――GWということで、美味しいケーキの配達だよ」
「…………ユズ、何時もありがとうね。さぁ入って」
「招くの!? 其の前にツッコまないのアンタ!」
「何をツッコむというのお姉ちゃん、ユズがケーキを持って私の家に来てくれた。……ただ其れだけのことじゃない」
「其処! ケーキ持ってきたくだりのところ!」
「?」
「もう中学二年なんだからおかしさに気付きなさいコトナ!!」
「どうしたんだいリョウコちゃん、怒るってことは糖分が足りねぇんじゃないのかな〜?」
「違うわよ? 違うからね? というか私は怒ってるんじゃなくて訝しんでるだけで」
「お姉ちゃんが言いたいのは、モモちゃんが居ない理由が知りたいってこと」
「嗚呼、其れは気になる――でも違うから、別にモモが居ようと居まいとまずは普通言うんだからね。ケーキ持って隣ん家遊びに来る中学男児――」
「ごめんねリョウちゃん遊びに来て……」
「――って居た! モモ居た! そして落ち込んでる!!」
「美味しい紅茶貰ったからリョウちゃん達に持ってこうと思って、手間取ってたら遅れちゃった。でもリョウちゃんが迷惑なら帰ろっかな……」
「ちょっ、モモ違うから!!」
「はっはっはなあに言ってんだよ姉ちゃん、知らねぇの? リョウコちゃんは今流行りのツンデレなんだぜ?」
「――はい!?」
「本当は嬉しいんだから、さっさと皆でケーキ食って遊ぼうぜー!」
「ちょっとユズ君!? い、今何て?」
「え? ツンデレ?」
「何言ってんのよアンタは!!!!」
「――ってコトナが言ってた」
「 ナ ニ イ ッ テ ン ノ ヨ ア ン タ ハ 」
「私の発言に、嘘偽りなんて無いわ」
「キメ顔で言うな!」
「まぁまぁリョウちゃん、冗談は此の辺までにして」
「……そうね。(私は冗談のつもり無かったんだけど……)」
「さって、レッツおやつターイム☆」
「おー」
「あ、なぁコトナ。GW中にバイキング行こ、無論ケーキの」
「えぇ、是非」
「……で、ユズ君って中学生になっても変わらないの?」
「うん全然。寧ろクオリティが上がったよ~」
「姉ちゃん達も行くだろー?」
「うん、行く行く~」
「……はぁ」
エノミヤ宅。
「ミノル、……ミノル、何処に居る」
「――兄さん? 私なら此方だが」
「……また薙刀を振り回していたのか?」
「振り回していた訳では無い、……で、どうかしたのか?」
「みーのーちゃーあん!」
「お客だ」
「兄さんの言葉より先に気付いてしまった」
「はろうミノちゃん! テナが遊びに来たよお☆」
「みたいだな、歓迎する」
「何だかお久し振りにミノちゃん家入ったなあ、変わってないけどねえ」
「そう簡単に変わるものではないだろう?」
「ま、そおだよねえ」
「今お茶を持ってくる。テナは相変わらずの抹茶で良いか?」
「勿論だよお! たあくんのお茶美味しいもん! テナ大好きい!」
「ふふっ、ならば良かった。暫し待っていろ」
「…………大学二年生捕まえて“たあくん”は無いと思うのは私だけなのだろうか」
「ええ? だってたあくんはたあくん以外の何者でも無いでしょお?」
「……まぁ、昔からの付き合いだから仕方ないか」
「待たせた」
「兄さん早い」
「たあくんマッハだったねえ」
「今茶室が使用中だった、ついでに使わせて貰った」
「ありがとうねえたあくん。……あ、たあくんも一緒にどーお?」
「……? ミノル、一体何の話をしていたんだ?」
「すまない兄さん、何の話もしていないから私にも分からない」
「ええっとお、――じゃあん!」
「「何だ其れは」」
「わお、見事なハモりい」
「兄妹だからな」
「あまり関係無いような……」
「此れねえ、其処のスーパーでやってた福引きで当たったのお。大したものじゃないんだけどねえ? 何だかただで入園出来るらしいから行ってみようかなぁって」
「入園?」
「あ、植物園ねえ?」
「嗚呼、近場に出来たアレか」
「ふむ、其れに私達を誘ってくれている訳だな?」
「ぴんぽんぴんぽーん! テナ植物園嫌いじゃないけど、一人で行くのも寂しいからあ。直ぐに飽きちゃうかもしれないけど今から行かなあい?」
「今からか?」
「うん、植物園なんて二時間もあれば充分だと思うんだよねえ?」
「私は構わない、兄さんはどうする?」
「……」
「……兄さん?」
「たあくーん?」
「今凄いことを思い出したんだ、聞いてくれ」
「どうしたんだ、そんな神妙な表情で」
「たあくんは何時も真面目っぽいけどねえ」
「こう見えて中身は完全だるっだるなことをテナもよく知っているだろう」
「――自然生態に関するレポートの期限が明日だ」
「……大学?」
「嗚呼、無理を言って休日に伸ばして貰った。土曜の講義なんだが俺は土曜日という日を休み認識している為、既に危ないくらい講義に出忘れている」
「たあくん……」
「よって完全にやばい……! 無理言って伸ばして貰ったのにもう忘れていた……!」
「兄さん……午前中のことを午後忘れないでくれ……」
「何を書けば良いのか少しも浮かんでこないんだが此れはどうするべきだろうか?」
「学校の友人風に言うなれば『今直ぐやるかしねばいいんじゃないかな』」
「あ、其れあー君でしょお」
「正解だ」
「待てミノル、お前達の友人清々しいくらい極端だな」
「彼はそういう人間だ」
「じゃあもうひとり違う友達風に言うねえ? ええっとお、――『俺の手に掛かればレポートなんて痛くも痒くも無いね、だってゼン君賢いし?』」
「……ッ似てる」
「ミノちゃんが笑ったあ!」
「ちょっと待て、お前達の友人関係に文句などをつけるつもりは無いが、癖が強い人ばかりでないか?」
「まぁ、多少は」
「でも皆良い子ばっかだもーん」
「……ま、良い友人に恵まれているのならば何も言うまい」
「兄さん……」
「――という訳で、そうだ植物園に行こう」
「え? たあくんレポートはあ?」
「今無理にやり出したとしてもどうにもならん、少し自然と触れ合えば良い文章が浮かぶかもしれないだろう?」
「ふむ、一理あるな」
「だからミノル――明日の朝は、お前に任せた」
「目覚まし掛けろ、兄さん」
ロクジョー宅。
「カイちゃんカイちゃんカイっちゃーん!」
「あ、お帰り姉ちゃん」
「あ、うん、ただいま。――じゃなくって!」
「んー、どうかしたん」
「そうよカイちゃん! お姉ちゃん明日学校お休みなの!」
「でしょうね、GWだし」
「だから、お買い物にでも一緒に行かない?」
「別に良いけど?」
「いやんカイちゃんったら! そんなすんなりとお姉ちゃんを受け入れてくれるなんて嬉しいわ~」
「もし俺に反抗期があったなら一体姉ちゃんはどうなっていたのだろうか」
「栄養失調で悶えてたわ」
「何悶えよ」
「カイちゃんが足りない悶えよ!!」
「聞いたこと無ぇ」
「私も始めて言ったもの」
「で? 買い物て何処行くん」
「んーと、あ、カイちゃん何か欲しいものとか無い? 買い行きましょうよ~」
「欲しいもん……今は特に無ぇな」
「あらそう? 別に遠慮なんてしなくて良いのよ? お姉ちゃんカイちゃんの為に一杯バイトしてるんだからね!」
「あー……俺が勉強しなくてもぎりぎり低空飛行出来る頭あればな」
「高望みはしないのね、というか低過ぎる希望じゃない其れ?」
「テスト前とかは勉強しねぇとほんっとやべぇし、バイトとかしてらんねぇもんな……つーかバイトしたらテスト前でもバイト入っちゃいそうで出来ないんだよな、俺自己規制とか出来ねぇだろうから」
「ふふっ、カイちゃんはバイトなんてしなくて良いのよ」
「でもバイトとかしてれば、少しは姉ちゃんも楽出来るだろうし」
「……お姉ちゃんカイちゃんの其の優しさだけでもう八年はバイトやっていけるわ……」
「其れまで就職しないんすか姉ちゃん」
「します、でもカイちゃんとずっと居られる仕事探します」
「……頑張れ」
「うん♪ お姉ちゃん頑張る!」
「マヒルさんとかユウヤとか完全にブラコンだよなぁとか思ってたけど、姉ちゃんも大概だよな」
「私はブラコンじゃないわよ、カイちゃん限定なんだからね~」
「其れを俗にブラコンと言うのでは……」
「私はカイちゃんが居れば其れで良いのよ、他に何も要らないんだから!!」
「……姉ちゃんさ」
「ん?」
「俺んこと気にしてくれんのは嬉しいし、姉ちゃんが居ないと生きていけない(※生活出来ない的な意味で)ってのもあるけど、」
「お姉ちゃん悶え死に三秒前」
「頼むあと数分だけ生きてくれ……!」
「ん?」
「自分のこともちゃんと気に掛けてくれよな 他人のことだけじゃなくて」
「カイちゃん……」
「もう大学生も終わりなんだし、俺だって高校生だし、多少のことは自分で何とか出来んぜ?」
「……うん、そうね、カイちゃんはちっちゃい子じゃないんだものね」
「そーいうこと」
「分かった、お姉ちゃんカイちゃんの為に、――影からカイちゃんを見守るわ」
「姉ちゃん、其れは怖い」
「ところでカイちゃん、一目もお姉ちゃんにくれないけどずっとパソコンに向かって何してるの?」
「ずっとゲームしてるけど」
「カイちゃん……」
アヤメ宅。
ぴんぽーん。
「……ちょっとセツ、インターフォン」
「んぁ? 出ろってか、俺に出ろってか」
「良いじゃない其れくらい」
「しゃあねぇなぁ、はーい」
「はぁ……何処のどいつでしょう」
「俺だよ」
「貴方ですかイツキ先生」
「今振ったろ、完全にネタ振ったろ」
「いやですね、僕がそんなことするはずないじゃないですか」
「っていうか其れに乗っちゃったいっきーの負けじゃね?」
「うっせぇ」
「で、どうなさったんです?」
「ほらよ」
「あ、其れ僕の」
「てんめぇ嫌がらせのように人の机に忘れ物しやがって」
「其れをわざわざ? イツキ先生やっさしー」
「いっきーヤッサシー」
「ふざけんなクソ兄弟、……キクカワが届けろっつーから」
「まぁ通り道みたいなものだものね、とりあえずありがとうイツキ先生。お礼に飲み物くらい出すけれど」
「嗚呼、悪ィな」
「五回目のティーバック紅茶と百パーセントレモンジュースどっちが良い?」
「帰る」
「冗談冗談、此れはセツが飲むよ」
「え、俺が飲むの?」
「珈琲で良い?」
「嗚呼」
「ちょっとシロ? 俺そんなん飲まねぇかんな? 百パーセントレモンジュースてただのレモン水じゃん」
「じゃあ、セツも珈琲飲む?」
「やだ、苦手の嫌い」
「お子様だな、セツよ」
「どうせお子様だい」
「はいどうぞ、インスタントだけど」
「飲めりゃ文句は無ぇ」
「うげ、其れブラックじゃん、そんなん飲むのかよいっきー」
「男は黙ってブラックだろ」
「そんなこと言って……昔は飲めなかったじゃないイツキ先生」
「昔? 高校ん時ってこと?」
「そうそう、イツキ先生によく自販機にパシられてねぇ」
「一度として俺が頼んだものを買ってきたこと無かったけどなお前」
「其の中でも一番嫌いそうなのがブラック珈琲だったから良く買って行ったんだよね」
「嫌がらせ受け過ぎて好きになったがな」
「ちゃんとしたもん買って来てくんないって分かってんのにシロをパシり続けるいっきーもいっきーだと思う俺」
「ロシアン自販機、だね」
「そんな自販機嫌だよ俺! ていうか別にロシアンじゃなくてシロの気分じゃん其れ!」
「後はそうだね、僕がイツキ君にパシられたといえば――夜だね」
「嗚呼、あれな」
「あれ?」
「イツキ君生徒会入ってたから、放課後の見回りとかしてたんだけど」
「へぇ、いっきー生徒会やってたんだ」
「夏の時期のとある日、夜に急に呼び出されて教室まで付き合え、って」
「……何故?」
「だって暗ぇじゃん」
「……は?」
「見回りの時に鍵を閉め忘れた部屋があるっていうことに気付いたんだっていって、一緒に来いって呼び出されたんだよ」
「……え、と、何で?」
「セツ、お前夏の夜の学校だぞ?」
「うん、そうだけど」
「イツキ君、こう見えてビビりだからね」
「――え!?」
「バッカ、ビビりじゃねぇよ、完全に怖がりなんだよ」
「其れ堂々と言えることじゃないよイツキ君」
「嘘、いっきー怖がりなの!? 意外!!」
「ったり前だ、俺の前で怖い話とかしてみろ。――血祭りだ」
「そっちの方が怖ぇ……!!」
「ま、イツキ君の武勇伝は未だ未だあるんだけどね」
「はン、俺限定にすんじゃねぇよ」
「わー、超気になる其れ」
「気が向いたら話してあげるよ、とりあえずセツ、そろそろ時間」
「あ、マジだ、ちょっと準備してくる」
「出掛けんのか? じゃあ俺は帰――」
「イツキ君車でしょ? ついでに乗せていってくれません?」
「は?」
「近場だし構わないよね、うん、構わない構わない」
「ちょい、お前自分の車あんだろうが」
「いやですねイツキ君、僕がペーパーなの知ってるでしょう?」
「準備終わったぜー」
「はい、よし、じゃあ行きましょうイツキ君」
「パシるってか、昔の仕返しってかコノヤロウ」
「さ、行きましょうか」
「おーう」
「てめぇ等覚えとけよ……」
ヒコク宅。
「たんだいまーっ!」
「お帰――え!? 母さん!?」
「そうよんユウ君! お久し振りのママよーん!」
「お帰りー!! ていうか久し振りだね帰って来るの!」
「上司がママのこと離してくれなかったのよん、やっとお休み取れたから帰って来ました☆ あーんユウくーん!」
「母さーん!!」
「進行の邪魔」
「あら、アサちゃんおはよう」
「あ?」
「相変わらずの寝起きの悪さでママ安心したわ、ただいまっ」
「そ」
「……」
「アサ君ご飯は?」
「食べる」
「ママも食べたいなー」
「はいはい」
「ふー、久し振りにゆっくり出来るなー。……あ、最近マヒルとシンヤ君は?」
「たまに帰って来る。父さんは何時も通り。言えば夕方くらいに帰って来る」
「うん、流石シンヤ君。マヒルは大学の方どうなのかしらねん、そろそろ卒業だった気がしたんだけど」
「聞いてない」
「まぁ、あの子なら大丈夫だって知ってるんだけど」
「おっまたせー! はいっどーぞっ」
「ありがとーユウ君っ」
「ん」
「そうそう、二人共GWだけど何処か行った?」
「え? んーん、全然、何よりアサ君のやる気が無い」
「ん」
「そっかー、折角のお休みだから出掛けようかなーとか思ってたんだけどなー」
「何処に?」
「無難にお買い物とかかな? ちょっと遠出して大きなショッピングモールに行くなんてどう?」
「アサ君が行くなら」
「怠い」
「バッサリねアサちゃん」
「眠い」
「寝起きだからね」
「二人で行ってくれば?」
「嫌ぁよ、アサちゃんひとり置いてくなんてこと出来ないわぁ」
「同じーく!」
「良いじゃん、つか折角の休みなんだから休めば良いのに」
「折角の休みだから子供達と遊びたいのよ」
「お母さん何歳?」
「覚えてないし覚えていたくないわ」
「たーくさんお買い物しましょうよっ! 何の為にシンヤ君がお医者さんしてると思ってるの!?」
「少なからず母さん達の無駄遣いの為では無い筈」
「父さんもきっと皆に楽しんで欲しいと思ってるって!!」
「あの優笑顔の裏にある怠惰感プラスアクティブ男の気持ちがお前に分かるはずがない、っていうかGWくらい帰って来ればいいのに。其れとお前と母さんの買い物に付き合うと荷物が――」
「ただいまー」
「「荷物持ち」」
「ええい此のタイミングで帰って来るとはクソ兄貴……!」
「もう心配事は無いでしょ? さっ、早く着替えて行こうよ!」
「もう良いよ分かったよ諦めりゃ良いんだろあーあーあー」
「ただい……あん? 母さん?」
「お帰り荷物持ち! さぁデパートに行くわよん☆」
「誰が荷物持ちだ。……え?」
結論:何処の家のGWも、対した遠出はしないのであった。