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338+稀有な人。



 新学期になっても素敵にカッコイイゼン君だよ、最近誰も反応してくれなくなったけどゼン君はめげない。


 さて、二年になりまして一組に配属された訳よ。あっ君と同じクラスって何だか楽しそうだけど、他とは皆別れちゃったなー。あ、ミノルちゃんは一緒か、ゼン君女の子と一緒とかマジ大歓迎なんだけど。

 担任がハヤサカなのも何だか楽しそうだし結論的にはなかなか良いクラス変えになったんじゃないかなー、なんて思っています席はクラスの一番端っこ。毎回のことだけどやはり此の席楽だよな。



「ゼン君」


「ん?」



 何処の可愛い子が話し掛けて来てくれたのかと思いきや、其処に居たのは珍しくもあっ君だった。……此の人が自ら俺の席まで来るなんて稀よ、稀――まぁ席はひとつ挟んで隣なんだけど――。


「どったのあっ君」


「話」


 がたん、と無遠慮に俺の前席の椅子を引けば座り、そうやって簡潔にものを述べた。


「うちの部活に入れたい奴が居るんだと」


「え? 何其れ何其れ」


 入れたい奴って誰だろ、此の時期だから後輩かな? っていうか“入れたい奴が居る”――って、誰かが誰かを入れたいって?


「正確には生徒会の方かな。何かそんなこと言われた気がする」


 何で肝心なとこ曖昧なのよ君。っていうか、


「生徒会に入りたいなんて人間が此の学校に居ただなんて、其れだけで充分奇跡的だよ」


 っていうね。


「自主性を重んじる学校の癖に自主性が無い人ばっかりだから俺達みたいのが生徒会やらされてんだよ? 本当其処だけはGC部創立代方に文句言いたいよ」


「言っとく」


「え?」


「でさ、」


「あ、うん、何?」


 言っとくって誰に言っとく気なんだろう、と若干気になったけど、とりあえず話が続くみたいだからそっちを聞くことにする。


「別に自分から入りたい訳じゃないと思うよ、そいつ」


「あ、そなの? つーか此処まで来たら聞くけど其れって誰?」


 そろそろ次の授業も始まるし、其れだけでも聞いておきたいじゃない。




「ん、ムラサメの弟さん」


「……ムラサメ?」



 ……此れはもう一回聞いた方が良いかな。



「あっ君。――ムラサメ……って誰?」


 全力で聞き覚えが無かった。

 ええと、ムラサメ、ムラサメ……あ、もしかして違うクラス? 元一組とかの。



「――わたし」


「!?」

「ムラサメ」


 そして其の問いに答えてくれたのはあっ君と、とある声――主に俺の右肩付近からから――の二人(?)だった。正面のあっ君はそりゃびっくりしないだろうけどゼン君的には心拍数運動後くらいには上がった気がしたよ。


 振り向けば其処に女の子がひとり、制服姿だし足もあるからただの女子高生みたいだよ、マジで良かった。


「え、えーっと、……ムラサメサン?」


「そう、ちなみにあなたの横の席に居るつもり」


「そして僕とも隣の席」


「マジかよ」


 此処か、此の席か。俺は隣の席を凝視して精一杯笑顔を保った。

 俺としたことがまさかの同じクラスの女の子を覚えてなかったようだ、不覚、不覚中の不覚。しかも隣て。



「……ごめんね! ムラサメちゃんのこと視界からアウトしてたっていうかゼン君の視界は常人以外と言いますか!!」


「構わない。しかし其れを利用させて貰えるならば代わりにわたしのお願いを聞いて欲しい、生徒会副会長のあなたに」


 許す意味を込めてか非常に似合うボブカットを揺らすように何度か頷き彼女はそう言った。出来れば肩口から前に回って欲しいんだけどな、ゼン君の身体捻れる。

 声にはしっかり抑揚がついてるから平坦って訳ではないけど、何かフウカ先輩みたいな子だなー。……フウカ先輩よか気難しそうだけどね。

 しかしお願い、というのはさっきあっ君が言ってた弟君とやらのことか――っていうかそういや俺生徒会副会長なんだっけ――? うちの学校の場合生徒会に立候補する奴なんざ絶対居ないから、うちの部活入れば今年度ほぼ確定的に委員会なんて入れるだろうけど。


「んーと? 弟君を生徒会に入れたいの?」


「そう、わたしの弟を是非あなた達の所属する部活、尚且つ生徒会へ所属させてあげて欲しい」


「そりゃ別に構わないけど、……そんなの姉ちゃんに頼まなくったって自分で来ればいいのに」


 あっ君に視線をやりながら「ねぇ?」と同意を求めて見れば、あっ君はひとつ溜息を吐いて視線をムラサメに送った。



「そうもいかない――んだっけ?」



 ムラサメはひとつ頷く。


「あなた達の所属するものに所属させたいのはわたしの意志であり、弟の意志では無い。弟は恐らく、如何(いか)にすれば部活動の幽霊部員になれるのかを試行錯誤しているはず」


「……は?」


「自宅で」


 ……ちょっと待て。じゃあ何か? ムラサメちゃんの弟君は別にうちに入りたい訳じゃなくて、……え?


「何で?」


「其れは何に対しての問い?」


「嗚呼ごめん、えっとさ、――ムラサメちゃんは、何で弟君をうちに入れたいの?」


 ムラサメちゃんは意味を理解して再び口を開く。


「理由は話せば長くなる。わたしの弟は小中と学校に行っていなかった、所謂引き篭り」


 そしてすんごい爆発真顔で投下してきたよ此の子。


「其れ、原因は?」


「イジメなどがあった訳では無く、弟は重度の恥ずかしがり屋」


 あっ君も此処いらの話は聞いてなかったみたいで口を挟んで来るけど、……え、恥ずかしがり屋さん?


「重度の恥ずかしがり屋でかなりの人見知り、無理をすれば真っ赤になって倒れる程」


 そりゃ凄ぇ。


「だからずっと母やわたしにくっついていた、でも高校に行かせるかどうかで悩んだ両親に弟が『頑張ってみたい』と言った。わたしはそんな弟に協力してあげたい」


 格好良いじゃん弟君。でもさっき幽霊部員になるとか……あれ?


「部活動もそうだけれど、クラスで友達だって作れるかどうかも不安。だからせめて、他人側が弟に声を掛けてくれられるようにしたい」


「で、考えて出た結果が生徒会、って訳ね」


 ムラサメちゃんが頷いて、荒療治、と一言。

 確かにかなりの荒療治とも取れる。何せ生徒会なんて、書類とかの他は生徒や教師と話してなんぼだし。


「……どう?」


 ムラサメちゃんは不安そうに首を傾げ、俺とあっ君は視線を交わす。一年の付き合いではあるけれどまぁまぁ深い付き合いであるからして、あっ君の視線の意味は“いーんじゃねぇの?”が正解で間違い無いと思われる。


 そして俺が其の返事をムラサメちゃんに返そうとした時、丁度授業開始のチャイムが鳴り響いた。いかん、次移動だった。


「とりあえず、此の話は後程」


 ムラサメちゃんもあっ君も、テキパキとした動きで移動し始めていた。どうでもいいとこ真面目なあっ君もそうだけど、ムラサメちゃんもなかなかの真面目っ子そう、うちのクラス真面目ばっかかい。




 っていうか、うちの部活に後輩……?

 ――うん、面白そうじゃんね?





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