334+学校へ行こう!/前
「うっわー、久しぶりに来たな此れ」
「ははっ! たった一年だというのに実に懐かしいねっ!」
ユウヤでっす! 明日から学校が始まるんだけれどやっぱり面倒だよなぁ、なんて思いながらも、新学期ってちょっとだけ楽しみだったりもするんだよね!
春休み最終日、俺、カイト君、それにユキちゃんの三人は今、懐かしの出身中学の校門前に居ます。休み中に来よう来ようと思ってたのに、皆の予定がなかなか合わなくてこんな遅くなっちゃった。ちなみに勿論アサ君とアスカも誘ってるよ! ……未だ来てないけどね。アスカはもう学校が始まってるらしくって、此処で待ち合わせしてるんだけど――
「よっし、ユキ! 突入だ!」
「おうともさっ! 我等は来賓として中学校に侵・入☆」
「え? ちょっ、未だ二人来てないよ!? ちょっとー!!!!」
二人が先走って行っちゃった。……何時の間にか家から消えてた――本屋に行く時だけは驚異的な動きを見せるんだよあいつ――アサ君とも此処待ち合わせなんだけど。
………まぁ、いっか。
俺が二人の後を追い掛けた時には二人はもう来賓入口である二階入口付近に居た、行動力半端無ぇ。
「来賓の時は名前を書くのだよユウヤ」
「言われなくても分かってるよ?」
「ユウヤはそそっかしそうだからね、そう言いたくなるのだよ」
俺そんなにそそっかしいかな……。久し振りに会うユキちゃんは相変わらずな極上スマイルを俺に向けてくれた、嗚呼、これぞユキちゃんだよね。
「――おんやぁ? 其処に居るのは?」
カイト君が来賓名簿に名前を書き、今何時だよと呟いた直後、懐かしい其の声に俺やユキちゃん、其れに名簿に視線を置いていたカイト君も顔を上げた。
「あ! キクカワ先生!」
「やっぱり君達かっ! 懐かしき教え子達!!」
久し振りに見た女性教師、キクカワ先生が俺達の方に笑顔を振り撒きながらやって来た。先生は物珍しそうな表情で俺達三人を見遣れば「なっつかしいねぇ……」としみじみ呟いた。
「ご無沙汰しています、キクカワ先生」
「うんうん、其の何とも言えないカッタい感じ、正しくサキネだねぇ」
「良かったなユキ、褒められてんぞ」
「ははっ! 光栄だね!」
ツッコミが居ない現状が蔓延しているけど久し振りなんだから良いんじゃないかな。
キクカワ先生は一年前に担任していた――と言っても実質キクカワ先生が担任した人誰も居ないけど――俺達のことをちゃんと覚えてくれていた、笑顔で会議室行こう会議室、と急かす先生の姿を見ていたら、一番先生が楽しんでるんじゃないかと思えて笑えた。
「もっと早く会いに行てくれたら良いのにー。君達の代って結構白状で、会いに行てくれた子居なかったんだからね!」
「え、そうなんですか?」
何処かふて腐れたように先生は言う。
「いや、中学なんてそんなもんよ? 最初の内は制服姿見せに来てくれる子とか居るもんだけど、どんどん居なくなっていく」
でも、――先生は続ける。
「――一人も来ないってどうよ?」
薄情、ですね。
カイト君は憐れみ、ユキちゃんは爆笑寸前だった。