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330+憂う出来た人。/前


「で、おまいさんは何に不機嫌だったんだい」


「……は?」


 マヒルだ、買い物出てみたら試食コーナーに子ども諸共戯れるセツを発見した。流石にスルーしようと思ったんだが目敏く見つかって、おまけに着いてきやがった、……荷物持ちに良いから米買って帰ろう。


 そんなこんなで主婦層厚いスーパーから徒歩帰りする最中、セツがキョトン顔で尋ねてきたからつい睨んでしまった。両親共あんななのに何処からの血なのか、睨みを利かせると迫力あることに定評があるらしい――そんな定評欲しくはないが――俺にセツの方が畏縮してしまいそうだから、直ぐ様「何の話?」と話題模索に取り掛かった。


「いやあ、バイト先で何かあったんだろ?」


「え……、お前其れ何処情報?」


「俺情報。バイト先冷やかしに行こうとしたけど、マヒルがドスの利いたオーラ纏ってたから止めた、こあい」


「良い成人がこあいとか言うなよ」


 お前は俺のストーカーか何かか。年がら年中暇人だから仕方ないだろうが此の銀髪、生憎付き合いはそれなりだから見れば俺の機嫌くらい分かってしまうらしい。……そんなに分かりやすい性格してたっけな、俺。

 まぁしかし、バイト先で若干キレ掛かったのもまた事実。俺はひとつ溜息を吐いて、重いであろう荷物を持つセツを横目に見た。



「別に大したことじゃねぇよ、……ただ、」


「ただ、……?」


「人って本当、自分主義な生き物なんだよなぁ、……って、思って」



 ――沢山の日用品や食物を買い込む人が沢山居た。沢山の物を買い込む為には急がないといけなくて、急ぐ其の足で手押すカートに小さな子供がぶつかりそうになっていた。



「不安なのは仕方ないけどさ。……生きることに必死になり過ぎた人間は、他人を思いやれなくなっちまうのかな……って」


「んー……、どうなんだろうな……」


「俺達なんてこんなに元気なんだぜ? だけど何でか被災地の人達の方が全然――“生きてる気がする”んだよ」



 下手をすれば大怪我だったのに、結局其の一連の出来事に気付いたのは俺だけで、他の人等は悠々自適に買い物に勤しんでいた。

 別に何てことない、ただ子どもが転んだだけなんだから。――そう、言われた気がした。




「ま、確かにそんなこと今じゃなくたってあると思うけどさ。……二人に何時も通りにしてろっつった癖して、もしかしたら俺が一番落ち着いてねぇのかも」


 締まらない兄貴だよ全く、そう言って笑えばセツが一度荷物を抱え直した音がした。何の気もなく其方を見たら、セツは何故か我が物顔で俺を見ていて、



「今日、双子は?」



 何故か二人の所在を尋ねられた。

 何時もならセツが言いたい大抵のことは分かるのだが、今回ばかりは、否、其の表情だけは何故だろう――一切合切理解出来なかった。




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