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325+いざ、白銀の世界へ。/in帰りのバス内


 機嫌が悪くてもアサキはアサキだ。帰りのバスの中、やっと帰れるんだからゆっくりさせろと思わない訳では無い、というか普通疲れて寝るだろ、と思っていた僕の考えを覆してくれました我等が一組。



『ええっとお、では次行きまあす! えっとお、――びいのさあん!』



『いえええい!! あったあああああ!!!!』


『ちくしょおおおお!!!! 四ならあったのによおおお!!!!』


『リィいいいいいチ!!!!』


『ちょっ、おまっ、未だ二つ目だろうが!』


 ――何でクラス全体でビンゴ大会してんだよ……ハイテンション過ぎんだろ……。


「あー、俺もあったー」


「ええっ!? ボクひとつも開いてないすけど!! どうしよう!!」


「シギー、未だ二つ目なんだからさー」


 そしてそんなクラスメイトに漏れることなく横と後ろの馬鹿も超ハイテンションで参加している、ビンゴ大会とかふざけんじゃねぇよマジで、眠いんだから寝かせろ死ぬ。


『はあい次い! ――おうのななじゅうよおん!』


『うおおおおおお!!!! 来ねえええええええ!!!!』


『ビンゴの三歩手前えええええええ!!!!!!』


『何だよ其れリーチでも無ぇよ』


 マイクで番号を読むのはドウモトで、至るところでマイク片手に騒ぐクラスメイトが目立つ。畜生、早くパーキング着けば良いのに、此のテンション着いて行けねぇ、誰か助けて。というかハヤサカ先生も絶対こういうの嫌いだろうに何故しれっとしていらっしゃる、嗚呼アレか、我関せずってやつかコノヤロウ後ろは勝手に騒いでろってか。


『次い! ――あいのきゅうだよお!!』


『うああああああ!!!!』


 もう良い……!


『はあい! ビンゴになった人はちゃんとテナに言ってねえ? お菓子セットが数人分ありまあす!』


 誰がそんなもん欲しがるんだよ、とつい呟いてしまったが、フドウは後ろから凄く嬉々とした声達が響いてきたの聞いて苦笑していた。お前等充分スキー楽しんだから菓子とか要らんだろう……!

 そろそろ僕の苛々も最高潮に昇った頃――といってもビンゴ大会は始まって間もないのだが――、ふとハヤサカ先生が立ち上がってドウモトからマイクを借りていた。



『皆さん、下らない余興に浸っているのは良いですが、』


 おい。


『――そろそろ最後のパーキングに着きますので一旦中断して下さい、此処から一時間以上バスに乗ることになりますので、お手洗いを済ましておくことをお薦めします』


『『えええええええ』』


『別に結構ですよ、急に尿意を催して学校まで死ぬ気で耐えることになったとしても僕は一向に構いません、年頃の生徒達が学校で死に物狂いに手洗いに並ぶ絵面なんて実に滑稽だと思いませんか?』


『『……』』


 嗚呼、皆準備し始めた。真顔だからこその威力だと思う。



「アサキも出るのー?」


 僕の願いが通じて良かった、と荷物の準備をしていたらコガネイにそう聞かれ、勿論出るだろうとひとつ頷いた。


「当たり前だろ、寧ろ此のバスを出てやる」


「え、歩いて帰るんすか?」


「お前斬るよ」


「何で!?」


 こっから一時間以上バスだっつってんだろ、其れじゃなくても苛々してんだからしねコノヤロウ。


「二組のバス侵入する」


「そうなんだ~」


「え、良いんすか其れ」


「と、いうことですのでハヤサカ先生」


「ご迷惑を掛けないようにして下さいね」


「え、止めないんすか先生……!」


 ハヤサカ先生って案外緩いから良い。


「嗚呼、其れとドウモト」


「ん? なあにあー君?」


 出る前に渡しておくものがあったんだった。




「此れ」


「……おお、あー君すっごおい! ビンゴしてるう!!」


 ビンゴカード、……こういう引き運だけはあるらしい。










 って訳でユウヤでっす! どういう訳かは聞いちゃいけない!


『はーい皆、此処から……ええと、どれくらいだったかしら? ……まぁ、とにかく結構長めに乗ってるからねぇ』


 出来れば目安くらい知りたかったけどホノちゃんが覚えてる訳も無く。一番後ろの五人座りの内右の三つはさっきやってきたアサ君に取られちゃったから俺はひとつ前の助手席に座ってるんだけども。


「二組……静かで良い……」


「あっ君一組で何があったんだろうね」


「さぁな、でも寝たいなら其れでいんじゃね?」


 何故かお菓子を抱えてやって来たアサ君、そのお菓子は勿論カイト君が食べてるんだけど――勿論ってのもおかしい話だ――もう寝ちゃったし、真意は分からないなぁ。

 一組が騒がしかったから来たんだろうけど、其処までして寝たかったのだろうか。ホノちゃんは『あらあら』って微笑んでただけだから良いけど、……本当に疲れてたんだろうなぁ。


 にしてもそうか、スキー研修もう終わりか。


「帰ったら先ず、サチ達にお土産渡し行かなきゃ」


「あ、サチ先輩に宜しくね、ゼン君」


「おう」


 サチ先輩の家はゼン君の家の裏、だったっけ? らしいから先に渡してもらうことにしたけど、あとの二人のは学校で渡すことになるかな。とりあえず振り替えで休みだから明々後日とかになるけど。



 スキーは楽しかった、でも。



「……ふふっ」


 すう、と安らかな寝息を立てる弟がちょっと可哀相だから、やっぱり普通の日常の方が良いかな、と思った。

 嗚呼、俺ってやっぱりブラコンなんだろうな……悔いは無いけど!



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