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322+いざ、白銀の世界へ。/in弟の部屋


「あー、疲れたっす!」


「の割に元気だよなお前」


 引き続いてユウヤです! 研修を終えてのんびり皆でフリー滑走! 俺の場合午前中もほぼフリーだったから全体的にフリーな一日だった。楽しかったなー!!

 にこにこと楽しそうに笑みを零しながら疲れたなんて言うシギ君に苦笑するカイト君の横を歩く俺、ただ今の俺達は部屋に戻る最中で、ついでに言えばこのままシギ君の部屋に飯まで雪崩れ込む気でいる、アサ君の様子も気になるし。スキーウェア着たままってどうなのよ、とは思うけどどうせ一時間もしない内に飯だし、そのまま行って戻ってから着替えたって別に大丈夫だよねー。




「あ、シギお帰りー、そして皆さんもどーぞどーぞ」


「ただいまっす!」


「おっじゃまっしまーっす」


「おっじゃまー」


 笑顔で迎えてくれたハク君に遠慮なく部屋に入り込めば、其処に見知った金髪が此方も笑顔でやっほー、なんて言った。


「あり、ゼンもこっち来てたん?」


「うん、だってフリーやらないで帰って来たって誰も居ないで暇じゃん」


 其れは確かに。俺達の部屋の人って皆わいわいがやがや滑ってる人等ばかりだろうし、折角のスキー研修に部屋一人程侘しいものは無いよ。


「だからはっ君と話してたんだよ」


「俺も丁度暇だったからさー、ワタヌキの話って聞いてるだけで面白いなー」


「あっはっは其れは良かった」


 ゼン君がはっ君相手にどんな話をしたのかはとても気になるところではあるけれど今はとりあえず良いや、――何よりもっと気になるものが真横にあるもので。



「ねぇゼン君にはっ君、――うちの弟何時から寝てるの……?」


 朝に畳むはずの布団の中でふっつーに寝てる弟がさっきから目に入って離せないんだが……?

 二人は別に疑問に思うでもなくふとアサ君に視線を置いて、二人で目を合わせてから、


「最初から、だよな?」


「うん、そだねー」


 と、答えた。

 ……此の子にとって、スキーって本当意味を成さないんだなぁ、と、お兄ちゃんは思いましたよ、ええ。








「ところでさー、」


 俺やシギ君が部屋に落ち着いて、カイト君が一人テレビに夢中になった頃。


「シギって何でヒコクとか俺とか、皆のこと苗字呼びなんだー?」


 はっ君がそんな些細な疑問をぶつけた。


「……ボクっすか?」


 当の本人はスキーウェアを着替え終わり、此処に来るまでに買ったアイスに夢中だった所為からキョトン顔だが。


「シギって仲良い人でも苗字呼びだよなーってさっき思ってさー」


「え、ま、まぁ、そうっすけど」


「ていうかシギの場合仲良い人でも敬語染みてるからな」


 俺にもこんななんだから仕方なくない? と幼馴染ゼン君が言えばはっ君は若干納得したように頷いた。


「俺のことだって適当に呼んじゃって良いのにーって言ったんだけどさー」


「て、適当って言いますと?」


「ほら、此の人達そんな話した覚えないのに勝手にはっ君とか其れこそハク君とかハクとか勝手に呼んでるじゃん」

 

 此の人達――ゼン君と俺とカイト君のことを差してそう言えば、「ヒコクだって俺のこと呼び捨てるじゃん? 一番話してたシギが一番遠いって面白いなーって思ったんだよー」と其処まで言って何故か楽しそうに笑った。


「でもそうだよね、シギに一番近い俺ですら『ゼン君』だしねぇ」


「俺なんて『ヒコク君のお兄さん』だよ、遠いよ。……あれ? そうなるとはっ君て俺のこと何て呼んでる?」


「んー、呼んでないんじゃないかなー?」


 ――今地味に傷付いた。


「冗談冗談、俺は普通に同じく『ヒコク』って呼ぶよー。そんなに悲しい顔しないでー」


「べ、別に悲しくなんてないんだからねっ!」


「ツンデレサービス万歳」


「カイ君そういうところは目敏く反応するよね……ゼン君びっくり」


 カイト君が如何にそういう方面に沈んでいるのかが分かったところでシギ君を見れば、俺達の話に着いて来れてないのかあう、だのえと、だの声を漏らしていた。良く見れば何か泣きそうで最早可哀相でもあるが。






「ほーら、シギ、言いたいことはちゃんと言わないと伝わんないんだよー?」


 でもそんな気配をいち早く察知していたのは流石は幼馴染、苦笑してシギ君に向け首を傾げれば「わ、分かってるっす」と小さく返事が返って来ていた。其れから数度口を開こうか開きまいかでしどろもどろしていたけれど、皆で辛抱強く――約一名は寝てて、約一名はテレビに夢中だけど――待ってみたら、やっと口を開いてくれた。



「ぼ、ボク、……昔からあんまり友達とか居なくて……ずっとゼン君と一緒だったからどうして良いか分からなくて……ええと、みょっ、あ、違っ、……いきなり名前で呼んだりしたら、失礼かなっ、て、思いまし――」


「全然失礼じゃないよ!」


 最早マジで泣く二秒前のシギ君に感動して口を挟んだ俺、此の子……なんて純粋な子なんだろう……!


「全ッ然大丈夫だよ! 俺のこととは全然ユウヤで良いんだからさっ! 友達のこと名前で呼ぶのが失礼なんて全然無いって! ねっ、カイト君!?」


「え、何が?」


「聞いてろし!」


 畜生話振る相手間違えた!!



「そうだよシギー」


「こ、コガネイ君……」


「何も言われなくたって、自分がそう呼びたいんだったら呼んで良いんだよー? 名前で呼びたいって思ったら、そう呼びたいって言っても良いし、そう呼んじゃったって良いんだよー」


 のんのんとした笑みを浮かべながらはっ君がそう言えば、シギ君は顔を真っ赤にしながら「ありがとう、ございます、えへへっ」なんて笑った。うんうん、友情って良いねぇ全く。


 ――なんて話をしてるのに全く反応を見せない約二名に憤りすら感じるけどね! アサ君は仕方ないんだろうけど其れでもやっぱりさ! ね!



「で、結局どうするん?」


 ――憤りとか難しい言葉考えてたらカイト君がこっち向いた。


「シギ、呼び方変えんの? つーか変わるの?」


 記憶の断片を辿って会話に入ってきたカイト君はそう言うなり寝てるアサ君を見て、「アサキのこと名前で呼ぶとかさ?」なんて言ってみている。シギ君が神妙な表情になってしまったのは言うまでもない。


「お、怒られないっすかね……?」


「アサキは基本的苗字呼びの方が怒んぞ」


「……えぇ!?」


「ユウヤと被って分かりにくいとか何とか、シギは差ぁ付けてっから何も言わなかったんだろうけど」


「其の結果俺がシギ君と遠くなりました!!」


「え、……と、じゃあ、あの、な、名前で、呼び、ます」


「本当に!? よっしゃあ名前呼び確保!!」


「ゆっ君テンションカオスだよ」


「じゃあ俺もヒコクのことは名前で呼ぼー、兄の方はヒコクのままで良いかなー?」


「いいいやいやいやいや! 俺のこともユウヤかっこはあとって呼んで」


「いや普通に気持ち悪いからな」



 此の後もやいのやいの色々言って、結局二人共名前で呼んでくれることになったみたいだけど、俺達が居なくなってから起きるアサ君はいきなりそんなことになっててどんな反応をするのか楽しみかもしれない。でもまぁアサ君のことだからナチュラルスルーかもな、うん、多分そうだ。





「っていうかシギ、お前俺の名前呼び捨てたって良いんだけど?」


「ぅええ!? そっ、其れは無理っすよ!! ゼン君無理っすよ!!」


「え、無理なの? ゼン君が無理なの?」


 そして部屋に戻る直前、呼び捨ては未だ無理だということが発覚した、ゼン君でも無理なのか、前途多難シギ君呼び捨て計画(※誰もやっていません)。




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