317+いざ、白銀の世界へ。/in女子会
――リョウコ、です。
「一」
「……に」
「さあん!」
「四」
「………………ご」
「「ダウト(お)」」
「え、ちょ、何でバレるの!?」
夕飯も食べたしお風呂も入って後やることと言えば寝るだけなんだけど、未だ消灯まで時間あるし――って訳なのかテナが遊びに来たわ。トランプやってるのは良いけどなかなか勝てない……!
「リョウコは分かりやすい」
「そうそう、リョウコってば嘘付けない体質だよねえ?」
うっ、た、確かにそうかもしれないけど……ミノルはポーカーフェイス過ぎるし、テナはずっと楽しそうだし分からないのよ! ずるくないかしら此れ!
私は溜まったトランプをがさがさと手元に寄せて、一人溜息を付いた。
「あーもうやめやめ、私の負けが目に見えてるのにやる意味が分からないわ」
「ええ、テナはすっごく楽しいけどお」
「私もだ、友達と遅くまでトランプ……凄く身に沁みる……」
「アンタ達……」
勝つ人は楽しいでしょうよ、えぇ。キョトン顔の二人からトランプを奪い取って、まとめてから床に置く。……こういう時間って何をすればいいのか分からないのよね……。別に友達と一緒に居る訳だから楽しくない訳じゃないんだけど、だらだらと話すのは何時だって出来るんだから今出来ることをしたいじゃない? 折角の友達との泊まりなんだしさ。
「ああ、そーうだっ! ねえねえリョウコっ、ミノちゃんっ、テナからの提あーん!」
「?」
「ん、何?」
普段は化粧ばっちりのテナはお風呂上がりということですっぴんだけど、あまり何時もと変わらないって言ったら怒るかしら。充分に可愛いテナがばっと立ち上がって普段通りきゃらきゃらと笑った。
「三人でえ、下の階に遊びに行こうよお!」
――はい?
……いけないいけない、私ったら数秒間何処かに飛んで行ってしまった。ええと、……下の階?
下の階――男子の宿泊階……?
「うむ、其れは楽しそうだな」
「でしょお? 朝のバスで遊びに行くよお、ってテナあー君としぎしぎに言って来たのお」
「おいこらテナ!! な、な、何言ってんの!? よ、良い歳の男女がこんな時間に会うだなんて……!」
「リョウコ、リョウコ、歳が何十歳も老けて見えるぞ」
「ば、馬鹿言うんじゃないわよ! 私はぴちぴちの十六歳なんだから!!」
「リョウコ、表現も古い」
何とでも言いなさいよ! でも下の階だなんてそんな……は、破廉恥な!!(※一時的に古めかしい言語でお送りしています)
「絶対駄目よ! そんな、ば、バレたりしたら一晩中ロビーで正座よ!?」
「ハヤサカ先生があ、そういうのは先生達にバレないようにやれえって」
ちょっ、ハヤサカ先生何言っちゃってるのよ!!!!
「だから消灯後にれっつらごう☆ みたいなあ?」
「おお、消灯後とは実にスリリングだ、一度やってみたかった」
「やらなくていいのよミノル!! 珍しく目がキラッキラじゃない!?」
嗚呼もう駄目、此の子の目は既に真新しい経験に向いてるわ……。確かに消灯後ならバレないかもしれないけど……またひとつ問題があるのを私知ってるんだけど。
「ねぇ、テナ」
「なあにい?」
「消灯後に、男子達が起きてるのかしら?」
「だって友達とお泊りだよお、普通起きて――」
「十一時」
「……ふえ?」
「ヒコクアサキとヒコクユウヤの通常睡眠時刻」
「ええ!? 今時小学生だってもっと起きてるよお!!」
あの双子が普通な訳無いじゃない、兄なら未だしも弟なんて部活の時間から寝てるわよ。
自分で言っておいて何だけれど、世知辛い世の摂理に私は黄昏れておいた。
「そんなのおかしいよお! お泊りだよ!? あー君だけなら未だしもゆー君も寝ちゃうのお!? ねえミノちゃんっ、おかしいよねえ!?」
「健康的だな」
「ミノちゃあん!!!!」
ミノルに聞いただけ無駄だったわね。
「まぁとにかく、行くにしてももうちょっと早い時間にした方が良いんじゃない? 夕飯終わりとかね」
「はあい、じゃあ明日行くう」
少し落ち込みながらも素直なテナにほっと落ち着く私、……でも思ってみればアレよね、ただ友達のところに行くだけなんだからこんな意固地にならなくても良かったのよね。……はあ、私って実際くそ真面目ってやつだものね……。
「って訳でテナ、明日もあるんだから今日は大人しく寝なさいね」
「はあいっ、じゃあ部屋に戻るねえ。お休み! リョウコ、ミノちゃん!」
「嗚呼、お休み」
「お休みなさい」
テナって本物良い子よねぇ……、何処かのおばさん臭くそう呟いたら、ミノルが苦笑気味に近所のおばさんみたいだな、なんて言った。
悪かったわね、おばさんで。