315+いざ、白銀の世界へ。/in白銀の世界
引き続いてアサキですが。
宿泊先に着いて直ぐにスキーって何なのしぬの? ずっとバス移動で直接此処だからまぁ良いけれど、初日はゆっくりさせて下さい。っていう意見は通りませんね知ってます。
中学の時は何処かの馬鹿達の所為でスキーもろくに出来なかったっけ、まぁ一日目くらいは楽しんでやっても良いだろう。馬鹿共とは違うコースを選択した僕としては、生憎奴等と同コース同班になったフドウにエールを送っておいた。
「頑張れ」
「え、何がっすか?」
伝わらなかったけど、後々分かることだろうと僕は遠くを見ておいた。
「あっくーん! もしかして六班? わーい一緒一緒」
「ゼン君……もう少し上のコースに居るもんだと思ってた」
スキーウェアに身を包んだゼン君は見事僕を他と見分け駆け寄って来た――よく走れたな――。身形は(※強調)良いからスキーウェアも似合うゼン君に比べ、最早ゴーグルが邪魔な僕はどうしたらいいんだ。
ゼン君はそんな格好でもふっ、と格好付け――本人に他意は無い――、「ま、ゼン君スキーとか超得意だけどね」なんて言い腐る、畜生他意は無いとかフォロー入れなきゃ良かった滅茶苦茶になってこけろ貴様。
「得意なら上級行けば良いのに、フドウもその他馬鹿も上級コース行ったよ」
「うん、知ってるよ、でもだからこそ中級が良いんだよね」
僕の普通の指摘に苦笑をするゼン君だが、視線は何処か居心地悪そうに泳いでいた。うん? 一体どうしたというんだ、ゼン君時たまこんな目の泳ぎ方するけど解明したことないんだよな……。今回くらい解明してみようか、と若干ながら意気込んだ僕は重いスキー板を抱えながらのすのすとリフトへと向かった、スキー靴重いしぬ。
「あっ君、先にスキー板はめちゃいなよ、あっちまで行っちゃうと邪魔じゃない?」
「ん、もう少し歩いてから」
確かに人が多くなるとやりにくいけどだからって此処からだと進めない、僕のスキーの苦手さナメんなよ、斜面で曲がれないからな。
そんな僕の思いを他所にゼン君は一人すいーっと平面を滑っている、畜生マジで得意なんじゃねぇかこいつ何なん。
「ゼン君先行けば? 今リフト空いてるけ――」
「だが断る」
早い、食い気味だ。
「此の俺があっ君を置いて先に行ける訳無いでしょ!」
「いや、置いてって下さい、全然良いんで置いてって下さい」
上手い人の横とか居辛いんで置いてってくれて構わないんだけど、ゼン君は梃子でも動かない――いや、すいすい滑ってんだけどね――みたいなので仕方なく一緒に行くことにした。
「――で、ゼン君、何で上級行かないの」
「え?」
リフトに乗っている間は暇なので、そんな話をしてみることにする、早めに謎を解明したい年頃である。
ゼン君は一瞬キョトンとして、でも言うべきか否かを迷っているような表情をしてから「ええとね、」ともう一度苦笑する。
「――上級ってさ、このリフトよりもっとたっかいとこ行くと思わない?」
「……まぁ、思うけど」
僕等が乗ってるリフトとは別に、奥にもうひとつあるリフトは最早先が見えないくらいの高さまで登っていくようであった。あんな高いところ行ったら寒そうだから行きたくないけど、……何だゼン君、寒がりか?
とか何とか考えてたら、下を滑る我が校のスキーウェアの中に見知った影を発見――見知った、と言っても最早ゼッケン番号で判断しているんだけれど――。
「あいつ等もう滑ってら、」
「あいつ等? シギ達?」
「うん、其処」
「ごめん見えない」
「……? 其処だけ――……ゼン君?」
スキーのストックでそっちを差すけど見えないって言われた、別に見えない距離ではないと思うんだけど。っていうか軽く視力0.5は切ってるであろう僕で見えるんだから『ゼン君両目2.0~』って自慢してた君なら見えるのでは、そう思ってゼン君を見たら、――見えない所か先ず、下を見てなかった。
「うん、えっと、……分かった?」
「……分かった、よく分かった。此のリフトの高さで駄目な人が、上級になんて行ける訳も無いよね」
何だよゼン君、――高い所、駄目だったのね。
「ヒャッホおおおおおウ!!」
「うわわわわわ止まれないやあはははは」
「ちょ、ちょっとロクジョー君にヒコク君のお兄さん!? 何処行くんすか二人共ー!!!!」
リフレイン気味に響く其の声等々が、リフトに乗ってる僕等に届いてなかったことに後で安堵するんだけれど其れはまぁ所詮は後の話だから僕は気にしない。