314+いざ、白銀の世界へ。/in行きのバス内
スキー研修編。
暑いアサキです、いや、一言で言っただけだけども。
折角の月末and週末だというのに休めずに居る僕――否、僕等はただ今バス移動を行っています。
何せ――スキー研修らしいんで。
「――しぎしぎい、あれ何かなあ?」
「え、……ゆ、雪じゃないっすかね……?」
「そっかあ」
お前等何普通のこと言ってんだよそりゃ雪だよ。
登る山道の風景を見つつ、何やら馬鹿らしく普通の話をしている二人を見ることなく思った。寒い山道だからって暖房が効き過ぎるバス内は死ぬ程暑いけど、外に出たらリアルに凍死すると思われる。前半のテンションでバス酔いした憐れなクラスメイトを一瞥――山道前に色んなもん食い過ぎなんだ――して、僕は黙々とゲームに勤しんだ。
「皆さん、そろそろ山荘の方に着きますので準備して下さい」
其れから間もなくして。
僕等の前の席のハヤサカ先生が立ち上がりそう言った、何時間乗っていたのかは知らないが飽きてきた頃だから丁度良い。ゲームの電源を落として外を見れば、フドウの言う通り外はすっかり雪景色となっていた。
「……寒そうだな」
「そりゃあ雪っすからねぇ、ボクすっごく楽しみっす!」
「何が?」
「え……す、スキー以外何かあるんすか……?」
「テナも楽しみだなあ、こう見えてスキー得意なんだよお。テナのカッコイイ姿ちゃんと見ててねえ?」
ドウモトに笑顔でそう言われ、フドウは元気良く了解をした。……正直スキーウェア着た人を見分けるのって難しいと思うんだが大丈夫なのかお前、僕は無責任なことは言えないので何も言わないでおく。
「でもなあ、修学旅行中ってあっ君やしぎしぎにあんまり会えないよねえ、お部屋に遊びに行っちゃいけないんでしょお?」
すっかり外にしか目が行かなくなった僕は、音だけでドウモトが背凭れに背を預けたのが分かった。
「そんなのつまんないよお、内緒で行ったりしちゃいけないのかなあ?」
「内緒も何もお前はとりあえず前の席が担任なことを察しろ」
ドウモトの場合正しくは斜め前だが。
「あ、いけない。先生聞いてましたあ?」
「ええ、しかと聞きましたが?」
自分の荷物を上から降ろしつつハヤサカ先生が首を捻る。聞いたから何だ的視線ありがとう先生。
「行くなとは言っておきますが、別に見つからなければ無いのと同じなのでは? 面倒なのでウタカタ先生以外には見つからないで下さい面倒なので」
「はあい先生、大好きい!」
「はいはい」
二回面倒って言った、そしてウタカタ先生には見つかって良いんだな、っていう正当なツッコミはしちゃいけないのか、多分駄目なんだろうが。子供嫌いとか豪語するだけあってあしらい方が適当過ぎる。けど担任になった四月当初より大分印象は変わったかもしれない、もっと真面目だと思ってた。
「じゃあ二人のお部屋に遊びに行こうっと! ミノちゃんとかリョウコも誘おうかなあ?」
「……あ、でもボク達の部屋って――」
「知ってる知ってるう、はっ君も一緒だよねえ」
フドウがちらりと後ろを見る、――はっ君、というのは三人部屋の僕等のもう一人の奴で、今僕とフドウの後ろでがっつり寝てる奴のことを言う。僕はそんなに話したことない奴だが選択科目音楽のフドウと隣だったとか何とか、フドウとそれなりに仲が良かったから引き入れた。面倒に五月蝿い奴よりは適当かと思って。本名は…………忘れたな。
「はっ君ならきっと大丈夫だよお、だってはっ君だもん!」
「そう……っすよね! コガネイ君っすもんね!」
――そうだコガネイだ、はっ君の原形は忘れたが苗字分かれば其れで困んねぇからいいや。
コガネイだったら何なんだよって思う人も多いかと思うが、丁度バスが止まったことだし放っとくとしよう。
「はい、降りますよ皆さん。寝てる輩が居ましたらとっとと叩き起こすか、放っておいてそのまま送り返すのも可です」
「可なんだ其れ、じゃあコガネイ置いてくか」
「ええ!? 起こしてあげましょうよ!! コガネイ君起きて下さいヒコク君に見捨てられますよ!!」
フドウが慌てて起こしているが僕は何も気にしない、のんびりと勝手に降りてったら「あなたは本当に良い性格をしていますね」ってハヤサカ先生に褒められました。……え? 褒められてないの? シラナカッタナー。
とりあえず、とっとと部屋に行きたいなぁと思った僕だった。誰だ薄情とか言った奴。