310+雪の悪夢は忘れない。
ユウヤでっす! 三学期入ってもやっぱり怠い授業中でっす! ……だけど今はホノちゃんの授業だから、あんまり面倒じゃないんだよなぁ此れが!
「――ってなってねぇ、先生びっくりしちゃったの」
――何てったって地理の授業から話が逸れて早十五分、未だ未だ日本の山脈の話に戻ることは無いようだ。さっすがホノちゃんだぜ!
カイト君は窓際席で爆睡、ゼン君も同文、リョウちゃんとミノルちゃんは何やかんやで聞いてるけど……俺もそろそろ夢の彼方に旅立とうかと検討中。
「――嗚呼そうそう、来週にスキー研修があるじゃない? 先生スキーってやったことないから楽しみなのよねぇ」
おっと此処に来てまた話が変わった、もう少し起きてよう。
――そうそう、俺達一年は来週からスキー研修なんだよね。高校入って未だ一年経ってない訳で不慣れな俺達一年二組は、大抵ホノちゃんの忘却癖の所為で色々大変な目に遭い掛けてる――体育祭とか、ね……――けど、今回は大丈夫! ……え? 別にホノちゃんの忘却癖が治った訳じゃないよ? ホノちゃんの忘却癖に慣れたハヤサカ先生が二学期の内から二組に乱入してきただけだよ?
皆が未だ浮かれ出す前に先手を打つなんて流石はハヤサカ先生だよねっ! 十一月じゃ流石の俺も浮かれないよ。
「皆はスキーとか、……嗚呼、中学でやった人が多いかしら。……もし先生が遭難したら助けてね? なんてねっ」
――先生、洒落にならねぇ。
「スキー楽しみっす!」
「ははっ、シギは家族とかでよくスキー行くもんなー」
場所は変わらず時は変わって昼休み、昼ご飯を終えた一組の三人が珍しく二組に進出して来た。何よりアサ君が動いたことがミステリー……!! まぁ用件は特に無いらしいんだけどね、たまには良いんじゃね? ということらしい。
シギ君の見事なはしゃぎっぷりを見て皆が和んだ(※約一名例外)ところでゼン君とアサ君は二人で小型ゲーム器に夢中になってしまいましたとさ。
「ウタカタ先生の授業でも言っていたな、スキー、……か」
「ふ? ミノルちゃんはスキー嫌いなの?」
「いや、嫌いでは無いがあまり得意で無いのは確かだ」
スキーだもんね、あれってどちらかと言えば経験なんでしょ? 俺は割と滑れた方だったけど――
「だーいじょうぶ大丈夫、アサキ中学ん時盛大にコケてたんだぜ」
――だしね。運動神経云々じゃないと思うよ、俺。
カイト君の適当な言い草にも目敏く反応したアサ君は座っていた席の人の筆箱を冷静に投げ付けていた。ちょ、其処誰の席よ、俺知らないからね……!
でもミノルちゃんはミノルちゃんで其れに少し安心したみたい、「アサキがそうなら安心だな」とか微笑みながら呟いてるけど一体何が安心なんだか、アサ君もリョウちゃんも困惑気味である。
「あ、ねぇねぇゼン君! 其の猫さん何なのお? 凄く可愛い! 桜色お!」
「可愛いよねー、一緒に戦ってくれるんだよー、ほら、オレンジ色も」
「うわあ! 橙にゃんにゃん!」
スキーの話に入って来ないなぁと思っていればテナちゃんはゲームの方の猫に夢中な様子。うわあ、普段俺がゲーム中話し掛けても下手すりゃ無反応なのにテナちゃんだとアレだよ、ゼン君ったら差別酷い。……確か此れ前言ったら「差別じゃなくて区別だよ」って真顔で言われたっけ――いっそ清々しかった。
ま、何はともかく来週だよね、俺的には凄く楽しみだなぁ!
「スキーか……、……ねぇ、ヒコクユウヤ」
「うぃ?」
「其れとロクジョーカイリ」
「あいよ?」
「――アンタ達、今回は反省文なんて書かされないように気をつけなさいよ? 多分担当、ハヤサカ先生でしょうから」
「「……」」
そんな真顔のリョウちゃんの言葉に、悪夢再来だけは避けようと思った俺、とカイト君だった。