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307+初、初詣。



「マーヒールー兄! 準備未だー!?」


「ちょっと待て! さっきまで洗い物をしていた兄ちゃんに対して其れは無いだろ!!」


 ユウヤです! 年明けますよあと少しで!!

 今年は――ん? 来年? 此の場合どっち? ……まぁ良いや未だ今年だし。

 皆で初詣に行こうってことで家の近くの神社に集まることになりました! へへっ、こういうのすっごく好きだから今から頬が緩む。何をする訳でも無いのにこうやって集まるっていうのが楽しいんだよね! そういうお年頃!!

 年越しそばももう食べたし、後は神社に行くだけ! ――なのに。


「ねぇ、アサくーん?」


「マフラー消えた」


「マフラーくらい無くたって良いじゃん! っていうか昨日洗濯してタンスに閉まったけど!?」


「マフラーをタンスに仕舞うな」


「アサ君がソファに出しっぱにするからでしょ!!」



「あれ、アサキ未だなの?」


「あ、マヒル兄。マヒル兄からも言って下さい、一人だけ動きのろのろなんだよあいつ」


 了承した本人が一番やる気無いってどういうことなのさ、両親も居ないからマヒル兄も来るって言ったけどそれなりにちゃんと早めに準備始めたよ!?

 玄関で靴まで履いて喚く俺とは大違いなアサ君は本当にのんびりと支度をしていました。


 ああもう、一人で浮かれてるみたいで馬鹿みたい!!!!













「やぁアサキにユウヤ! そしてマヒルさんもHappy new yearだよ!」


「ユキ、未だ大晦日だ」


 嗚呼、俺より浮かれてる人見つけた。いや、良い意味でだけど。

 神社に来たら其れこそ女の子にしか見えないユキちゃんが一人鳥居近くに座り込んでいた。俺達を見つけた瞬間ぱあっとこれ見よがしに表情を明るめ、滅茶苦茶良い発音でそんなことを口走った。


「ははっ! 其れもそうだね! 流石はアサキだよっ、格好はだるまさんみたいだがツッコミは冴えているね!」


「誰がだるまだ、お前だってそれなりに着込んでるだろ」


 真っ白いダッフルコートなんて実にユキちゃんらしいと思う、手袋なんてのもちゃんとしてるし、やっぱり夜中は冷えるしね。……まぁ、俺はアサ君よりちゃんと防寒してる人未だ見たことないけど。コート手袋マフラー耳あて、そして確か懐炉とか持ってたよね? どんだけ寒いのよ。


「ふふっ、そりゃあ寒いのだから仕方ないよ、其れに――」



「おーい、アサキにユキー」



「――アレは見ているだけで寒いからね」


「……まぁ」


 アサ君とユキちゃんを呼ぶ声がして俺共々其方を見れば、相変わらずの格好のカイト君を発見した。

 ええと、パーカーを防寒具に入れるなら、其れだけだね。


「よう、ユウヤにマヒルさんも。……ええと、あけおめ?」


「しねよお前」


「言わずもがな死にそうだね」


「よくウミが何も言わなかったな……寒くないのか?」


「え? え? あんまし寒くないっスよ?」


 心配しているのは恐らくマヒル兄くらいのものだろう、俺は何かもう見慣れたから其れで良いかなぁ、ということで笑顔で受け流すことにした。



「姉ちゃんは明日の向けて美味しいお節を作るんだー、って朝からはりきり過ぎてもう寝た」 



 どんなお節なんだろう……ちょっと気になる。俺も負けないものを作ったつもりだけどうちの人間無感動な人多いからなー、カイト君とかに食べる前に見てもらおうかな。


「ウミさんも来れば良かったのにねー」


「流石のウミもバッテリー切れたんだろ」


 マヒル兄は何処か楽しそうに苦笑した、ウミさんに聞かれていたら確実にどうにかなっただろうに。




 未だ年は越していないというのに神社には多くの人が集まっていた。未だ来てないのはアスカとリョウちゃんとモモちゃんかな、アスカは体調に寄っては来れないって言ってたけど……大丈夫かな?


「あ? ユウヤ何きょろきょろしてんだよ」


「え? あ、アスカ来れたかなーって、どっかで人の波にもみくちゃにされてないか心配で」


「アスカはお前が心配する程やわじゃねぇと思うぜ? ……色んな意味で」



「其れはどういう意味ですか、ロクジョー君?」


 俺が此れだけ探しても見つからなかったのに、あっさりとカイト君の背後にてアスカを発見、とりあえず鳥居の背後にどう回ったのか聞きたいけど気配が素敵だから俺は何も言わないでおく。


「うわっ、お前何時の間に……!?」


「何時の間になんて心外な、俺はずっと此処に居ましたよ?」


「嘘だっ! 絶ッ対嘘だ……!!」


「アスカー!!!!」


「あはは、こんばんは、ユウヤ」


 どう現れようとアスカはアスカだもんねっ! それなりに体調の宜しそうなアスカに飛び付けばやんわりと其れに応えてくれたアスカ、うわあい何か久し振りだなぁ!


「何だよ、身体平気だったんだな?」


「ええ、俺も高校生ですしね。両親も保護者の方にご迷惑を掛けないように、と言ってくれました」


 にっこりとカイト君に笑みを向けつつそう言うアスカ。……保護者? 保護者って誰?

 今の段階で保護者に値するのはマヒル兄だけど、アスカにはマヒル兄来るとかは話してなかった気がするんだけど。



「嗚呼、勿論保護者なんてガセネタですけどね」


「「……」」



 此の子、親御さん騙してきたんかい。


「ちょ、おま、良いのか其れ」


 流石のカイト君もそう言ったけど、当人はものっそい笑顔でした。


「まぁまぁ良いじゃないですか、マヒルさんも来てるなら結果オーライですよ」


 アサ君とユキちゃんと共に少し離れたベンチに座り込むマヒル兄を見て清々しい笑みを浮かべたアスカ、……。



「ま、アスカだし良いよねっ!」


「……良いのか?」


 珍しくカイト君が真面目に悩んでいた。












「わぁ、皆もう集まってたんだね~」


「早いわよっ! あ、マヒルさんこんにち――違う、こんばんはっ!」


 其れから少しして。

 実は規定時間の前に来ていた俺達のところにやって来たのはリョウちゃんとモモちゃんだった、えへ、先走って早めに来たんだよ。それにしてもリョウちゃんてマヒル兄とか年上の人にはちゃんと礼儀正しいんだなぁ、と。いや、元々礼儀正しいんだけど、俺達の中で四番目に常識ある気がする。ちなみに一、二、三番はアサ君とアスカとユキちゃんなんだけどあの三人は常識を知ってる癖に役立てないから意味が無い、やっぱりリョウちゃんが一番だ。

 マヒル兄がのんびりと挨拶を返せば――ちなみに此の人既に眠いんだと思う――やっと皆揃った訳で、そういや年明けって何時? なんて携帯を見てみる。





「……あ」


「……ん」



「年、今明けたけど」


「……嗚呼そう」



 ――何て無感動!! アサ君無感動過ぎるよ!?


「あれ、もう年明けたんですか? じゃああけましておめでとうございます」


「嗚呼、おめでとう」


「ふふっ、此のやる気の無い感じが素敵だね!」


 ぺこりと頭を下げたアスカに適当な返事を返すカイト君、ユキちゃんは恐らくツッコミなんだろうけどそんなんで本当に良いのかな!?


「私とリョウちゃん、外出てくるのちょっと遅かったもんね~」


「まぁね……でもまぁ神社に着いて良かったわ。道端で年越しとか、そんな虚しいの絶対嫌」


 嗚呼、そうなの女の子組。……あれ? 気にしてるの俺だけ?


「ね、ねぇマヒル兄、良いのかな、年明けこんなもので」


「嗚呼、いんじゃね? 十人十色、人にはそれぞれの年明けってもんがあるんだぜ……?」


 駄目だマヒル兄眠くてまともな思考が回ってない。なのにごめんね連れ出して……!!


「年明けたならもう帰りたい」


「アサキん中じゃあ初詣って年明けたら終わりなのか? 今からじゃね?」


「眠い」


「……おーい、立って寝るなよー」


 っていうかうちの兄弟眠いのに弱くないか、……あれ? 此の場合おかしいのは俺?














「もーえろよもえろーよー、ほのおよもーえーろー」


 神社の中心で行われている焚き火を見て、カイト君が棒読みで歌い出してから。


「焚き火あったかい……手がジンジンするよ~」


「モモ、手袋して来なかったからよ! ……私もだけど」


「手袋して来ないからじゃね?」


「さっき私が先に言ったわよ、っていうかパーカー一枚のアンタに言われたくないわよ!」



「あ、僕の手袋使う?」


「……え?」


「いや、暑くて脱いだから」


「……え?」


「……要らないならいいけ――」



「――リョウちゃん借りなよ! 手袋だよっ!」


「ほらアサキ貸してやれ! お前そんだけ着てんだから!!」



「いや、だから今貸そうかって……おい、奪うなカイト」


「ほらリョウコ!」


「あ、あ、ありが、とう」


「別に良いけど」


「はう、リョウちゃん可愛い……」






「何か見てるだけで面白いな」


「マヒル兄、珍しく不謹慎な発言だよ」


「あ、ごめん」


 少し離れたところで行われている四人の会話を見れば、眠い時だととことん人間らしさを飛び越え何かアレになることに定評あるマヒル兄がそう呟いた。

 それでもさっきよりは幾分覚醒したマヒル兄は少し辺りを見回してから、


「そういやユキ君とアスカ君は?」


 とリアルに保護者らしいことを聞いてきた。


「二人なら境内に甘酒貰い行ったよ」


「とことんだなあの二人」


 大人っぽいを通り越してジジ臭いとでも言いたいのかなマヒル兄、別に甘酒は全国共通若い人だって好きだよ!! まぁ俺はあんまし好きじゃないけどさ。

 其れから少ししてマヒル兄と近くのベンチに座れば、色んな人達が神社に訪れるのが見れて、普段は凄く閑散としている場所なのに凄いなぁ、なんて在り来たりな感想が浮かんで来た。マヒル兄も何か考えているのか、視線は何処か明後日の方向を見ていて。


「マヒル兄ー、そのまま寝ないでねー?」


「だーいじょうぶ、色々考える内は寝ねぇ」


 手をひらひらと舞わすのを見れば本当に寝る様子は無いけど、一体何を考えているんだか。



「今年は良い年になれば良いな」


「そーだねー、でも俺的には今年も充分良い年だったよ!」


「――そうか」


 俺の言葉に少しキョトンとしたマヒル兄は、けど直ぐににっこりと笑みを浮かべた。……我が兄ながら此のイケメン、彼女とか作ればいいのに。



 でもまぁマヒル兄は――俺もだけど!――暫くそういう色恋沙汰とは無縁なんだろうなぁ、とか、年の初めに何思わすんだか! アサ君ははたから見れば(周りの必死な応戦もあって)充分ラブコメしてるんだけど本人が無意識過ぎる、リョウちゃん本当ごめん。




「――よっし、マヒル兄、俺達もあっち行こっか!」


「はあ? 未だ遊び足りねぇのかよ……」


 遊び足りないって何さ! 別に良いじゃん行こうよ! そんな感じで駄々をこねていたら苦笑しながらもマヒル兄は立ち上がってくれた。ユキちゃんやアスカも戻って来て焚き火周辺に屯う皆のところ行った方が絶対楽しいからさ! 多分本当はもう眠いであろう兄を引っ張って、俺も其処に混ざることにした。



 本当は良い年でなくたって良い、神様なんてのが本当に居るのなら、――どうか俺を取巻く人達とこれからもずっと一緒に居させて下さい。ずっとなんて無いこと知ってるけど、俺が神様を信じている内くらいはお願いします。


 其れで、欲を言って良いなら、周りの皆が、俺の家族が、――俺の片割れが、――此れからどんなことがあってもずっと、ずっとずっと笑っていられますように。




 って。




 俺はずっとお願いし続けるよ、皆が幸せでいてくれないと、俺だって幸せになれないからさっ!




「マヒル兄!」


「ん?」


「はっぴーにゅーいやー! 今年も宜しくねっ!」


「……おう、此方こそ」


 何時もなら英語の発音がどうとか言うマヒル兄も、今日ばかりは何も言わずに笑ってくれた。





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