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306+不本意ながら捕獲しました。/後



 ってことで、久し振りに引き続いてアサキです。

 前回のおさらい的に言えば迷子の餓鬼を捕獲してしまって堕落しています、以上。



「ソオちゃんとみーちゃんは何が食べたいかなー?」


「ソオはね、チョコが良いなぁ!」


「ちーず!」


「良いよ~! お兄ちゃんが持ってきてあげる!」



 ――しかも横のクソ兄貴は餓鬼にデレッデレだしよ……。

 こいつ将来絶対碌な父親になれねぇだろうな、奥さんの尻に轢かれてしねばいいのに。


 このまま家に帰ってうだうだ計画はユウヤが「こんなところに居るのも何だし、とりあえず公園にでも行こうか! あ、其れともうち来る?」とか言い出した時点で無くなったのは僕知ってる。だって今家に居るのに全くのんびり出来ない、だって五月蠅い。

 僕がみーさんの知り合いだったことでもう一人の方の警戒は無かったし、ユウヤが此れだからみーさんも直ぐ打ち解けたし。

 何より――




『お掛けになった電話番号は現在――』




 頼みの綱のゼン君が、さっきから一切電話に出てくれません。

 え? 家に居るんだよね? 居るのに何で出ないのかな? しぬのかな? あははははは。


「あっくん!」


「あ? 何すか?」


「アサ君態度激悪だよ」


「うるせぇカス」


「子供を前にしてより態度悪くなってる……!!」


「おにーちゃんでないよぉ、ゼンくんねー、いまいそがしいらしいからー」


「忙しい? 家に居るのに?」


「うん」


 ユウヤがアイスを出すとか何とか――冬なのにアイスを食おうとしている此の集団と常備されている我が家がおかしい――言ってる隙にソファから降りたみーさんは食卓机に付く僕の足元に来て、相変わらず邪気とかそういうのが全く込められていない双眸を僕に見せてきてから、こう言った。




「ゼンくん、ちきゅうをまもるのにいそがしい、って」


「あのクソ野郎ゲームやってて餓鬼から目を離したのか」




 駄目な人間を見事に体現した感じだな、あの金髪。っていうかあいつ金髪と茶髪の中間くらいで表現しにくいんだよ、どっちかにしろよばーか!!(※荒れてます)


「駄目だ、ゼン君には暫く通じる気がしない……」


「アサ君の場合、明日は我が身だもんね」


「……」


「え、怒った? ごめんって」


「いや、ユウヤが難しいこと言ったから頭打ったのかと」


「今のごめん返せ」




 なんて話していても解決しない、ゼン君に二度とゲーム貸してやんね。と決意を固めたのはまぁ良いとして、たった今ユウヤが運んできたアイスを食べ出した二人を見つつ、僕は改めてちゃんと溜息をついた。行儀が良いことだけが救いだよ本当に。



「どうする? このまま送ってく?」


「何で僕がそんな面倒なことしなきゃいけないんだ」


「いや、俺が行くし」


「お前ゼン君家知らねぇだろばーか」


「あ」


 僕がゼン君の家知ってるのだってフドウの家に寄った時聞いただけだし――まぁお隣さんだし――、あいつん家って美容院で少し唖然としたけど、其の所為で髪の毛金になったって言ったフドウの表情がネガティヴ入りかけだったから触れないでおいた。


 ……ん、家が美容院?



「えと、そっちの子、」


「どうしたのアサ君、うなだれた机からこれ見よがしに起き上がって」


「的確な形容をありがとう、――じゃなくて。そっちの……ソオ、ちゃん?」


「アサ君がちゃん付けすると面白いね」


「じゃあソオさんって呼んでやろうか?」


「ソオはソオって呼んで欲しいの」


「ああ面倒臭ぇな、じゃあソオ!」



 呼び捨てたら満足そうだった、何なんだ此の餓鬼。


「君の家、もしかして美容院?」


「……何で知ってるの? 髪切るところだよ」


「ざっくばらんな形容だこと!! 合ってんじゃねぇか!!」


「え、どうしたのアサ君、何か変にハイだよ!?」


「うっせぇ黙れ! もう全員黙れ!!」



 面倒臭さが末期なのとソオの身元が分かって其の面倒さから解放されるかと思ったらハイになったんだよ!!

 という訳でテンションは少し戻し、僕は先程閉じた携帯を再び片手で開いて直ぐコール出来るように登録出来る携帯の便利機能に親やユウヤを差し置いて最初に登録してある番号にコールすることにした。

 同じクラスだからか、ダントツで電話してるしされてる気がする、あいつには。







『え? ……えぇ!? な、何でソオとミヤコちゃんがヒコク君のお家に居るんすか羨ましい!!』


「何で羨ましがったんだお前帰れ」


『や、今家なんすけど……』


 という訳で、ソオの兄だと思われる人物――フドウに問い詰めたところ、案の定であった。


『今から迎えに行くっす! ……あ、ゼン君も連れて行った方が良いんすよね?』


「良く分かってんじゃねぇか、俺は今あいつを殴りたくて仕方ねぇんだ」


「アサ君、子供達の前で血の惨劇だけはやめてね」


 お隣さんならゼン君を連れて来ることは可能だろう、僕は通話を切って――勿論ユウヤのツッコミはスルーで――再びソファの方を見れば、餓鬼共の視線を集めていることに気付いた。何だよ、見るなよ。



「お兄ちゃん、怒ってた……?」


 嗚呼、其れを気にしてたのか。――って、あのフドウが怒るとか僕には全然想像が……。



「きっと怒ってないから大丈夫だよ!」


 僕が自分でした奇妙な怒るフドウの想像に苦笑しかけた時、ユウヤが満面の笑みを浮かべて二人の前にしゃがみ込んだ。




「怒ってたとしても、其れはソオちゃんとみーちゃんを心配してたからだから、ちゃあんとごめんなさいすれば許してくれるよー!」


 だから、とユウヤは前置きをして、より一層、笑みを色を濃くした。



「お兄ちゃん達に――ちゃーんとごめんなさい、って言おうね!」


 ……嗚呼、こいつは本当に。

 餓鬼の扱い方が上手いというか何というか。


 ――兄とは口では言うけれど、久し振りに感覚的に、こいつは兄貴なんだな、と思った僕。



「其れで許してくれたら、皆で遊ぼうか!」


「「遊ぶー!!」」


 ……前言撤回っておうけいですか、やっぱりユウヤはユウヤだばーか。





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