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302+クリスマスのご予定以前の諸事情。


 ユウヤでっす、よくよく考えたらもう既に今学期も後数日! 中間考査ヘマって危うく赤点補習に駆り出されかけたけど其れこそギリギリセーフだった! 良かった! 冬休みまで勉強だったら俺くたばる……!! 本当に良かったなぁ、なんて思いながら久方振りになる部活にカイト君とゼン君と向かえば――ちなみにテストの賭けの結果はアサ君の考え通り案の定ゼン君圧勝だったっていう――、部室には俺達より先にふたつの人影がありました。


「あ、ハヤ先輩にフウカ先輩! こんにちはー!」


「嗚呼」


「こんにちは、ユウヤ君」


 先輩達は会長机ら辺に(たむろ)して何かを話していたらしい、何話してたんだろう?

 ゼン君とカイト君はそんなこと気にならないらしく、ゼン君は鞄を下ろすや否やガチな勢いで鞄の中から携帯式ゲームを取り出して座り込み、カイト君は「喉乾いたー」と給湯室に向った。俺はとりあえずゼン君に倣って鞄だけ下ろして先輩達の方に歩み寄ってみる、……うん? フウカ先輩何か持ってる。


「何話してたんですか?」


「此れ」


 何時も通りの無感情な感じに何処かうきうき感を漂わせながらフウカ先輩は俺に其れを見せてくれる。パンフレットです? あ、美味しいそうなケーキがたらふくですこと。


「クリスマスケーキ、皆で食べたいってハヤにお願いしてた」


「え!? 良いじゃないですか! ケーキケーキ! 俺賛成!!」


「しかしケーキ、買うんだろ?」


「私が買ってくるもの、お家バイトで」


「お前の其れをバイトと呼んでいいのか?」 


「ちゃんとお手伝いしてる」


 ハヤ先輩は彼が座るとヤケに様になる会長机にて頬杖を付きつつ、怪訝そうな表情をしてみせる。其れから苦笑をして「まぁ、お前が良いなら良いんだが」とか続けたけどフウカ先輩のお家バイトって何なんだろう、ちょっと気になる。

 ハヤ先輩がちらりと俺を見る。



「ユウヤ、お前達の中で赤点なんて貰ってきた奴居ないだろうな?」


 ――俺に言われた言葉だったのに、給湯室からがしゃん、と物音が飛んできた。

 あれ……カイト君、赤点あるの?



「か、カイト君?」


「無い! 無い無い! ぎっりぎり無い!!」


 ティーカップ片手にずざざっと地を滑って給湯室から顔を出したカイト君。滅茶苦茶焦り顔だけど本当に無い、んだよね? ……何だ、俺と一緒じゃないか。


「ゼン、お前は」


「俺が赤点なんて有り得なーい」


 片手をひらひらと舞わせ其れだけ言えば視線もくれずゼン君はゲームに向う。あれだけテスト前ゲームに夢中だった癖にどうしてあんなにテスト良いんだか此の人、絶対天才型だよ、アサキもだけど!

 其れを聞いた結果ハヤ先輩は満足そうに笑い、


「まぁ、赤点があったらクリスマスどころじゃないと思ってな。ケーキくらいなら良いんじゃないか? 俺に聞くまでも無い」


 と、承諾してくれました、と。やったい! クリスマスケーキ!!



「やったー! ケーキ食べたい!!」


「食べましょう、好きなケーキを選んでね、私買ってくる」


「はーい! あ、でも本当にお金とか大丈夫なんですか?」


「全然大丈夫、私は皆でケーキが食べたいだけ」


 其処から身を翻してゼン君の座るソファら辺にまで戻った俺とフウカ先輩は一緒になってケーキを選ぶことにした。お金よりも予約の時間の方が切羽詰っているらしく、今日決めて帰りに予約してきたいらしい。




「何でもっと早く言わなかったんですか?」


「今日思いついた」


 嗚呼……そうですか。















「って訳で、アサ君どれが良い?」


『何だって良いわボケ』


 本日一組にて単位が中途半端過ぎる約二名に勉強を教えるだとかで部活に来ないアサ君に電話をしたら怒られた。


「えー、だってケーキだよ? 一年だけでワンホール選んで良いってフウカ先輩言ってるんだよ?」


『別にケーキに好き嫌いとか無いし。皆でワンホールなら先ず好き嫌いあるか聞きなよ』


「おう、其れもそうだぜ」



『え、ケーキのお話い? テナねえ、ケーキなら抹茶ケーキが好きだなあ、和っぽいのじゃないのとあんまり食べれないのお』


『抹茶っすか!? ボクはやっぱりシンプルなショートケーキが好きっす!』


『お前等は勉強する気があるのか……? 僕帰るぞバカヤロウ』


『『ごめんなさい!!』』



 どうやら弟も苦労しているらしい、そっとしておこう。


 電話を切れば直ぐ部室にやって来たリョウちゃんに苦手があるかどうか聞いたところ、


「女の子が甘いものに好き嫌いなんて無いわよ」


 と常識だろうばりに切り替えされた。さっきテナちゃんが電話で和しか食べれないとか言ってたんだけど……まぁ良いか。


「カイト君は好き嫌「無ぇ」嗚呼そう」


 でしょうね、大分食い気味だ。

 カイト君に好き嫌いとか考えられないしなぁ、ゼン君も同様にあまりあるように感じないんだけどとりあえず聞いてみよう。っていうかゲームに熱中してるからか此の上なくぐでってるんだけど聞いてくれるかな?


「ゼンくーん?」


「……」


 ちくしょうとどいてない。

 ゲームに熱中すると本当声届かないんだよなゲーマーの人って、何其のゲーマーの性、アサ君もだし、下手すればマヒル兄もたまに入るんだよなぁ。

 と、言う訳で一度届かなかったくらいでめげる俺では無い、もう一度トライ!


「ゼン君!」


「……」


「ええと、――アサ君が昨日やってたゲームをクリアしたらしく、其れをゼン君に貸すべきかどうかで十分くらい悩んでました」


「――是非貸して下さいとお伝え下さい」


 何でゲーム系の話なら届くのかな!! いや、分かってやったんだけど!!

 ……無駄なキメ顔なゼン君がやっと覚醒したので、話を聞いて貰うことにする。



「其れで、ゼン君ってケーキで食べれないのとかある?」


「――……」


 あり? あからさまに視線を逸らされたような。そうは思ったけれど次に目が合った時には何時もの笑顔で、「特に無いよ」と言うものだから其れは其れで納得してしまった。


「ふーん、誰も好き嫌い無いならやっぱり好きなの選んで良いね。何が良い?」


「何でもー」


「私も特に無いわ」


 何だ此の欲の無い集団、今はゲームに夢中ってか。来たばかりのリョウちゃんまでが空いてるテレビで普通にゲームを始めようとしている、……リョウちゃんも染まったなぁ、うちの部に。



「じゃあ俺が決めちゃおうか――って電話だ」


 部活中は五月蠅くて聞こえないからマナーを解いている携帯、そんな携帯からめっずらしい着信音がした。っていうかアサ君だよ、アサ君とアスカ、部活メンバーと家族(※アサキ抜)だけは別の着信にしてるんだけど、……めっずらしい、俺の携帯からショパン鳴ってらー。



「はいはい」


『ベイクドチョコチーズケーキ』


「……はい?」



 何其の面倒臭い品名。



『其れある?』


「ええと、待って、……ベイクドはチーズしか無いよ?」


『其れで良い、其れにしろ』


「え、命令系ですか?」


『おう』


 何なんだい急に、さっきは何でも良いとか言ったのに。まぁ皆何でも良いとか言ったから決めてくれた方が俺は助かるんだけど。しかし急にどうしたんだか、とりあえず皆に聞いてみることにする。



「ねーねー、ベイクドチーズケーキで良い?」


 俺の声にいいわよー、とかいいぜー、とか適当な返事を返してくる二人。――とは違った反応を見せたのはゼン君、一瞬硬直して俺を見れば、「今、何て?」と呟き聞き返してきた。


「え? ベイクドチーズケーキで良い? って。アサ君其れが良いんだって」


「……ゆっ君ちょい電話貸して」


「うぇ? ほい」


 どうかしたのかな? 俺は素直にゼン君に電話を譲って首を傾げる。


「あ、もしもしあっ君、何か気ィ遣わせてごめんね? とりあえず良いからシギに代わって?」


 そして滅茶苦茶良い笑顔でアサキにそんなことを言えば立ち上がって、給湯室の方へ捌けて行った。給湯室のスライド式の扉まで閉めて一体何の話だろう? 最後に「シギの馬鹿! 言わなくてもいーのっ!」とか聞こえたんだけど……まぁ良いや、帰ったらアサキに聞こう。












「……そういえば、サチト先輩が居ない」


「嗚呼、サチトなら補習受けてるぞ」


「うちの部活唯一の赤点保持者」


「……」


 ……部長だけが保持者なんだ。……クリスマス、大丈夫なのかな?




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