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301+やっぱり誘うは此方から。


 こんばんは、嘘ですおはようございます、朝です。アサキです。……朝挨拶するとややこしいから嫌なんだよな。

 テストが終わってもう後は寝るしか脳の無い学校も休みであるが、本日は休日、英語で言えばホリデイ、僕が最も好きな日ではないか。普段は学校にギリギリ間に合う時間にユウヤに起こされる訳だがそんな煩わしい兄も今日は居ない、確か昨日の内からレッドラインに踏み入れた可能性があり過ぎてぼうっとしていられないとか何とか学校に行くとか言っていた。数学だったか、ハヤサカ先生に結果を聞きに行った……何で数学が出来ないのかな、僕一番楽だと思うのに。此の気持ちを分かってくれるのはきっと友達中ではカトウとかゼン君くらいなんだろう。


 ――なんてことはどうでも良い、終わったことなんて僕には関係ない。

 今僕が考えなければいけないことは、何故其の素敵ホリデイに電話音で起こされなきゃいけないんだということだ。


 ベッドの上で起きてしまったことに後悔しながらも、頭上の子機が呼び鈴を忙しなく鳴らしているのを聞きながら時間を見れば、未だ針達は第二象限を綺麗に現しているではないか。ちなみに第二象限は数学の用語なので苦手で何時か分からない人は手近の数学出来る人に聞こう。


「……誰だよ」


 ちなみに此の子機、鳴り出して二回目だ。

 何だよどんだけ鳴るんだよ貴様、何時もならこっちが鳴り出す前に下の親機をユウヤが恐るべき速さで――僕が起きないように――取るから眠りを妨げられることも無いのに……嗚呼畜生何で居ないからしねばいいのに。

 しかし愚痴っていてもまた三回目が鳴り出さないでも無い気がするので取ることにする、うわあ外気寒い。



「もしもし」


『――あ』



 返事が無い、ただの屍のようだってか。あっ、て何だあっ、て。

 返答が無いようなら此のまま切ってやろうかなんて思っていたのだけれど、刹那受話器越しから『も、もしもし!』と声がして渋々切らないことにする。


『ヒコクアサキ?』


「そうですけれど」


『え、え、何で!? ヒコクユウヤかマヒルさんじゃないの珍しくないかしら……!』


「君の発言大分失礼ですけれどカトウさん」


 此の慌てっぷりで誰だか分かったけど、何其の認識、僕だって此の家住んでるんだけれど? っていうか居る確立は一番高いんですけれど??

 知り合いだったので仕方なく起き上がればいきなり外気に触れ過ぎて凍死するかと思った、枕元の携帯を見れば不在着信があったから、カトウが用あるのは僕なのだと聞く前に発覚する。そして僕に用事があるなら何故そんなに驚いた、最初に出たなら普通喜ぶところだろうが。


「で、僕に何か用ですか、其れと今度からは時計の短針が三角形のsin120°斜辺部に来てから電話下さい」


『……ちょっと待って』



 待つこと十秒程。



『了解したわ、十一時ね』



 やっぱり此の人数学出来るんだな。




















 其処から暫くテストの話になってしまったんだがよく考えればこんなのが用件な訳が無いだろう、と思い直した僕。


「まぁ此の話は部活の時にでもするとして、結局用件は?」


『……あ、忘れてた』


 おい。


『あのね、……ええと、ええっと、其のー』


 急にどうした、さっきまで『ワタヌキゼンはあれだけゲームに専念していたのに私より数学良かった』だの『ヒコクユウヤとロクジョーカイリは終わりね』だの文句というか愚痴というか世間話をつらつら述べてた癖にどうした。


「おーい」


『あ、あのね!』


「うん」


『夏祭りの時言ったわよね!』


「主語を下さい」


『誘ってくれたのを無碍にはしないって!』


「うわ懐かし其の台詞、よく覚えてるね」


『だから誘うけど、嫌なら断ってね! 良いわね!』


 何で此の人誘う前から断れって言ってんだよ、先ず用件くれよ。

















「――初詣、皆で行かない!?」


「お姉ちゃん、声大きいわ」


 五月蠅いわね! 怒鳴んないと誘うことなんて出来ないのよ!!

 おはようございますリョウコです! 朝っぱらから先走って電話してヒコクユウヤにでも連絡しようと思ったらなんか本人出ました! 久し振りにテンパりかけたわ……!!

 電話が繋がってるから横でクリスマス仕様のファッション誌をぺらぺらと捲る愚妹(ぐまい)にツッコめなかったんだけれど視線だけで制し、とりあえず少し考えている風な電話先の沈黙を待った。け、結構頑張ったわよ今回は!!


『……其れって夜?』


「え、ええ、そうよ、ロクジョーカイリとかサキネユキとかにも声掛けるつもりなんだけど」


『あの二人は二つ返事で付いて来ると思うけどね、其れがあの馬鹿共クオリティ』


「あははっ! 確かに!」


 嗚呼、こうやって電話越しに楽しく話せるのって良いわね――じゃなくて。私はアンタの返答が気になるんだけれど。


「……で、どうかしら……?」


『……寒い』


 ――言うと思ったわ! 其れはもう心底!!

 そうよね、一組見る度机でくたばってるような人間が夜中に外なんて――あ、そ、そんなに頻繁に覗いてるとかそういうんじゃないから!! ――嫌よね。


「……じゃあ、」


『何、ユウヤには僕から言っておけば良いの?』


「……何が?」


『え、初詣、今年は親居ないからマヒルも来ると思うけど。……そうなるとウミさんも来そうだな……』


「……来てくれるの?」


『……え? そういう話じゃないの?』


「だって寒いって」


『寒いって言ったら行っちゃ駄目?』


「……」


『……』


「え?」


『ん?』












「それじゃあね!」


 ガチャン、と大きな音を立てて受話器を叩き置けばまた愚妹が「お姉ちゃん、五月蠅いわよ」とか言われた。五月蠅いわね! テンションを受話器に当てて落ち着いてるのよ!!(※物に当たらないで下さい)


「……初詣、か」


「何お姉ちゃん、今年は愛しの彼と一緒に行けることになったのかしら」


「馬鹿! 愛しの彼って何なのよ!! だからアンタ其の情報誰から聞いたの!?」


「ちなみに私は例年の如くユズと行くわ」


「自慢するな其の笑顔ムカつくわね!!!!」


 他人から見れば一寸も動いていないように見えるコトナの笑みに苛立ちながらも私は初詣にどんな服を着ようか悩んでいた、っていうかアンタ本当誰から聞いたのよ其の情報教えなさいよ!!




「まぁでもお姉ちゃん」


「……何よ」


 けれど直ぐに真剣な表情になったコトナにびっくりしつつ、私は妹が見ているファッション誌にちょっとつられて視線を落としていた。……ちらっとだけど。








「先ずは私の補習に付き合いなさい、クリスマスどころでは無いわ。中学のテストをナメてた」


「一言だけ言わせてね、――馬鹿愚妹!!!!」


 本当に此の子ったら!!!!!!




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