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30+勢い余って止まらない。


「アンタがいけないのよ!」


「別に。僕は何もしてないし」


 ユウヤです、何時も通り一組に遊びに来ましたら何やら騒ぎが起きている様子です。


「どうかしたんですかね……?」


 あ、今日はアスカも一緒に。


「アンタが其処に居たからモモが避けられなかったんでしょ!? 一言くらい謝れないの!?」


「そんな理不尽な理由でいちゃもん付けないで欲しい。君が此のクラスで鬼ごっこじみた遊びをしていたのがいけないんじゃないかな」


「休み時間に遊ぶ事の何が悪いって訳!?」


「り、リョウちゃんもう良いよ……アサキ君だって悪気があった訳じゃ……」


「モモ! 何であんたはそうなのよ!! 私だってねぇ――」


「すとーっぷ!」


「ぐっ!!」


 何か波瀾万丈な雰囲気だったので乱入してみました☆

 言い合っていた女の子とアサ君の間――に飛び込む勇気はなかったのでアサ君にダイブ。


「ちょ、ユウヤ……アサキ君が……」


「なーになに、何揉めとんの? お兄さんも混ぜてぇや」


「退け、エセ訛り」


「アンタ達何なのよ!?」


 そりゃそうなりますよね、いきなり喧嘩吹っ掛けてた相手に変な加勢が現れたら。


「君がいちゃもんつけてる此の子のおにーちゃんです」


「そのお友達Bです」


 Aが気になる所だよね!!


「離れろってったの聞こえなかった? おにーちゃん?」


「ふぉあ!!!! アサキ待つ! そのまま一本背負いの勢いで持ってかないでよ!?」


「あはは~、そのまま頭打てば少し頭良くなりそうなもんですよね」


「ア・ン・タ・達! 人を差し置いて話してるんじゃないわよ! 私は怒ってるの!!」


「リョウちゃん、良いってば~……」


「僕は眠い」


「俺は寒い」


「俺は疲れましたね」


「話を聞けー!!!!」


 このままじゃなんか理不尽に可哀相なので話を聞いてあげる事に。


「そいつが――」


「ヒコクアサキです」


「……ヒコクアサキがモモを転ばしたのに一言も謝らないから怒ってるのよっ!!」


「……あー君此の子転ばしたの?」


「勝手に転んだだけだっつの」


「そ、そうだよリョウちゃん、私自分で転んだだけなんだからアサキ君は悪くないよ?」


 ふむ、そんだけの話なのか。見た所こっちのモモちゃんって子は一組の子だね、たまに見かけるし。そしてこっちのリョウちゃんとかいう子はー……三組の子かな……一、二組で見た事ないし。昼休みに走り回ってていちゃもんつれられましたー……な訳ですね。


「アサ君、そういやカイト君は?」


「出席停止、インフルエンザ」


 あの人何に対しても免疫皆無だよね。


「でさ、君はアサ君にどうして欲しい訳?」


「モモに一言謝って」


「嫌だよ、自分に非がないのに何を謝れって言うんだ」


「だ、だからリョウちゃん、私アサキ君を勝手に避けようとして勝手に転んだだけだから~……」


 モモちゃんが必死にそう言うのに、リョウちゃんは聞いていないみたいで。うーん、アサ君も一言謝っちゃえばいいのに……なんて言ってもそういうの無理な性格してるのは知ってるんだけどさ。


「あんたがあんな所に不用意に立ってたからいけないんでしょ!?」


「あんな所って、――親友の席の近くに立ってて何が悪い?」


「だ、誰も座ってなかったんだからその人来るまで席で待ってれば良かったじゃない!!」


「聞いてなかったかな、出停になってる親友に届ける為に机の中から配られたプリント取り出そうとしてたんですけど?」


「そ、そんなの放課後やりなさいよ!!」


「昨日其れやってプリント忘れたから早めに対処した僕は間違いだったかな?」


「ま、ま、間違っ……てないわよ……」


 アサ君強い。てかカイト君を親友呼ばわりしてる事をカイト君に伝えてあげたい。


「も、もうリョウちゃんってば! アサキ君はこう見えて良い人なんだからこの辺にしとこ?」


「駄目よ! だってモモ、足怪我したのよ!?」


 擦り傷ね。そしてモモちゃんさんこう見えてってちょっと酷い。


「第一、こんな鋭い目した、いかにも冷静沈着で真面目そうで、下手すればちょと根暗入ってる――性格酷そうな奴に負けたくな――」






 ――おーっと、お兄ちゃんの地雷ひとつ踏んだ。






「――いのよ! モモが怪我したのに――」


「ちょーっと待とっか、リョウちゃん、で良いかな?」


「――な、何よ……? てかアンタ何時から人の事名前で――」


「何を根拠に、アサキの性格酷そうとか言ってるの……かな?」


 ザワッ


 空気が止まる。何故かな。俺は何時もの表情を崩さない様にしてるつもりなんだけど……な?


「そ、其れは……」


「外見だけで人を判断して、其の人に何があったのか知らないのにそんな言葉を発して、自分が何かを守ってるから何言っても良いと思っちゃってる困ったちゃんなのかなぁ?」


「ユウヤがキレたみたいです」


 横でアスカが何か言ってるけど、何も聞こえない。てか止められないから止めないよ?


「アサキが性格酷そう? そんな人が友達の為にプリントなんか届ける? 第一、其の君が守ってると思ってるモモちゃん? 其の子の話も少しも聞けない君が、アサキと対等に話せると思ったら大間違いだからね? こんな所に――飛んだ偽善者が居たもんだ」


「――!」


 パァン!!


 弾ける音。何が? 俺が。

 誰かに叩かれた、誰に? 女の子、モモちゃんに。

 何処を? 頬を。

 其の音がしたのは、リョウちゃんが泣き出す瞬間とほぼ同時だった。


「――リョウちゃんを傷付けたら、私、許さない」


「……」


 辺りが静かだ。音と言えば、リョウちゃんが「そ、れは……私……」と呟いてからひっくひっくと喘ぐ音のみ。後はモモちゃんが一回だけ「リョウちゃん、ごめんね?」と呟いた声。

 ……俺は何をしてんだろ――


「ユウヤ」


「ん、何アサく――」


 バキッ!!

 ひゅー

 ドカッ!!


 はい、俺がアサ君に蹴り飛ばしを喰らった効果音三連打。いや、真面目に痛い。


「何やってんだ、テメェは」


「だって、アサ君を――」


 そんな会話を始めようとする中、ドアまで吹き飛ばされた俺の横をすり抜けて――リョウちゃんが教室を出て行った。


「待ってよリョウちゃ――」


 そう言って追い掛けようとしたモモちゃんよりも先に彼女の後を追ったのは柄にもなく――我が弟で。







 最悪。

 あの、ユウヤって奴は悪くないのに。アイツが言ってたの、全部正論なのに。泣いたら相手が悪役になっちゃうのに。其れだけなら未だしも、其の空気に堪えられなくて、教室出て来ちゃった。誰にも見られたくないから人の居ない所探して、こんな所まで来ちゃった。

 此処は――非常階段、かな。


「何してるのよ、私」


「――カトウリョウコ!」


 ふと振り向いた。泣いた顔なんて誰にも見られたくないけど、やっぱり名前を呼ばれたから。でも、そこに居たのは……え、えと、ヒコクアサキ……? 何で私の名前……?


「な、な、な」


「おま……ッ……走り過ぎだ……。どんだけ……走りゃ、済む……」


 滅茶苦茶息切れしてる。体力ないのねコイツ。まぁ根暗っぽ――だから……何で外見で決めるのよ私……駄目だって分かってるのに。いや、分かってないからこうなったのかな……。

 出来ればもう――彼等と関わりたくないのに。


「ユウヤがごめん」


「――は?」


 息を整えるなり、ヒコクアサキはそう言った。そして手に握り締めていたハンカチを私に差し出して停止。


「あいつ、ああなると酷い事とか止まらなくなるから」


「べ、別に……悪いのは私だから、アンタ等が気にする事じゃないでしょ……」


「――気にする事だろ!」


 反響。階段に反響するヒコクアサキの声。

 何よ……そんなに叫ばなくったって。


「あいつは君を傷付けたから。だから、謝らなくちゃいけないけど――あいつが怒ったのは僕の為だから、あいつは謝んなくて良いと思ってる」


 だから僕が謝るんだ――と、よく分からない理屈を述べて、ヒコクアサキは疲れた表情で小さく微笑んだ。

 ……何よ、よく分からないわよ……でも……、


「……ありがと」


「どう致しまして」


 ――アイツの言う通り、コイツ、酷い奴なんかじゃない。



 キーンコーンカーンコーン――



 其の時、始業のチャイムがなった。やば、授業が始まった!! 先生に怒られちゃ――


「あ、……まぁ良いや。ええと、カトウ、……一緒にサボる?」


 ――けど。


「……そーね、何か、アンタが倒れたとか言ってサボりましょ」


 けど、ヒコクアサキの悪戯っ子みたいな笑顔見たら、もう少しコイツと話していたいと思っちゃった私は――



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