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294+暇でもやることなきゃつまらない。


 はっろー、皆のゼン君だよ!

 ……嘘だよ怒らないでよ全国の少女達!! ――いや、今のは違った、今のじゃただのロリコン趣味を暴露してるみたいになってしまってる。ゼン君ロリコンとかじゃないから、ゼン君女の子なら誰でも大丈夫だから……!!


 一人寂しく心の中で騒いでるけどただ今此れでも授業中なんだよねぇ。何の授業かって訊かれたら選択芸術の授業なんだけど。芸術ってくらいだから書道とか美術とかを好きに選択する訳よ、ちなみにゼン君は書道、だって格好良いでしょ?

 今日先生居ないんだかで皆結構わいわいやってるんだけど、俺の友達無駄に真剣にやってて嫌んなっちゃう。隣のミノルちゃんとか、ちょっと離れてるところじゃあっ君とか。嗚呼、一組と合同なんだよね。


「ゼン、此れ凄くね?」


「んー?」


 そしてひとつ前のカイ君、此の人全然書道に見えないけど其れは失礼だから言わな――


「半紙全部(すずり)に浸けてみました」


 撤回、何で此処に居んの君。


 無駄にキラキラした目を此方に向けてくるカイ君に俺は曖昧に「そーだね、真っ黒だね」と言っておいたけど何か其れで満足みたい。隣のミノルちゃんにも声を掛けて見せているけどミノルちゃん今真剣なんだからいちいち見せなくても良くない? と思ったのは俺だけでは無い気がする。



「格好良いな」


「だろー?」


 え、何が?

 ミノルちゃんは真顔ながら其れに何か格好良さを見出したらしい、え、と、おかしいのは俺なのかな?

 っていうか先ず校則違反に金髪でいかにも日本の芸術って感じの書道受けてるってのも変だよね、自分でもそう思うけど仕方なくない、俺元の髪の色嫌いだし。あんのクソ姉と同じ髪色とか考えただけで死ねる、だったら先生陣に毎回呆れられた方がマシ。……何やかんやで緩いから、注意しかして来ないしねー。あのシギが金で居れるんだもん、緩くて良かったうちの高校。


「此れアサキにも見せてこようかなっ!」


「やめときなカイ君、怒られるよ?」


「其れでも俺は修羅の道を行く」


「修羅だって分かってて行くところがカイ君らし過ぎて最早俺感服する」


 そしてカイ君は硯を持ってあっ君のところに殴られに向かいましたとさ。

 其の様子をミノルちゃんまでが筆を止めて見ていみる――あ、蹴られた。しかも弁慶の泣き所。



「――お帰り」


「畜生あの野郎……!」


「……す、硯を落とさなかったところに私はお前の男を見た」


「ミノルちゃんフォローになってない」


「!?」


 そんな驚くこと言ってないのにミノルちゃんにびっくりされたし、まぁ驚いた顔も実に素敵だよミノルちゃん。









「他の授業ってちゃんと授業やってんだよなー」


「その様だな」


 時間が少し過ぎて。

 ミノルちゃんも書き終わり、あっ君も終わったのか此方にやって来て何事も無かったようにカイ君の隣に座ってからの話。


「他っていうと美術と音楽? 俺どっちも得意じゃねぇなー、確かアサキも嫌いだったろ」


「うん、寧ろ書道も微妙」


「私は特別嫌いとか苦手という訳では無いが、書道が一番性に合っていたからな、ゼンはどうなんだ?」


「俺? 歌うの怠いし絵も怠いしとにかく面倒だからー」


「書道も書くぜ?」


「文字ならどうにか」


 っていうか別に何でも良かったんだよね、此れと言ってやりたいもん無かったから適当に選んだ。


「でもアサキ確か絵上手かったよな?」


「上手くない」


「ふっ、そう謙遜するな」


「ミノルは見たこと無ぇじゃんか」


「確かにそうだ」


 最近ミノルちゃんのキャラが掴めない俺、でもあっ君の絵が上手い話には興味あるな。


「ゆっ君って確か美術だったよね? あっ君が上手いてことはゆっ君も上手かったり?」


「……あいつのは世界観が独特」


「……うん? 其れってどっち?」


 あっ君がそっぽ向きながらそんなこと言うもんだから気になってきちゃったじゃないか……!


「良く言えば個性的で前衛的、悪く言えば……ユニーク過ぎて何が何なんだか……」


「ま、常人には分からないってことだな」


 俺も見せてもらったことあるけど凄かった、なんてカイ君。


「確かテナもリョウコも美術だったから感想聞いてみよう」


「聞いたら教えて、ゼン君超気になってる」


 ミノルちゃんに了承を得たけど、出来れば早めに聞きたいところだよ、気になって眠れなかったらどうしよう。



「……あれ?」



 其処でふと、カイ君が頭上にクエスチョンマークを乱舞させた。どうしたのかな急に。


「此処が四人で美術が三人、……シギ、音楽一人?」


「そうだよ、僕等三人共違う選択だから」


 ――あっ君があっさり頷いた其の事項は、俺が今此の上なく心配していることだった。

 人見知りというか人と関わるのが苦手というか何かあれば結構な具合でネガティヴになるあの子が一人で寂しがっていないかがゼン君凄く心配です。


「ねぇあっ君、シギ大丈夫そう?」


「何が」


「勿論音楽の授業」


「教室帰ると若干嬉しそうだけど」


「嗚呼駄目だ其れ」


 ま、未だ友達出来てないのかな……! 何故俺が冷や汗掻かなきゃいけないのかは微妙なところだけど、少しわなわなしつつ聞いても無駄なことを聞いてみる。



「ひ、一人ぼっちとかじゃないよね、大丈夫だよねあの子!」


「ははっ、ゼンってお兄さんだなー」


「良き兄貴だな」


「本当本当、うちの兄貴にも見せてやりたい」


「ちょっと皆! ゼン君の話聞いて下さい!!」


 何かほやほやしてないで少しは大丈夫だよ、とか一言でも良いから掛けてくれればいいのに! 其れで少しは安心するのに!!


「でもまぁシギだって俺達と同学年だし、どうにかやってんだろ」


「そうだな、彼も男だ、どんな修羅の道でも素手で乗り越えていくことだろう……」


「エノミヤの方が男前だと僕は思うけども」


「照れるな」


「……照れるところなの?」


「?」



 ――でもそうだよね、シギだって男の子なんだし、きっと頑張ってるよなー。小学校ん時とかとは違うんだし、なんて思い直せば、丁度授業終了のチャイムが鳴る。


「よーし次体育だぜうっひょおい!!」


「うん? 其のテンションは僕に喧嘩を売ってるのかな? うん?」


 シギもこんだけタフになってくれりゃどうにかなるだろうけど。

 ――でもやっぱりちょっと心配なので一組寄ってみようと思った俺は、確かにあいつの兄貴分なのかもしれないと思った。





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