293+名前の由来を考えて。
こんばんは~! たまには明るくモモです~!
「ねぇねぇ、ユズ君、お姉ちゃんの話聞いてる?」
「あん? 聞いてるけど?」
相変わらずお行儀の悪い返事をするユズを前にしながら、今私は真剣な話をしています、其れはもうとても真剣な!
「こういうことはちゃんとしなきゃいけないってお姉ちゃん思うの!」
「あー、はいはい、そうだね、凄く大事だね。其れは俺だって思ってる、けどさ?」
私はカーペットで正座、ユズは食卓机で足をブラブラ。
にっこりと笑っているユズの顔は姉の私が言うのも何だけど男らしくないからお母さん似、というかお父さんの要素無いなー可愛い系だよなー、なのに言葉荒れてるからアサキ君みたい、とか本人に聞かれたらやんわり怒られそうなことを考えて――ユズが額に怒りマークを浮かべていることに気付いた。
「俺の描いたケーキの想定図の上に乗っかっとる此の猫をただちにどかさないと、今から姉ちゃんが真剣に決めようとしてる此の猫の名前、勝手にジョン万次郎とかにすんぞ?」
「うわあ! にゃんこちゃん!!」
私の角度から見えなかった……! だからユズキ怒ってたんだね……!
落ち着いてから、ジョン万次郎って誰? ってユズに聞いたら驚愕されたので後でちゃんと調べようと思ったんだけど……皆は知ってる?
「――で、猫の名前だっけ?」
「うん、此の子オスなんだって~、どんな名前が良い?」
猫を引き取る時私以上に喰い付いたユズキは決して猫が嫌いな訳じゃなくて、ただ趣味のことになるとそっちが勝るっていうか……だから今は其のケーキ図をしまったユズもカーペットに座って一緒に考え出してくれた。
「其れこそジョンで良くない?」
「可愛くないよ」
「え、オスに可愛さ必要?」
私的には可愛いのが良い、と言えばユズは唸り声を上げながらも考えてくれる。ん~、何が良いかなぁ。――っていうか皆のお家に行った猫ちゃん達の名前も気になる、聞いてみようかな?
其れを参考にするのも良いかもしれないって思ったら何だか気が逸って携帯を手に持っていた。ええと、先ずはロクジョー君かな。
『姉ちゃんが付けたけど、“ここあ”だと』
「ここあちゃん? 可愛い名前だね~」
『色が茶色だからとか何とか、俺は名前とかどうでも良い派だから姉ちゃんがそう呼んでるから其れなんじゃね?』
「――ってことです」
「色ね、でもうちのも茶色っぽいよ姉ちゃん」
「そうだね~」
色が被ってたらそうなっちゃうよね、ええと、確か三毛猫ちゃんはアサキ君達のお家と後ゼン君のお家だったよね? ……アサキ君達のお家は飼ってる訳じゃないからって名前付けてなさそうだなぁ、っていうか飼ってないのに預かるって言ってくれたアサキ君ってやっぱり優しいよね、言ったらやんわり怒られそうだから言わないけど。
「ん~……あんまり話したことないゼン君に電話したら迷惑だよね……?」
「あ? 知らない人に猫あげたの?」
「ううん、リョウちゃんと同じ学校の人で、最近お友達になった人~。とっても格好良い人だよ?」
「格好良い人なら電話しとけば、将来に繋がる」
弟が大人なんですけどどうすれば良いですか?
『はい、こちらワタヌキです』
「あ、ええと、ランと言います、ゼン君はご在宅でしょうか?」
少し前に学校にお邪魔した時に赤外線で交換した連絡先、携帯に掛けても繋がらなかったからお家の方に掛けさせて貰ったんだけど……ん? 妹さんかな?
『うちのゼンはただいまとりこみ中ですので、おりかえしおでんわさせていただきます』
すっごく下っ足らずなのにすっごくちゃんとしてる何此れ凄い……!
私が暫し感心していたら直後あ、という乾いた一言が聞こえて、『でんわだよ、おにーちゃん!』と今度こそらしい声が聞こえてきた。ゼン君取り込み中じゃなかったのかな……?
『はいはいお電話代わりましたあなたのゼンですけどもー? 只今ゲームに大苦戦していて要件は手短にお願いしたいものです』
凄い文句だねゼン君。
「えと、ランですけど……分かりますか……?」
『ラン? …………あー!!!! モモちゃん!? カトウちゃんのお友達の!』
あ、伝わって良かった~、第一関門が其処だったもので緊張しちゃった。
『ごっめんごめん! あれ? もしかして携帯に掛けてくれちゃった? ゲームしてると気付かないんだよね』
「此方こそいきなりごめんなさい、ええと、手短に話すからね?」
『其れは忘れて! モモちゃんの話なら俺何時間だってオーケーだから!! 女の子の話は世界のどんな声より勝るもんだよ?』
「ふふっ、ありがと~」
ゼン君って良い人だなぁ……。(※天然には色々通じない)
――ということで要件を告げれば、ゼン君はちょっと待ってと一言言って『みー!』と何か鳴き声みたいのを発していた。
『猫の名前って何だっけ?』
『のんちゃん!』
鳴いたんじゃなくて呼んだみたい、言わなくて良かった。
『理由は?』
――相手の声が聞こえない。
そのままもしもし? とゼン君の声が聞こえて、私が返事をすれば、
『“のん”って名前みたいだけど、理由は無いみたい』
なんて、小さい子の直感が由来だと通訳してくれた。……其れも有だよね。
「で?」
電話が終わるまで大人しく猫ちゃんと遊んでいたユズは私に其の一語で尋ねる。
「……私が思ったこと、素直に言っても良い?」
「うん」
「――名前、ジョンにしよっか」
「……そうだね」
直感、というか、正直良く分からなくなってきたから其れで良いよね。