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291+利口な小動物。

 ただいまー、っと! ユウヤですよっ!


「お帰り、悪いな、買い物頼んで」


「ぜーんぜん! いっつもやってるから大丈夫だし!」


 相変わらず自宅に居座っているマヒル兄のエプロン姿に出迎えられた俺、夕飯に必要だった人参を買いに走ってきました、ふう、走るって良いぜ!

 リビングに入ればマヒル兄はキッチンに戻り、俺がランニングに行く基買い走りに行く前から其処に居た二人組は未だ其処を陣取って動かないでいた。


「……未だやってるの?」


「終わるまで終わらん」

「以下同文」


 遊びに――此の調子だと恐らく泊まりに――来ているカイト君とアサ君、二人はカーペットに居座って巨大な枠に向かっている。

 巨大な枠――ジグソーパズルに向かって。



「カイト、其れ」


「あ、マジだ、ほい」


「……」


「……」


「……」


「……あっちの取れるか?」


「ん」



 ――地味な図だ!!!!

 マヒル兄が昼に買い物行った時、何処かのくじ引きで当てたとか何とか。暇だからってアサ君がやり出して、カイト君が来て一旦止めたと思いきや二人でやり出して――早一時間。

 ……俺ああいうの苦手だからな、とりあえず暇だからにゃんことでも遊ぼうか。


 ジグソーパズルに夢中な二人の奥、テレビ横に備え付けられた(仮)猫ハウスに歩み寄れば姿勢を低くしておっとなしく座るにゃんこを見る。

 うちに来て数日、猫にしては非常に大人しい此の猫は部屋をうろつくことはあっても悪戯はしないし、壁に傷も付けないし、もう何か滅茶苦茶良い子なんです。凄い良い子なんだし、良い飼い主さんが見つかれば良いけど。


「……」


「……」



 (つぶ)らな瞳と目が合った。



「――畜生可愛い!」


「お前メロメロだな」


 抱き着こうとしたらすり抜けられた、しかもカイト君に笑われた、ちきしょー。にゃんこ――名前? そういえば決めた方が良いかな――はとことことキッチンに向かう、「うおっ、にゃん公居たのか」なんて声が聞こえるしあの猫マヒル兄には懐いてるんだよなー。やはりえさか、昼間のえさ当番だからか……?


「はう、猫かわゆい」


「ユウヤが面倒臭い」


「俺ん家も姉ちゃんがこんなだけどな」


 かわゆいよ三毛猫かわゆいよ何なのかわゆ過ぎる……!



「もうお前ん家で本格的に飼っちゃえば?」


「飼うつもりは無いんだけど、其れはユウヤが決め――」



「マヒル兄! やっぱり此の子飼おうっ!!!!」


 俺の荒ぶるハートは止められやしなかった。にゃんこ可愛過ぎる! こんな可愛いなんて思ってもみなかったし!!!!

 マヒル兄の足元をうろつく猫を抱え上げ、ねだるような言い方でマヒル兄に言う俺。


「もう飼ってんじゃねぇの? 後今飯作ってるから猫リビングに持って帰れ」


「へい大将!」


「誰が大将だ」


 言われた通りリビングに戻る、ふむ、マヒル兄はもう飼ってると思ってたのか、知らなかった。ってことはやはり――アサ君が良いって言えば飼って良いってことだ。

 くるり、と。猫を抱えたままアサ君を見る。最早関心はジグソーピースにしか向いてなかったけれど、此処はちゃんと頼めば――


「にゃう」


「あ」


 唸り声を上げつつ思考していたら、猫が再びすり抜けていってしまった。ちょ、ちょっと駄目だよにゃんこ! 今アサ君の邪魔したら絶対駄目だって!!

 そんな俺の思いなど知らない名も無き猫はアサ君とカイト君の間、要するにジグソーのピースが散らばる枠のど真ん中に座り込んだ。


「「……」」


「にゃう」


 猫は満足そうに鳴く。


「退け、エテ公」


 無表情のアサ君に辛辣な言葉を投げ掛けられて此方に戻って来た。



「うわあにゃんこにエテ公てあなた」


「だって邪魔、だから小動物は面倒」



 ……うん、頼むのはまた今度にしよう、かな?

 気持ち落ち込んだにゃんこ可愛いとか思いつつも今は間が悪そうなのでやめておいた、空気読むのは得意だぜ! かっこアサキ関連のみ!



 ご飯も出来たみたいだし、と理由を付け加え、俺は再戦を誓った。





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