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「――って訳で、誰か人員を貸して欲しいとのことです」



 其の言葉に某ゲームでエキサイティングしていた部活が急停止した、アサキですが。

 ちなみに僕とハヤ先輩は二人でトランプしてたけど。


「……何してるんですか? 立ったままゲーム?」


「あれ、ハヤサカ知らねぇの?」


「知ってますよ、馬鹿にしないでくれます?」


 久しぶりに旧生徒会室にやって来たハヤサカ先生は両手にヌンチャク型のコントローラーを持って固まるゼン君にそう言われ、其の隣のカイト、そして座りつつ同様のものを手にするフウカ先輩とカトウを見つつむっとした表情を見せた。何か何時の間にか表情豊かになってないか此の人、猫被りが肌蹴たか。


「あれ、任○堂が発売したハードのことでしょう?」


「正確には任天○の第五世代目の家庭用据え置き型ゲーム機です」


「アサキ、細かいぞ」


 By,wiki先生、僕が何時もお世話になっている場所だ。

 まぁゲームの話は良いとして。



「で、ハヤサカー、ごめん話聞いてなかったからもう一回」


 奥からひょっこり顔を出したのは我等が部長殿だけれど、何て自由、今の短文を聞き取れなかったとは。何処から出したのかコーラ片手に爆笑寸前でサチト先輩はハヤサカ先生に聞き返した。


「……生徒会だからって何故此処まで優遇されてるんでしょうね此の部活」


「先代が頑張ったからじゃないっすか?」


「じゃあその先代や初代ゲームクリエイト部の部員達に恥じないような行いをして下さい」


「えー、そんなにかよー、どうせ会う機会なんて無ぇっつーのに……」


 ごめん先輩、うちに居る。


「もう一度だけ言います。某先生からの依頼で、垂れ幕を作って其れを屋上から掛ける作業というものを手伝って欲しいから人員を貸してくれとのことです」


「その某先生って誰ですか?」


 ユウヤが相変わらず動きだけフリーズさせて尋ねる。ハヤサカ先生は一瞬面倒臭そうな表情をしてから元の無表情に戻り、眼鏡を指で押し上げてから、「君の担任ですよ、ヒコクユウヤ君」と言いつつ溜息をついた。


「折角人がとっとと帰ろうとしていたら泣きつかれました」



『は、ハヤサカくーん、助けてー』


 嗚呼、容易に想像出来る。あの緊張感のない感じで泣きつく感じ。


「本当毎回毎回先輩面する割に用意がなってないというかもう大きいだけの子供というか正直貴方達より面倒掛かるというか」


「先生、愚痴になってるよ」


「でも先生も女の人に頼まれちゃあねぇ、さっすが男の中の男!」


「ワタヌキ君、貴方はそんなに自習課題が欲しいと?」


「え、褒めたのに……!」


 君の中で褒めててもね、ハヤ先輩もそう思ったらしく、僕と目が合った先輩はやれやれ、と言った風に苦笑していた。……うん、相変わらず此の先輩ぱねぇ。



















 ハヤサカ先生曰く、


「四人程で結構です」


 ということだそうで、いそいそと職員室に帰って行ってしまった。


「もっとゆっくりしてけばいいのにねー」


「無理言うなって、ハヤサカ先生もほのちゃんの所為で忙しいんだろうから」


 本当、どっちが先輩か分かったもんじゃないけど。



「――っていう訳で! 突発企画! トランプで四人決めるぜっ! はい集合!」


「集合って皆此処に居るけど」


「はいフウカ五月蠅い!!」


 絶対フウカ先輩が正しい。



 企画はこうだ、トランプをばらばらに机に広げ、其の内弱いカードを引いた四人がウタカタ先生の元へレッツゴー――なんてシンプルな企画なのに何故僕とハヤ先輩以外張り切ってるのねぇ。


「ちなみにアサキは最後だからな!」


「え、何故に」


『お前の引きが強過ぎるからだ』


「え、今何人同時に言った?」


 快挙だよね、今の人数。ええと、六人?



 という訳で僕は問答無用で最後らしい。……おみくじとかは絶対凶以下なのに何故トランプだけはこうなのか、ディーラーにでもなれってか。


「はい最初! リョウコ!!」


「え、え、私ですか!?」


「名前の順だからな」


 うちの部活ヤケにか行多い、……まぁそんなくだらないことはさておき。


「じゃ、じゃあいきます……!」


 カトウは真剣な表情で机の上のトランプを眺める。手をかざすようにして次から次にカードに手を置き、


「――此れにします!!」




 ――引いたカードはダイヤの9でした。


「「普通だ」」


「ヒコクアサキとロクジョーカイリね!? 絶対貴方達よね今の!!」


 だって……思った通りだったものでつい。



 次はキスギ先輩。


「俺此れ」


 早っ、パシッと端のカードを、そしてクローバーの9だった。


「え、何此れ、9しか出ない仕組み?」


「無いから安心しろ、次は俺が引くぞ」


 カトウのも合わせて二枚の9、其れを見比べている不思議そうなサチト先輩。苦笑する次のハヤ先輩は軽くカードを見渡して、すいっと奥のカードを引いて「ほら、スペードのキングだ」と見せてくれた。


「じゃあ次俺だねっ! よーし、良いカード引くぞー!!」


 か行から飛んでは行、ユウヤが腕まくりまでして張り切ってカードに手を置く。


「……いや、此れじゃないな! ――こっちだ!!」




 ――クローバーの2。(※最弱)




 ユウヤは落ち込んで部室の端の方でうずくまった。




「あいつ引き弱いなー……」


「た、たまたまだろ? な?」


「何だよ2って……何2って……」


 偶然だろうけど残念だったなユウヤ、ちなみに僕はユウヤの帰りが遅れようと一向に構わない、だって夕飯はマヒルが居るから。


「じゃ、気を取り直して次は――」





「もう引いた」


「お前は何時引いたんだフウカ?」


 僕も気付かなかったけれども。

 サチト先輩のヒクついた笑みなんて初めて見るかもしれない、っていうかフウカ先輩は幾つだったんだ?



「ダイヤのクイーン」


 何だかんだで高いし。


「ダイヤのクイーン、……何だか先輩って感じですね」


「嬉しい」


 カトウが本当に褒めたんだかの真意はさておき、次行こう次、ウタカタ先生が待ってるだろうし。




「よーっし! 此の俺様が良いの引いてやんぜ!」


「カイト、やめとけ、其のノリで行ったユウヤがアレだ」


「そうだった、普通に引こう」


 カイトには最近学習能力というものが付いた気がする僕。



「……」


「ん? 何だったんだカイリ?」


 カイトが好きそうなど真ん中をあっさり予想通りに引けば、何故か真剣な表情で其のカードを見る。何だったんだろ、早く見せろ。



「……スペードの、9」



 ……。



「り、リーチ」


「何のだよ」


 まぁどうでも良いけれど。


「場の空気的にゼン君ハートの9引かなきゃなんだろうけど俺透視能力とか無いしなー」


 いや、君もそんな気を遣わなくていいと思うけど。

 何処となく真剣に、でも適度に気を抜いてカードを選ぶゼン君。


「じゃ、ゼン君こーれ」


「お、ゼンどうだよ、此処でハートの9、とか言ったら爆笑もんだけど――」


「ハートの9だけど」


 ……。



『え?』


 何此れ仕込み?


 サチト先輩は慌ててゼン君のカードを覗き込み、爆笑とか言っていた割に驚き過ぎて開いた口が塞がらない状態になっている。


「何此れ運命?」


「うわあゼンとの運命なんざごめん蒙る」


「んだとコラ、あ、リョウコちゃんとカイ君なら全然オッケーだよゼン君」


「ある意味凄いよね、確かに」


 被った四人がざわざわと騒いでいたので、僕は其の隙に引いてしまおうと机に視線を向ける。

 皆ああいうけど僕だってただの人間な訳だ、毎回毎回トランプだからって強いという訳では――



 ぺらり



「……」


「ん、アサキ、どうだっ――……お前って奴は本当に期待を裏切らないな」


「何かすみません」


 ハヤ先輩に苦笑されたけど、期待を裏切ってないなら其れも良いだろう。



 ――ジョーカーなんて、そうそう引けるもんでも無いし。








 ちなみにウタカタ先生の手伝いにはユウヤと、9の中でも一番強いスペードを引いたカイトを抜いた三人が行くことになった。ちなみに一番弱いのはクローバーだとか。


「ふっ、流石俺様!」


「ぎりぎりだったけどな」





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