288+GC部の部活内容、秋。
「シギシギファイトっ! テナがついてるぞー!」
「あ、あはは……」
カイリだ、目の前を走る金髪が座り込んだジャージ姿に声援されているという光景に、自らも走りながら出会う訳だ。
「はい、俺終了っと」
「わー! カイちゃんおっつー♪」
「おうっ! さんきゅー」
そして走り終えた俺に其のジャージ姿ことテナが、どっから出したんだか分からないタオルをくれた、汗かいてるし助かるぜ。
今日は休日、だけど珍しく部活やるとか何とかで学校に駆り出された俺達GC部一年は何でか知んねぇけど校庭を走っている。――理由? 一言で言やぁ――
『秋にやるべきは運動だろ! 皆! 今日はマラソンなっ!!』
――なんて言って某双子の弟に半本気で読んでた本投げられて流血した部長の所為なんだが。部長はただ今保健室です。
「ふぅ、此れは良い汗をかくな」
「え、ちょいハヤ先輩? 走って大丈夫なんすか?」
「一周くらいならな」
なら良いんだけど、サチ先輩居ないんすからね。ちなみに何故シギとテナが居て、シギに至っては走ってるのかというのは面白そうだからあっちからやって来たら巻き込まれた、が正しい理由だ。
「お、ゼンもシギも終わったっぽいな」
「……あれ? なんでボク走ってるんすか……?」
「……え? 今更そういう?」
「シギシギもゼン君もお疲れ様あ! はいっ、タオルだよお?」
「ありがとうテナっちゃん、ゼン君嬉しくて死ねる」
何かの間違いに気付いたシギはさておき、テナは完全にタオル渡す係に徹底してるよな。お前は部活良いのか、いやシギもだけど。
「――やぁ諸君! 良い汗をかいているかな!?」
未だ解釈に忙しいシギが居る中、保健室に寄っていた部長が清々しい笑顔で舞い戻って来た。――右こめかみにガーゼ付きで。
「うんうん、今日はリョウコとフウカの二人が欠席だから、女の子が居ると華があって良いなっ」
「は、華……テナが、華……」
「真に受けない方が良いよテナちゃん、所詮サチトだから」
走り終わったばかりなのにゼンの笑みが爽やか過ぎる件について。
しかし何を思ったのかサチト先輩はキョロキョロと辺りを見回し、相変わらずの笑顔で俺を見た。
「――で? ヒコク兄弟何処行った? 特に弟の方」
――嗚呼、恨み言ですか部長。
まぁ他意が無かったとはいえアサキの半本気で本ぶち当てられてる訳だし、そりゃ少し位怒るだろうなー。
だけども。
「二人ならそっちっすよ、グランド」
俺は二人の居る方を指差す。
「あん? 未だ走ってんのか?」
「いや――野球部に交じって野球やってますが」
「ばーっちこーい」
「誰が撃たせるかあああああ!!!!!!」
カキーン
「うおおおっ! 行けー! 走れ弟ー!!!!」
「センターファースト!」
「違う! アサキの足じゃ刺せない!! バックホーム!!」
「――タノシソウデスネ」
「アサキは野球好きっすからねぇ」
ユウヤは良いとしても、アサキのあの低テンション面白いよな。中学ん時授業でやったのは冬だったからちゃんとやってなかったっけか、此の時期だからこそアサキが起動する訳だな、うんうん。
「……」
俺が納得している内に部長の表情が幸薄くなっていた、えっと、どうすりゃ良いんだろう。
「まぁ、あいつ等もちゃんと運動しているんだし、良いんじゃないか?」
「……まぁ、そういうことにしておくか」
そんなサチト先輩を諭した――またの名を諭せた――のは勿論ハヤ先輩であって、仕方なしという風に納得した様子だった。良かった良かった。
「――よしっ、其れじゃあシギ、お前も交ざって来い」
「そうっすね、……ってええっ!? 何でっすかさっちゃん!? 第一ボク未だ部活が――」
「じゃあゼン君が行こうかなー」
「じゃ、俺も行くか」
「テナも行く行く! 皆さんを労るよお!」
「よーし、じゃあシギ以外皆で行くかー、野球部に宣戦布告!!!!」
「ふむ、其れは良いな」
「え……え? じゃ、じゃあボクも行くっすよう、仲間外れは寂しい……」
もう何の部活か分かったもんじゃねぇけど、此れは此れで楽しいと俺は思った。




