286+眩しいくらいの日差し下で。
マヒルだ、自宅だ、……あ、一人暮らしの方じゃなく双子が居る方だが。
「――よし」
「お疲れマヒル兄」
洗濯物を干し終えて俺は一人満足げにそう呟いた訳だが、どうやら聞かれていたらしい。何処かに出掛けていたユウヤが其処には居て、此方にやっほーと手を振っている。ちなみにアサキはと言えば其の足元ら辺で寝こけている、否、意識はあるが寝転がっている、……日向ぼっこって気持ちいいよな。
「嗚呼ユウヤ、帰って来てたのか?」
「うん、本屋行ってきただけだからね」
学校が無い訳でもないが何となく家に居る俺、理由は特に無いが強いて言うなら一人つまらないんだもん。
「はいアサ君、頼まれてたの」
「ん」
寝転がったまま本を受け取って――どうやら小説なようだ――其の体勢のままぱらぱらと頁をめくれば読み始めた。流石は本の虫、……違うな、インドアというべきか。
「あーあ、マヒル兄が居ると俺やること無くて良いんだけど、普段が普段だからやること無くなるよー」
「其れは謝るべきなのか?」
アサキの横をすり抜けて室内に入れば、食卓机に座ってぐでるユウヤを発見する。いや、普通の高校生なんて皆そうだろ、お前其処の日向見てみろよ。
「だってさー、朝起きてさー、ご飯作ってさー、洗濯物干してさー、アサ君起きてなかったら起こしてさー、新聞取ってさー」
本当に高校男児かお前は。
「なのに今はマヒル兄居るからのんびりしちゃってさー、宿題忘れてさー」
「「其れはお前の責任だ」」
宿題忘れってお前、暇が多いなら逆にやる時間も増えるってことじゃないのか? まぁそんな常識がユウヤに通じるとは思っていないから発言は割愛させてもらおう。
「お前なぁ、高校からは留年だってあるんだから気をつけろよ?」
「さ、流石に其処までにはならないよっ!! ……多分」
「可能性あるのか!?」
「無い無い! 無いよ!!」
「前回のユウヤ君のテストは~、全てクラス平均下でした~」
「ちょ、アサキ! 余計なこと言わない!! っていうか其のテンション眠いんだろうから寝なよっ!!」
「お前……赤点三つに全部平均下って……」
「ご、ごめんなさい、ってマヒル兄? そんなに落ち込まないでよ、……ごめんなさい!!」
不甲斐ねぇよ、何か俺不甲斐ねぇよ……!
いや成績が全てじゃないとは思ってるけどな? でももう少しどうにか……。
「数学だけは結構出来たんだよっ! へ、平均まで後五点!!」
「……惜しかったな」
「やめてマヒル兄! 其の憐れんだ感じの惜しかったなやめて!! そんな目で俺を見ないで!!」
でもまぁ、未だ一年だしな。此れからどうにでもなる……よな?
一人発狂の最中俺は何か飲もうとキッチンに行く訳だが、其れにしてもあの五月蠅い中で漫画でも無い文字の羅列を読んでられるアサキの集中力って結構なものだよなぁ、なんて。あの集中力が少しでもユウヤにあれば――いや、無い訳ではないはずなんだ、絶対。ユウヤにだって真剣な時くらいある――はずだ――し、ううむ、ユウヤの今後は一体どうなるのだろうか。アサキもアサキで勉強は出来るが好奇心とかそういった“らしい”感情を何処かに落としてきてしまったっぽいし……何なんだ此の双子等。
「……やっぱりお前等、一回足して二で割った方が良いんじゃないか?」
「「はい?」」
うん、まぁ良いか、此れが二人だ。