28+たまには家から出てみよう。/前
ズルズルズルズル
決して何かを食べてる訳ではありません。寧ろ歩いているんでね。アサキです。
「ふへー」
「……」
ズルズルズルズル
「あはー」
「……ユウヤ」
「ふへー?」
「自分で歩け」
何か……人の後ろから全体重かけて引っ掛かってる人が居るんですが。その人の足がズルズルズルズルしている。まぁ、ユウヤですけどねそりゃ。
「疲りたのさー」
「お前僕より体力あるだろうが」
何が疲りたーだ。
僕等はただ今とある家に行く最中。まぁとあるって言ってもカイトの家なんだけど。離れてくれないかな、人目があるんだから離れてくれないかな。
「もう着いたー?」
「自分で確認しろ」
重い、助けて。
というものの、着きました。カイトの家まで我が家より徒歩十分程。幾らユウヤかついで――と言うより引きずって――たって着きますよ。
ピーンポーン――
『はーい』
中からそんな声がして、カイトが登場――と思いきや。
「ありゃ、アサキ君」
「あ、おねーさん」
「やだー! ウミって呼んでって言ってるじゃなーい☆」
という訳で、カイトのおねーさんのウミさんでした。
「やーんお久しぶりねーアサキ君。……と、其の寄生虫は?」
「僕の双子の兄」
僕は其の寄生虫を引きはがしつつ家の門を勝手にくぐる。
「あーアサキ君双子なんだって言ってたもんねー。私初めて会うけど……やっぱ似てるわねー」
そりゃ双子ですから。
「何をぅ! 俺はアサ君みたく根暗じゃないやい!! 第一こんなに目付き悪くないもん!!」
「シバくぞ」
「あらー、中身は正反対みたいねー」
ウミさんは相変わらず笑顔だ、つかカイトを出してよウミさん。
「始めましてアサキ君のお兄ちゃん君?」
「始めましてカイト君のお姉様!!」
「やーんお姉様だなんて可愛いわね~」
「ぎゃ!」
あ、ユウヤが抱き着かれた。まぁウミさんは基本抱き着き魔だから構わないんだけど、僕に害ないし。
「アサきゅん助けてー!!」
「きゅんゆーな馬鹿ユウヤ。良いじゃん、女の人だぞ」
「ユウヤ君って言うのかな? アサキ君も可愛いけどユウヤ君も可愛い~!」
此の人に羞恥心は無いんですかね、会う度に思う。一つ確実なのは彼女とユウヤが同じ部類なのだという事で。……でカイトを出して下さいよ。
「――だァーッ!!!!」
叫び声。おや、此の声は――
「ねーちゃん家の前で何弟の友達の兄弟に手ェ出してんだよ!!!!」
――勿論カイトであって。
「あ、カイちゃんお帰り」
「あ、ただ今。――じゃなくてねーちゃん!」
「カイト君所詮俺は君の友達の兄弟だったのかい!?」
「や、もう友達だけどさ? ――でもなくってユウヤ!!」
「僕は貴様の友達になった覚えはない」
「グレるぞ――でもなーい!!!! 馬鹿! 馬鹿アサキ!!」
ごめん、ちょっと弄んだ。にしても僕だけ酷くない……?
「ねーちゃんユウヤから離れろよ! 誰も居ないからって何してんだよー!!」
何やら買い物帰りルックなカイト。買い物行ってたから居なかったのか、つか自分から誘っておいて買い物に行くなよ。
ウミさんは渋々ユウヤから離れると、家の中に(やっと)通してくれた。珍しくユウヤぐったり、何というウミさん効果。
「ゆっくりしてってね~」
そう言って去って行ったウミさんだが、また来そうで怖い。
「カイト君、あんな強烈な隠しお姉様持ってただなんて……!!!!」
隠し玉みたく言うな。
「隠してないけど。ねーちゃんが居る時にユウヤが家来た事なかっただけだろ?」
「そうとも言う」
そうとしか言わん。
「でも良いなぁ、俺もお姉ちゃん欲しかった……」
「其の台詞マヒルが聞いたら泣くよ」
俺男に生まれてきてごめんって言い出す確率ざっと百二十%。
「良いじゃんかよーマヒルお兄さん。マジ格好良いじゃん! 俺は兄貴が欲しかった……」
「お姉ちゃんお姉ちゃんでごめんねカイ君……」
「「うわぁ!!!!」」
――なんてウミさんなら言うんだろ――って実物が居た。何時の間にか居た。
「お姉ちゃん何時かお兄ちゃんになれる様頑張るからね!」
「頑張らなくて良いからねーちゃん! ねーちゃんはねーちゃんのままで居てくれ!!!!」
そんな力強く頑張るとか言われても、結果が悲しくなりそうで嫌だよ。というか何時も思う事を一つ言うと、学校でんなはっちゃけてるカイトがツッコミに回らなくちゃいけない此の環境……大変過ぎる。
そして、結局そんな感じで何をしようか試行錯誤。
……え、続きもの?