274+生徒会のお仕事。
「あー! あーくーん!」
アサキです、何か色々あって久しぶりに一人で帰ろうとしていた放課後。此方に手を振りながら満面の笑みを浮かべてやって来たのはドウモトでした、部活中なのか片手には筆、ちょ、其れ何か水分含んでないですかね、来ないで、制服汚れるから来るな。
「ちょっと部室に来て欲しいのっ! ね、どうせあっ君暇でしょお?」
「どうせって言うのが気になるところなんだけど、用件だけは聞いてやろう」
「いーからいーから来て来て!」
「え、ちょ、うわあ腕掴むな汚れる」
「そ、其れはテナが汚いってことなのかな!? ご、ごめん、テナって汚いんだねえ……」
「あれ、何か違う、ちょっと違う」
……嗚呼もう何でもいいや、行ってやろうじゃねぇか。落ち込まれるとどうにも出来ない僕は一人溜息をつき、どうやら来てくれるんだ、と悟ったらしいうきうき顔のドウモトに引き摺られ何処かへ連れてかれることになった。
「で、何だ此れは」
「可愛いでしょお?」
「……言い直そうか、――何故動物が居る?」
連れて行かれたのは予想通りというか何と言うか美術室。美術室なんて美術選択してないから始めてだけれど、ほぼ女子生徒で埋め尽くされていた。
「ええ? ……さあ」
さあなのかよ。
「分からないからあー君を呼んだんだよお? あー君て生徒会の人なんでしょ?」
断じて違うんだけど! とも言えず、このままだったら確実にそうなるので反論は出来なかった。ドウモトは他美術部員にちやほやされている動物こと犬――種類は何だろうな、僕が知るか――に一瞥をくれてから、「確かに可愛いけど、テナ達困ってるのお」なんて言ってくれたもんだから僕の方が困った。ええと、どうしろっての、今日多分先輩達も帰ってるし、ユウヤ達だって居ないんですけど。
「そうか、こういうのって生徒会の管轄なのか」
「うん、だから顧問の先生に頼んで欲しいなあって部長さんが」
――顧問? 其の一言について考えてみる。顧問、顧問――そうか、生徒会にだってGC部にだって顧問が居るはずだ、だが……うん、正直に言おう。
「生徒会顧問って誰よ」
僕知らねぇわ。
「……犬、ですか」
「はい」
考えていても仕方ないので、美術室にて一旦其の動物を預かって頂いて職員室にやって来た僕。畜生生徒会代理みたいなもんだから逃げる訳にもいかないし畜生。生徒会の顧問の先生、なんて尋ねてみたら、出てきたのはなんとハヤサカ先生でした、新任の癖して凄ぇな此の人――というか職員室にハヤサカ先生しか居なかったんだけど――。
「今日クロガネ君達は?」
「サチ――キスギ先輩によれば会長は早退で、他二人はゲームが家に届くとかどうとかで帰りました」
「後ろの二人捻り潰してやりなさい」
「先生って時々思い切った発言をしますよね?」
先生は一度咳払いをして再開。
「しかしまぁ無視出来ない事態ですから一緒に向かいます、ご苦労様ですねヒコク君」
「たまたま図書室で長居したら此れですよ、帰ってりゃ良かった」
もう少しだから読んでしまおうとしただけなのに何だってんだ、帰りたいよ犬公の野郎。
「ゲーム部なんてふざけた部活に生徒会を任せていることも大問題だというのに変な問題を持ち込んでくれまして」
「わーい先生、僕もそのふざけた部活の部員なんだよなー」
「あ、え、そうなんですか? というか私はあの部活の顧問ですが」
「えええええ新事実が多過ぎて要領オーバーなんだけど」
先生は新任で生徒会を任された出来る教師というより、余ってたところ押し付けられた憐れな教師だということが分かった瞬間だった、何かお疲れ様なんだけど。
「でも先生見たことありませんけど」
「生徒会室には稀に行っていますよ、生徒会室には」
暗にGC部放置だと言いたいんですね分かります。
「何もやること無い部活ですから名前だけ貸してるんですよ、だから面倒は起こさないで下さいね、とキスギ君に伝えて下さい」
「分かりました」
「あと三馬鹿にも」
「其れは重々に」
僕等は――ほぼ無表情に淡々と――そんな会話をしながら、美術室に移動したのだった。
ちなみに犬は近所から迷い込んできたらしい、まぁ僕には関係無い話だが。