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271+目撃! 何の現場?/前


『あ、アサキ!? おんもしれーモン見つけたから今から来いよ!』


 数分前にけたたましく掛かってきた電話はカイトからのもので、其れと場所だけを言えば通話が切断された。……え、此れ行かなきゃ駄目な訳? アサキです。


「んー? アサ君出掛けるの?」


「うん、なんか面倒だけど面白いことがあるらしいから」


 通販番組を見ながらいてらしゃーいと言ったユウヤが心配な僕はとりあえず今は其のことにツッコミは入れず、とりあえず仕方ないので面倒過ぎるけれどカイトに言われた場所へと向かうことにした。




 そして其処に辿り着いて。


「居ねぇし」


 近くだから来てやったものの、其処を見回してもカイトの姿が見当たらなかった。何なんだあいつ、自分から呼んでおいて何処行きやがった。面白いものって何なんだよ、今更かもしれないけどちょっと気になってきたじゃねぇかよ、そう思った僕は何としても見つけてやろうと目を皿にして此の場隅々まで探してやろうと、呼ばれた商店街の一角で一人辺りを睨み続けた。


「――あ」


「……あら」


 とか何とか、カイトを探していたはずなのに見つかったのは違う人で。すっかり涼しくなった気候に合わせ秋服となった目の前の彼女――カトウと目が合う。


「何してるのよヒコクアサキ、ちなみに私は頼まれた買い物の途中よ」


「先手を打ったな貴様」


 付き合いが一年以上にもなると人は慣れるらしい、『君こそ何やってんの』と聞き返そうとしていた僕の言葉の前に、カトウはがさりと右手のビニル袋を見せ付けてきた。少し前までは何時だって慌しい感じだったのに、高校生になってなんだか落ち着いたものだ、何故だろう。(※其れこそ慣れてきたからです)


「此処ら辺でカイト見なかった?」


「ロクジョーカイリ? いいえ、見てな――いわ、って言おうと思ったんだけどたった今見つけたわよ」


 数回横に首を振ったカトウだったが、一瞬だけ止まった視線と共に其方を指差す。……嗚呼、本当だ、花壇の影に隠れるようにしているカイトがいらっしゃる、僕探すの下手だな。此の後特に用事も無いらしいカトウが後ろに着いて来ているのを気にせずに其方に行けば、未だ僕に気付いていないカイトを真後ろから蹴り飛ばした。


「おいこら」


「うおおっ!! え、アサキ!?」


「人様電話で呼び出しておいて隠れてるたぁいい度胸だな死ね」


「ちょ、まっ! 未だ蹴られた背中が痛――うぎゃあ!!」


 閑話休題、一旦置いて。


「悪かったって。来ると思わなくてよ」


「お前が断る前に切ったんだろうがばーかあーほ死ね」


「最終的には死ねなのねアナタは」


 最近優しめになってたのに、なんて寝言をぶつくさ呟くカイトはさておき。

 何故カトウが居るのか、なんて疑問は特に無いらしいカイトは僕等にも隠れるように言ってからとある場所を指差した。


「……あの店がどうした」


「いーから待てって! さっきゼンが入ってったんだよ!」


「ワタヌキゼン? 其れがどうかしたの?」


 話の道筋が理解出来ていないカトウ――というか僕も出来てない――は訝しげに思いながらもカイトにつられ隠れるけれど、ゼン君が居たところで何になるっていうんだ。


「つーかアサキ、ユウヤ連れて来なかったのか?」


 面白いことって言えば着いて来ると思ってた、なんて言うカイト。


「通販番組に夢中だった」


 そう言ったら何とも言えない表情をしていた、其の表情、僕には良く分かるけどさ。


「将来が心配ね」


「うわあ言うなよリョウコ俺もアサキも言わないでおいたことなんだから」


 本当だよ。メモ片手にテレビに食らいつくユウヤが本当に心配だよ、此の僕が心配してるんだからよっぽどだよ。



 とか何とかぶつくさ言っていれば。

 カイトの言う通り、某店から出てきたのはゼン君其の人で。未だ此方には――ていうか此の遠さじゃ気付けないよ、って距離離れているので気付いていない。僕が気付いたのだってゼン君が金髪だからだし。


「ほれっ! ゼンだろ!?」


「うん、そうだね」


「ええ、そうね」


「お前等俺の話に興味無ぇな?」


 正直に言えば無いんだけど、カイトがジト目で見てくるものだから其処は黙殺することとする。


「お前等ちゃんと見ろって!! あ、ほら、ほらほら!!」


 幾分大声になってカイトが再び指を差す。だから何だっていうんだ、と、相変わらず興味無く其方を見れば、


「……うん? あれ、誰かしら」


「さぁ」


 ゼン君の後から出てきた(恐らく)女の人、其の人の手からゼン君が受け取ったのは――うん? 赤子?


「もしかして……不倫!?」


「え、そういう見解に至ったっちゃうんだ」


「だろ!? リョウコもそう思うよな!?」


「お前もかい、っていうかアレは赤子ってことで合ってる?」


「お前目ぇ悪いなら眼鏡買えよ」


 最近落ちたんだよなぁ視力、――じゃなくて。

 お前が言う面白いことってまさか此のことか? ゼン君が女の人――しかも亜麻色の髪の――から子供を受け取っただけで不倫ってお前等の頭どうなってんだ。同じクラスだとそういう見解に至ってしまうのか? 歳にして未だ二歳くらいかと思われる子供を十五歳の高校生が抱えてるからって不倫って……でも、まぁ、……兄妹には見えないしな……。

 馬鹿なカイトはともかく至って真面目なカトウが真剣な顔してる訳だが、此れはどういう反応をするのが正しいのだろうか。


「あ、女の人どっか行っちゃったわ!」


「お、おお、ゼンが子供を連れて行ってしまう……!」


「行くわよ!!」


「え?」


「もっちろん!!」


「え? ちょ、何処に」


「「真相はいかに(よ)」!!!!」


 ええー……。何だか止められる雰囲気じゃなかったので、僕は黙って着いて行くことにした。



 ……はあ、ユウヤ連れて来なくて良かった。




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