264+前夜にて知った話。
マヒルだ、文化祭がどーの、ってことでユウヤの帰りが遅いんで、今日の夕飯は俺が作ることになってんだ。ま、俺が居る時は基本俺が作ってるし、元からっちゃあ元からなんだが。
「アサキ、お前のクラスは残らなくても間に合ったんだな」
「うん、だって校内スタンプラリーだし」
教室使わないんだな。校内の何処か――または誰かが持っているスタンプを押すっていう簡単なゲームらしく、全部集めれば他クラスで使える半額券プレゼント! 的企画らしい。ふむ――金を掛けずに上手く考えたもんだ。出費は全て他クラスに回るしな。
「ってことは、の割に遅かったってことか」
「まぁね」
俺の作った鱈のムニエルに対し箸を突き立てつつ、アサキは無表情に呟く。
「生徒会手伝ってた」
「うおっ、らしく無ぇことやってんな」
「部活の先輩だから」
「嗚呼、そういやお前達GC部か」
「うん」
少し前に聞いた話ではあるが、実際問題全く驚きはしなかったな。ゲーム好きandとっとと帰りたがるであろうアサキにあの部活はピッタリだし、あ、ちなみに俺が詳しい理由はただただ母校だから――って訳では無い。そういやアサキに言ったことはあっただろうか。
「あの部活がまだあったってことには少し驚くが、相変わらずで何よりだよ」
「だらだらだよ、本当自由だよ」
「そりゃそういう部活として――俺等が立てたんだもん」
あ、止まった、やっぱり言ってなかったか。
「……あの部活、兄貴の代で作ったの……?」
「ああ、部活強制なのがキツくて、俺ともうひとりで集めたんだぜ? 凄ぇだろ」
「……」
アサキが近年稀に見る唖然顔を曝している、写メりたいが此処は黙って再起すんのを待とうと思った俺は優しい兄ちゃんだと思った。
「――其の頃から、メンツは生徒会ばっかだった訳?」
――再起して第一声がやけに真面目でびっくりした。
「え? あー、そうだな、そのもうひとりが生徒会長やってて、そんで他を巻き込んだ形だから……そうなるな」
「初代から面倒臭ぇことしてくれやがって……!」
嗚呼怒るとこは其処なんだな、面倒事大嫌いな弟は、そんな怒りとは裏腹にゆっくりと食事を進めていた。ちなみに俺は先に食い終わっている。
「俺も会計やらされてたけど、元より俺が早く帰りたいからって駄々捏ねて作ったようなもんだからな。部活にゃほぼ出てねぇし、生徒会の仕事も極々少量で、放課後には食い込まないようにしてくれたもんよ」
「マヒルは其の頃から僕とユウヤに気ィ遣い過ぎだけどな、高校生なんだから弟等の為に早く帰って来んなよ」
仕方ないだろ、其れが性格だ。
「ていうかそのもうひとりの人も良くやってくれたよね」
「まぁ、俺が半無理矢理に――って、お前会ったことあんだろ、もうひとりってトウマのことだよ」
「トウマ……?」
もうひとり――確かあの頃一番付き合い良かった奴だったし、よくうちにも遊びに来て、アサキやユウヤと遊んでたはずなんだが。――どうやらアサキの頭からは抹消されているらしい、首を傾げる所か何処か訝しげじゃねぇか。
「お前、少なからず二年以上の付き合いだったはずなんだが」
「知らんもんは知らん、顔を見れば思い出すかも」
「嗚呼そう」
悪い奴じゃ無かったはずなんだが。大学入って此処三年会って無い、何時の間にやら携帯も繋がらなくなってしまった奴だが、今はどうしているんだかな。
「ま、何時か見た時思い出せば良いんじゃねぇか?」
「そうだね、ごちそうさま」
「へいへい」
「疲れたー! たらいまーっ!」
アサキの食事が終わったと同時に帰宅、順番が逆だろ、と思わずツッコミたくなる言葉を玄関から吐いているのが聞こえる。
そうか、休みは休みでも、明日は母校の文化祭か。どうせ暇だし、あの二人でも誘って行くのも良いかもしれないな。
俺はそんなことを考えて、ユウヤの飯でも用意してやろうと席を立った。




