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259+さいしゅーび!


 こーんばーんは、シユウママよん。


「はー、疲れたねー義姉ちゃんっ!」


 あははっ、そーねーはーちゃん、なんて言ってみるけど、ぶっちゃけはーちゃんの非でなくすっごく疲れたわよ私、もう十一時よ。何でそんなに元気な笑顔で居られるのかな、あれだけハードな畑仕事してるのに。お義姉ちゃん都会っ子って訳じゃあないけどやばいわコレ、明日から仕事あるんだけどまともに動けるかしら? そんな心配をしつつもはーちゃんと一緒にお家に帰る。

 それで――んっふっふ、そうよシユウ、今日は帰ってからが勝負なんじゃないの、うふふふふ。昨日の内に聞いてるんだからね? はーちゃんのお誕生日会について!


「んー? 義姉ちゃん何笑ってんの?」


「ふい!? い、いーえ!? 全然笑ってませんケド!?」


「そう? なんか変な表情してたよ?」


「だ、大丈夫大丈夫! なーんでも無いわよっ!?」


 ふう、流石ははーちゃん、シンヤ君の妹なだけあって肝心なところが鋭いわ……! っというか私が隠し事とか苦手なんだけどね、うん。

 昨日ユウ君に『ハザラさんには内緒だよっ!!』って可愛く言われちゃってるもんだから隠し通さねばいけないのよ! だからお家に着くまでは何としてでも秘密を死守するんだから! ちなみに昼間の内にバレなかった理由は、秘密とか考える暇が無いくらい死にそうだったからなんだけどね――。






「たんだいまーっ!!!! ――あり、ねぇ、義姉ちゃーん」


「ん?」


 先に玄関に入っていったはーちゃんが、後から辿り着いた私を呼んだ。どうしたのかしら。


「うちが暗いんよ、どーしたのかな」


「え? んー、さぁ……」


 ふっふっふ、最初は暗くして、後からクラッカーか何かでパーンって魂胆ねっ!! 私には何の情報も入ってないんだけど、其れくらいは理解出来るんだからねーだっ!!


「皆ー、どーこーだい?」


「シンヤくーん?」




 五分後。




 あれ、居ない、誰も居ない。

 ……あれ?


「ぬぬ、何処に行ったのかなぁ」


「さぁ……」


 ちょっと、予想大外れよ私、何処探しても皆居ないんだけど? え、本当に何処(いずこ)よ、私とはーちゃんを置いて、どっか行っちゃったってことは無いだろうし。だ、だってユウ君がサプライズパーティーだって言ってたもの! 私はユウ君を信じるわよ!?


「……」


「……はーちゃん?」


 とか何とか内心で格闘していたら、はーちゃんが俯き加減に何かを考えている風だった。どうしたのかしら……?


「義姉ちゃん」


「な、何?」



「――神隠しだよっ!!」


「――はい?」


 ごめんシンヤ君、はーちゃんが壊れた。


「此れだけ探しても居ないってことはっ、だよ! きっと家に居る皆、神様に隠されちゃったんだよ!!」


「……そ、そうかしら」


「ぜーったいそう! むむむ、神様め、私の家族を返せー!!」


 中庭に出てきてた私達、そんな状態ではーちゃんは、空に向かって大声で叫んだ。田舎って良いわねー。






「――そんな訳無いでしょう? 昔から変わりませんね、貴女は」


 ――今のは私の声じゃない。っていうか、聞き間違えるはずないんだけどね、私もはーちゃんも。だって、私からしてみれば愛しの旦那くんだし、はーちゃんからすれば、――大好きなお兄ちゃんの声なんだから。



「え、兄ちゃ――うひゃ!!」


「わっ!!!!」



 何処からの声だろうと辺りを見回した私とはーちゃんだったけど、次の瞬間に目の前を遮ったのは、真っ黒の影。ちょ、ちょっと私もびっくりしたかな。

 はーちゃんと私はちょっと――いや大分――驚きながらも、其の影を視線で追いかけて――


「どうも、二人共」


「兄ちゃん!?」「シンヤ君!」


 其れが其の人だったことに驚く。かっこはーちゃんだけ、私は……うん、シンヤ君なら何だって良いや。


「ママー!」


「お母さん、何て阿呆みたいな顔してんの」


「ちょ! ユウにオト!? 何で皆して屋根の上に居るの!?」


 続けて掛けられる声にはーちゃんは驚愕だけど、此れには流石の私も驚愕ね。どうしたの皆して。


「よっと!! ほら、オトも降りてきて!」


「分かってる、お姉がアクティヴ過ぎるんだよ」


 誰の手も借りずに降りてきたユウリちゃんに、シンヤ君の手を借りて降りたおー君。もう何が何だか分かってないはーちゃんは、キョドるとかもうそういう問題でなく頭上にクエスチョンマークを浮かべまくっている。屋根って凄いわね、平屋だから出来る芸当だと思うわ。


「ね、ねぇねぇ、何してんの? え、……?」


「ふっふっふ、ママ! 此れを見るがいい!!」


 混乱中のはーちゃんに対し、少し大袈裟にユウリちゃんは大きく手を広げる。差すはリビング、おー君が明かりを付ければ、其処に広がるのは――。



「「お母さんっ! お誕生日、おめでとー」!!」


「……わあ」


 普段の貧相な机の上に並べられる沢山の料理に、手作り感溢れる大きなケーキ。其れはそう、誰かを祝う為だけに用意されたもの、此の場合は勿論――此の、唖然と明かりの中を見る、はーちゃんを。

 此れと言って特別なことなんて無いんだけど、其れはそう、たった二人の子供から祝われるっていう、最高のスパイスがあるでしょう?


「此れ、ユウとオトが用意したの……!?」


「ううん、全然」


「用意はほぼ、うちの息子達ですよ、ハザラ」


「……あり?」


 屋根から飛び降りてきたら上機嫌――って訳じゃないだろうけど、普段より三割増くらい笑顔なシンヤ君の説明によれば。



『うむ、ケーキのスポンジの出来、なかなかであるな!』


『うおおっ、ユウヤすっげぇ!!』


『……マヒルお兄とアサキお兄、何してんの?』


『え? 掃除』


『を、手伝わさせられているアンド、家の電気が一時的につかないようにブレーカー弄ってる』



 という訳で、二人はほぼ驚いてたりしてただけみたい☆

 でもまあ、子供達っていうのは其処に居るだけで良いってもんだからね! 私は其れで良いと思うの。


「あ、ありがとう皆ああああああ! あたしはてっきり神隠しにでも遭ったのかと……」


「ふふ、何を言ってるんだいハザラ? もし子供達が神隠しになんて遭ってたら僕が神様をぶち殺してるよ?」


 うわあシンヤ君素敵。


「あははっ! 其れもそーだよねっ! 兄ちゃんも昔から変わらないなぁ!!」


 昔からそんなだったのシンヤ君、ちょっと初耳よ其れ。怖いわよ、流石に私もびっくりよ。ってか今日だけでどれだけびっくりすれば良いのかしら!!


「ささっ、ママ、早く中入って入って!」


「う、うん! ってかユウリ、三人は?」


「あー、良いの良いの、三人は放っておいて」


「でもー」


「良いから、ね、お母さん」


「……うん、分かったよー」


 少しの間きょろきょろとうちの息子達を探していたはーちゃんだったけど、おー君の言葉で諦めたみたい。ふふっ、良いんじゃないかしら、家族水入らずっていうのも! 企画だけはうちの息子達ってだけだしねん。


 でも。



「ねぇねぇシンヤ君」


「はい?」


「うちの息子君たちは?」


「嗚呼、――上、ですよ」


 ……上?








「あら」


「よう、お帰り」


 シンヤ君に梯子を出して貰って屋根の上を見れば、其処にはマヒルと――寝転がってる双子が居た。というか――


「其方は、寝ちゃってるのかしら?」


「ああ、寝てるよ、危ねぇから見てんだ」


 うん、そうよね。もう十一時ですもんね。其の子達が起きてるなんてのは珍しいものね。

 マヒルは片膝を立てて後ろ手を屋根について、……ただのそんな姿なのに、何で此の子はこんなにも様になるのかしら。自分が生んだのにどうとも思えないわ、何故かしら?


「どうするの? 下ろす?」


「いや、父さん曰く、寒くは無いから此処で寝てても問題無ぇそうだ」


「そ、流石は実家ね!」


 ふふっ、可愛い寝顔ねぇ、二人の寝顔を見て、私は一生親馬鹿でいいや、なんて思った訳で。

 マヒルが持ってきたのかは知らないけど、薄いタオルケットを掛けてるし、大丈夫よね? 雨も降らないし。


「俺も此処で寝るから、母さん達は心配せんで良いぜ?」


「ふふっ、元から其のつもりよん」


 そう言えばマヒルは、一瞬キョトンとしてから笑った。……ちっくしょう、格好良いぞこいつ。


「それじゃね、お休み」


「嗚呼、下宜しく」






 夏休みがすっごく楽しくて、明日から仕事なんてすっごく嫌だけど、今日の思い出を胸に、明日からも頑張ろうと思います! はーちゃんの嬉しそうな顔とか、シンヤ君の大胆な発言も久しぶりに聞いた訳だしね!


 よし、下のパーティーに加わってこようかなっ! いっくぞー!!













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