257+馬鹿と馬鹿との思い付き。
アサキですが。
気付けば夏休みが終わりそう、ぶっちゃけユキとかアスカ君とかの私立組は既に学校始まってるらしいんだけど。ちなみに私立組って言っても僕の知り合いじゃあ後ミトウくらいだがな。
「うあー、一生夏休みなら良いのになー」
「其れはあたしも思うよー」
さっきから引っ切り無しにユキから来るメールを捌いていれば、目の前ではユウヤとユウリがぐでっていた。何なのお前等何時もの元気は何処。
「夏休み終わったら三人共帰っちゃうしさーあ? 学校暑いしやってらんねーよー!!!!」
「だーよーねー」
二人して畳に寝転がっているもんだから邪魔で仕方ねぇよ。
完全にスルーしつつカチカチと携帯を鳴らしている僕、しかしどんなにだれていたってこいつ等の元気は何時だって唐突にやって来ることを知っている為気が抜けな――
「そうだっ! ねね、最終日に皆でサプライズパーティーしようぜ!」
そらみろ。
いきなり起き上がったユウリが馬鹿みたいに思い付きの発想を繰り広げてやがる、サプライズパーティー? 一体何のだよ。
「良いね、やろう」
「何でだよ」
其処で何故同意出来るんだお前は。我が兄ながら本当楽しそうなことには何だって飛び付きやがる馬鹿だ、くるりと仰向けから上半身だけ起き上がらせて、無駄にきりっとしたキメ顔でユウヤは言った。
「さっすがユウヤ! あたしの従弟なだけある!!」
「ふっ、まぁ、俺だからな」
「おーい、此処にもお前の従弟が居んぞ、ふざけろテメェ等」
とりあえず話をさせろ、そして話を聞け。ユキには悪いが一旦携帯から手を離して二人を一瞥する。
「何でパーティーすんのか分かってんのユウヤ」
「……楽しいから?」
「黙れ」
「だ、だってアサ君が聞いたんじゃない……!」
「そういうことは聞いてねぇんだよド阿呆」
「まぁ、パーティーをする理由はユウヤので二割は当たりだよ」
じゃあ過半数を占める方の理由教えろユウリ。
「八月の最後、――ママの誕生日なんよ」
「「……」」
ハザラさんの? 確かに何処からどう見ても夏生まれっぽいから驚きはしないけれど。
「ユウヤやアサキ、マヒル兄にシユウ伯母様やシンヤ伯父様、皆が居るなんて滅多に無いことじゃん! だから、ママはきっと喜ぶと思うんだ」
「二割は楽しいからなのにか」
「其処は言っちゃ駄目だよアサ君」
だって言ってたじゃないか。
とまあ人の傷口抉るのは後にして。途中からユウリの目が本気になってきたのには気付いたし、此処はユウヤにアイコンタクトで尋ねてみた。
「やろうっ!」
聞くまでもなかった。
「よーし! 夏休みの最後の思い出作りも兼ねて、皆でハザラさんの誕生日会をやろう!!」
「ユウヤ……うん、ありがとな!」
やれやれ、此の後先を顧みない馬鹿共め。お前等だけで何が出来るというのだろうか、僕が加わったところでマイナス要素にしかならないのは自分が良く知っている。だからたった今玄関からした、「ただいまー」という声の主こと我が家の長兄にでもとっとと話をしてみよう、だなんて思った。