253+燦燦と輝く太陽こそ、今は本当に忌々しい。
「あー、懐かしいな此の感じ」
良い意味にも悪い意味にも聞こえるそんな言葉を呟いたマヒルは、どうやら今回の場合後者だったそんなテンションで脱力した笑みを見せた。
「ホント、何度来てもなーんにもないよね」
「んふふっ、其れが良いんじゃなーい」
しかしユウヤは楽しそうだし、久しぶりに会った母さんはもっと楽しそうだった。父さんは言わずもがな実家だしな、楽しいだろうよ。
アサキですが。
大分前から言っていたように、父さんの実家にいざやってきました、本当に何も無ぇったらありゃしない。先ずツッコミたいのは何故に車で実家に直接行けないのかってことだ、どんだけ田舎だバカヤロウ。
荷卸を――主にマヒルが――していれば、急にユウヤがきょろきょろと辺りを見回し始めた。そんなに見なくてもどうせ何も無いだろうが。
「どうしたのユウ君?」
「いや、何時もならそろそろユウリがそこら辺からやって来て俺に飛び蹴りを喰らわせる頃かと」
嗚呼、そういやそうか、前は後ろからやって来たよなあの人。……でもあの時は確か僕等が無視したからじゃなかったっけ。
僕もつられて見回してみたけれど、どうもあれが居る気配が無い。ていうかユウリが居るなら探す前に見つかるっての。――あれ? 何だ此の既視感、何ででしょう此れ。
――トスッ。
「……え?」
「……どーん」
背後からの衝撃。
――不覚、背後を取られた……! って冗談はさておき。
「……何してんの、オトワ」
「やべっ、バレた」
声出しただろうが。
後ろを見ることなく当ててやればそいつ――オトワはあっさりと僕から離れた。そうか既視感はアレだ、こいつの気配の無さだ。
「あっれー? 今回はおー君がお出迎えなのねぇ」
母さんも今気付いたらしくちょっと驚いた風だったけど、直ぐさま何時ものへにょんへにょんな笑みを浮かべた。しかし当のお出迎え役であろうオトワは――……何故だろう、物凄く不機嫌気味だ。
「……」
「オトワ?」
「おう、オトワ、お前が来たんか」
「おっとー!!」
「……」
マヒルとユウヤが声を掛けても反応が無い、何が不満だったのか分からないぞおい。
「おー君、どーしたの?」
僕同様不思議に思ったんだろうな、母さんがオトワの身長に合わせてしゃがめば、小さく首を傾げた。此の人は本当、何処まで若いんだろうか。
「……お姉が酷いんだよ」
「え、ユウリが原因? どうしたの、ユウリが原因でオトワが不機嫌になる理由なんてあるの?」
ユウヤの意見に同意見ですが。
「お姉、皆が来るって言って」
「うん」
「――浮かれ過ぎてダウンした」
「「「馬鹿じゃねぇの」」」
つい口に出してしまった、兄貴達も同様に。母さんにはこら、と一言言われたが僕等は何も悪いことは言ってない。
「今日皆で一緒に遊び行くって言ってたのに」
どうやら此の小学六年生、表情に似合わず皆で遊ぶのを楽しみにしていたらしい。……でもまあ、ダウンした姉ちゃんの方はもっと落ち込んでるんだろうな、遊べないプラス最愛の弟悲しませる、だから。
「あらあら、残念ねー。でもおー君大丈夫よっ! 今回は長めに居るんだもん! 今日が駄目でも沢山遊べるから、ね?」
「……うん」
若干納得して無い風だったけども、オトワは小さく頷いた。
……さて、とっとと実家、行きますか。
「うわああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」
「ユウリ、落ち着きなよ……」
実家には案の定、弟に嫌われたと思い込んでいる馬鹿が居ました、本当に嫌われる前にとっとと寝ろよ。