246+腹黒貴公子の嫌いな物。
「アースーカー!!!!!!」
「お久しぶりですユウ――痛い、痛いですユウヤ、何か絞まってはいけない器官が絞まって――」
こんにちは、本当にお久しぶりですね、アスカです。
高校に入ってからユウヤやアサキ君と接点が薄れて来ていて――まあ、ユウヤからは毎日のようにメールを貰ってますが――寂しいこの頃ではありますが、其の分こうやって会えた時の喜びは何ものにも勝るものだと感じます。……ですがユウヤ、抱き付くのは良いんですが首、首絞まってます、死にますって。
「嗚呼! ごめんよアスカ! 久しぶりにアスカのその一物含んでそうな笑顔を見たらつい!」
此れは喧嘩を売られてるんでしょうか、まあユウヤだから素なんでしょうが。
私立の高校というのは夏休みが結構短かったりするんですけれど、俺の学校もそうで今日から夏休みなんです。終わりも八月中ですし、何てハードなんだか……少しくらい休ませてくれたって良いじゃないですか。――ま、俺は既に二週間分くらい休んでますけどね。
そんなこんなで夏休み、近場の公園でユウヤと会うことになりました。学校終わりで体調優れなかったら嫌だな、とか思ったんですけど流石は俺の身体、大分空気が読めますね。
「本当にもうアスカ久しぶりだね! ――ていうか背ぇ伸びた?」
「はい、成長期みたいです」
笑顔で答えてみたものの、ユウヤは若干驚愕していました。
「やべえ、アスカでかくなりそうじゃん、俺ほぼ伸びないってのに……!」
「ふふっ、ユウヤはそのサイズくらいが丁度良いんじゃないですか?」
ユウヤの言う通り、高校に入りまして背が伸びました俺。此の分だと百七十も夢じゃないと思います。別に目指してないですけど。
「ちっくしょー、俺も身長欲しい!」
「他の皆さんも伸びてたりするんですか?」
「カイト君はフツーに伸びてるよ、後リョウちゃんとかグングンと」
リョウコさん、何か不憫です。
「アサ君はあのまんまだね、ちょっとくらい伸びたのかな?」
「まあ、ユウヤが伸びてないのでアサキ君も伸びてないのは容易に想像出来ます」
第一、アサキ君の身長が高い図なんて絶対想像出来ませんよ、……だからこそリョウコさんがちょっと不憫です。
其の後身長の話は逸れに逸れ、ユウヤの高校の話なんぞを聞きました。ふふっ、新しい友達も出来たみたいですね、ユウヤは元々社交性がある方ですから心配とかは無かったですけどね。俺の方もそこそこ適当に高校ライフを送っているので特に問題はありません、ユウヤにそう言えば、何だか嬉しそうに笑っていました。
「何かアレだねー、久しぶりに会うのにさ、こうやって馬鹿みたいに会話が尽きないの」
「ですね。と言いましても、俺はユウヤの話を聞くのが主なんですけれど」
「あははっ! でもやっぱりアスカと話してるのは楽しいや!」
何だかほのぼのとしてきます。
と、のんびり会話をしていれば、何時の間にやら公園には何処から沸いたのか小学生低学年くらいのボール遊び集団が現れていました。元気ですね、全く。
「アスカってさ、小さい時ああやって遊んだりしたの?」
「え?」
「いやだってさ、昔はもっと身体弱かったって言ってたから」
嗚呼、ユウヤにはそんな話をしたんでしたっけ。ユウヤと、……うん、確かアサキ君にもそんな話をした覚えがあります。ユウヤの言う通り昔からひ弱だったので勿論、
「はい、余りやったことはありませんね」
という訳です。
「そっか、でもアスカって元々アウトドアなこととかしないもんね」
「そうですね、元々好きじゃないですから結構助かってます」
やらなくていいことには物凄く助かってますよ。
けれどひとつだけ、其の所為で困ったことが一つ。
「ですが俺、自分が昔外に出れなかったからなのか知らないんですけど」
「うん?」
「外で遊んでいる子供を見るだけで――虫唾が走ります」
「……」
嗚呼、ぽかんとされました。
「……え?」
「ですから、俺は子供嫌いなんですよ、物凄く」
「そ、そうなの!? 俺全然知らなかったんだけど!」
「ふふっ、言ってませんでしたものね。蕁麻疹出るんじゃないってくらい嫌いなんですよ? 最早こどもアレルギーですか」
「え、こどもチャレンジ?」
「ナメてますか?」
「ごめん黙るから笑顔こあい」
一生勉学に励んでいれば良いですよ、というかこういう時、ツッコミ――主にアサキ君――が居ないのが凄く残念です。
でもまあ、今日は機嫌が良いので許してあげます、ね、俺って優しいでしょう?