242+何時だってレイニーデイ。
「あー、まあた雨降ってらあ」
最近の夕方の空模様は、二日に一辺涙空。……何つって、カイリだぜ。
馬鹿な俺には詩人染みた話は出来ないんだが、自分が目で見たことくらいは口に出せるんだぜ! ――という訳で、放課後ながら……違ぇな、放課後だから土砂降ってる訳だ。
「今日は夕方雨って言ってたもんねー、見事に降ってるし」
「本当にな、どうせ止まないんだし早く帰ろうよ」
「そだね」
俺の隣と後ろからそんな暢気な双子の声がする、でも確かにそうだな、雨なのにこんなとこ――要するに下駄箱――に何時までも居たってしょーもねえし、さっさと帰――ん?
「あり、なあアサキ、ユウヤ」
「何ー?」
帰って来たひとつだったけど、後ろからはちゃんと視線を感じるのでそのまま俺は気付いたモン――人を指差した。
「あれって……」
「あ、ハヤ先輩だ」
どうやら間違いじゃあなかったみたいだ、俺達同様鬱陶しそうに空を見上げる姿は同姓の俺ですら様になってんなあ、なんて思う訳だが、そんな我等が生徒会長様が珍しくも其処に突っ立っていた訳で。ユウヤの声で俺達に気付いた先輩は「やぁ」という声と口元に笑みを携えて此方を見た。
「三人仲良く帰宅か? カイリはともかく、ヒコク達は双子なのに本当に仲が良いな」
「はい!」
「何処が?」
全くかみ合ってないけど俺もハヤ先輩も気にしねぇぜ。
「先輩はどうしたんですか?」
「俺か? ……まあ、雨止まないか、と空を仰いでたんだ」
小さな苦笑と共にそう言えば、再び空を見上げたハヤ先輩。傘でも忘れたんだろうか。
「今日は止まないって言ってた」
「嗚呼、俺もそう聞いた。でも此の雨じゃあ帰れんな……」
「傘忘れたなら俺の貸しますよっ!?」
「え? ……嗚呼、でもそうしたらお前が濡れてしまうだろう?」
やっぱり傘忘れたんだな、でも其処は先輩、後輩から二本ある訳でもねえ傘を借りるのは気が引けんだろうな。
「大丈夫ですよ! 俺天合羽あるし! 第一先輩、雨に降られて体力削られたら倒れちゃうんじゃないですか……?」
「……」
ハヤ先輩は何とも言えない表情で空を見上げている、どうやら図星のようだ。
「今日サチト先輩どうしたんすか?」
「ゲームの発売日だから先帰ったぞ」
「職務放棄だ」
「アサ君なんか違うと思う」
でも確かに其れが正しい、あの人は此の人のお守りをせねばならないだろうに。俺は若干苦笑しつつアサキの発言を聞いて――というかアサキはとっとと帰りたいみたいだ、顔が言ってる――、つられて空を見上げた。
「ま、そーゆーことで、ユウヤの傘使った方が良いっすよ、俺達も帰るんで」
「はい先輩っ! さようなら!」
「……悪いな、明日ちゃんと返す、アサキも引き止めさせて悪かった」
「……」
アサキの無言の催促にも気付いていたらしく、傘を受け取って先輩は言った。
「うーん」
「どしたユウヤ」
チャリに乗ってからユウヤが唸る。
「ハヤ先輩ってさあ、」
「おう」
「フツーに格好良過ぎだよね」
何だその結論。
全く興味ないらしいそいつの弟を乗せつつ、土砂降りの中を帰った俺達だった。