236+全力疾走!
アサキです。
「ヒコクくんっ、テストどうだったっすか?」
「フツー」
「ボクはヤバかったっす!」
高校入ってからテストが三日間くらいに分けてになったから、勉強まとめてやらなくていいから楽になった。そしてフドウったらなんていい笑顔。もう諦めている奴の笑顔だな。
「あー、しぎしぎお揃い! テナもズタったんだよお?」
嗚呼、もう一人いい笑顔。
「テナねえ、昨日は徹夜で勉強しようと思ったんだけど眠くて寝ちゃったの」
「寝るなよ」
「寝ないとお肌にも悪いもーん」
あれ、二秒前くらいに徹夜しようとしたとか言わなかった?
何故か不貞腐れてしまったドウモトはふいっと視線を何処かに向けてしまった、何これ、悪いの僕な訳?
「で、でもアレっすよ! 明日もテストっすから頑張りましょう!」
「そうだね」
「テナ今日こそちゃんとお勉強しようっと!」
「アサキー、帰んぞー」
二人がやっと張り切り始めたところで、――遅いけどね?――二組からカイトがやってきた。
「あん? 何張り切ってんだこっちの二人」
「明日から頑張るんだとよ、テスト」
「遅くね?」
「ほらお前等、カイトにそう言われちゃおしまいだぞ」
「ゴルァテメェチャリ乗せねぇぞ」
だってそうでしょう、カイトに勉強のこと言われるようじゃ終わったも同然。
「俺だってな、最近ちゃんと勉強してんだっつーの、今回見てろよ、お前抜くからな、……英語だけ」
「お前そうやって僕の苦手科目を責める訳か」
その笑顔がムカつくんですけれど。こいつが英語得意で僕が英語苦手、……ヤバイな、下手したらマジで抜かれる。
「何々? カイちゃんはあ、あー君より頭良いの?」
「か、カイちゃん? 姉ちゃんと同じ呼び方だな……。あ、ええと、違ぇよ、俺馬鹿だもん」
「そうっすよね! ロクジョー君が頭良かったらボクちょっとショックっす!」
「あれ? コレ喧嘩売られたんじゃね?」
今度はカイトの笑顔が素晴らしい、まあ殴って良い? と尋ねてくる間があるなら大丈夫だろう、……多分。
「つーかホラ、早よ帰らんと。お前今日病院行くんじゃなかったのか?」
「……あ、そうだった」
「何でお前の事情俺の方が知ってんだよ」
足が未だ治ってないんだった。何時も忘れるんだけれど、本当に怪我してるんだったよね、そうそう、うん。……痛くないから分からない、もう治ってるんじゃないのだろうか。
固めてないから家に居る父さんに連れられ病院に行っているのはいいんだけれど、毎回忘れていたらカイトに連絡が行くようになったようだ、面倒な保護者が増えたもんだ。
「何時治るんすか?」
「夏休み入るくらいじゃないか、って」
フドウがきらきらした目で尋ねてきた。隣のドウモトもふーん、と興味あるような無いような声を漏らしている。
「よし、じゃあ帰るか」
「うん」
「あ、はいっ、あー君」
「ん」
カイトが僕の荷物を掻っ攫ってくれたおかげでドウモトが渡してくれた松葉杖が使えるのだが、相変わらず使う必要がないんだけれど。
使う時なんてあるんだろうか……いやねえな。
「ひ、ヒコク君! 普通に歩いたら駄目っすよ!」
「いいんだよ、いいからお前はとっととゼン君に勉強教えて貰え阿呆」
「あう」
さあって、とっとと帰ってゲームの続きでもしようかな。