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 アサキですが。


「……」


 何か前にもこんなことがあった気がする、僕が珍しくちょっと教室を後にすると、誰かが僕の席に座ってフドウ話してるんだよね。大抵はゼン君なんだけれど、今日は違った、……っていうか誰アレ。


「あ、ヒコク君」


「え? あー君帰って来たの? はいはあい退くからあー君は座って座って」


「駄目じゃないッスかヒコク君! そのまま歩くって何でッスか!? 杖さんを持って下さい!!」


「は? 別にいいじゃん、トイレ行っただけだし……っていうか……誰?」


 何故だか当然のように立ち上がって、当然のように僕の背中を押して席に着かせたこの人。フドウにもあわあわ心配されるし……あ、そっか、僕足負傷中だったんだっけ。


 学校でも日常生活でもギプスとか怠過ぎて、全力で否定して固定しなかった僕。だって絶対松葉杖無くちゃ歩けないような日常僕には無理だもん。無理ったら無理。

 足元を見れば右足だけスリッパで、ほう、捻挫だったか、と僕自信が思い出す、あんまり歩かないから痛くも痒くもない。ただ階段の上り下りが少し辛いくらいだ。


『辛かったら俺がおぶってあげるからねっ!』


『うるせえカス』


 家じゃあユウヤがそううるせえけど、学校だともっと大勢が五月蝿い。さっきも廊下でカトウに会って、


『あ、アンタ何普通に歩いてんのよ!? ていうかフドウシギ横に付けときなさいって! こけたりしたらどうするのよっ! これ以上何かあったら……し、心配じゃない!』


 とか真っ赤になって言われたし。そしてフドウがあいつの中で付属品化していたことに僕は驚いたんだけど。



 それは良いとして。


「もう、しぎしぎも駄目じゃーん、あー君一人で歩かせたら危ないよお?」


「ボクが気付いた時には居なかったんス」


「ちょっと待てお前等、僕の話を聞け」


 本当にこの人誰なの、フドウが普通に話してるところを見ると知り合いなんだろうけど……いやマジで誰。

 本気で首を傾げていたら、目の前のその人――いい忘れたけど女子だよ――は、何故か頬を膨らませた。


「んもうっ、あー君ったら酷い! テナのこと知らないのお!?」


「は? 何だって?」


「テ・ナ! ドウモトテナ! あー君と同じクラスだよ!」


「ちなみにボクの後ろの席ッスよ、ヒコク君」


 嗚呼、そうなの。……え、ていうか――


「同じクラス……?」


「――……」


「嗚呼! テナさん落ち込んじゃったッス! ヒコク君アレッスよ! テナさんは見掛けによらず繊細なんスから!!」


 悪いのは僕なのか……? いや、僕なんだろうな、でも本当に知らないんだから仕方ないじゃないか、一組で覚えてるのなんてフドウくらいなんだから。

 みるみる表情が曇っていったその人基ドウモトは「いいもん……どうせテナなんてそんな具合だもん……」としゃがみ込んでしまった。……ええと、目の前で落ち込むなって。どちらかといえばギャル風な女子生徒を落ち込ますなんてシュール過ぎる、出来れば早めに立ち直ってくれ。


「テナは頼まれたんだもん、あー君のお世話」


「は?」


 何やらぶつぶつと言っているので何事かと思えば。


「誰にッスか?」


「みのちゃん」


「「みのちゃん?」」


 誰だよ。


「あれ? あー君もしぎしぎも、みのちゃんのお友達でしょ?」


「フドウ、誰だ」


「あ、えと、あの、誰ッスかね」


「あっれー? でもみのちゃん言ってたよお? 『お前のクラスの怪我人は私の友達だから、危なくないように見ていてくれ』って」


 と言われたものの、僕にはさっぱりなんだけれど。けれど次の瞬間フドウがあ、と声を漏らしたものだから、何か思いついたのかもしれない。


「うーん……あ、『私のクラスの者共が心配性過ぎて仕方ないんだ』とも言ってたよ?」


「……嗚呼、分かったかも」


「ヒコク君、エノミヤさんって、確かミノルって名前だったッスよね?」


 ドウモトの一言で漸く分かった、クラスの者共っていう口調もそうだけれど、心配性過ぎるクラスメートっていうのもそうだし、そんなクラスメートが居るのは二組しか居ないし、二組の知り合いだって少ない訳で――まあ、エノミヤしか居ないわな。


「そうそう! みのちゃんだよお、何でもみのちゃんのお友達達、すっごくあー君のこと騒いでて大変なんだってえ。今さっき見たメールでも、とあるお友達は五組に殴り込みに行きかけてるらしくって」


「ゼン君!?」


「フドウ、止めて来い」


「はいッス!!!!」


 ゼン君の奴まだそんなこと言ってたのかよ危ないな……いや知らないけどさ、ゼン君の力量とか知らないけど絶対ただじゃ置かれないでしょあいつだと。



 そしてそんなに面識のないエノミヤにも気を遣われているという事実に少々びっくりだ、今度感謝しにいこうか。そしてそんなエノミヤとこのドウモトが友達っていうのが更にびっくり、系統違くないか。


「という訳で、テナとしぎしぎがお世話してあげるから、あー君はちゃんと怪我を治してねえ?」


「……」


 何なんだこいつ、…………まあいいか。










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