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232+梅雨の合間に体育祭。/後,4


 結果から先に言います、ユウヤです。


 黄色いはちまきこと俺達二組が優勝でした。

 リレーは二位だったんだけどね、五組が失格――不正云々の前に、どうやらアンカーがフツーにアサキに足を引っ掛けたらしくってね――だから。ちなみにアサ君は案の定一位を勝ち取りました、あいつぱねぇよホント、身体の仕組みを見てみたい。


「五組の担任には僕から話をつけました、まあ本人達はおふざけのつもりと勝ちたい一心でのことだったらしいので今回のところは許して下さいませんか、とのことです」


「先生、其れに何て言ったの?」


「ふざけろうちのクラスの生徒怪我させといて何言ってんだ、と少々口が荒れてしまいました、いやお恥ずかしい」


 流石はハヤサカ先生。

 俺は一組の教室でそんな話をハヤサカ先生としていた。席にはくたばっているアサ君と、その横にいるシギ君が。結構豪快にこけたらしくってアサ君至る箇所血まみれなんだけど、本人は保健室にも行きゃしない。そのまま血まみれで居られてもクラスの人が引くってことでさっき俺が面倒見ておいといたんだけど、一向に動かないアサ君。もうとっくに放課後なんだけど。


「まあ、うちのクラスは健闘した方でしょう、最後の彼の走りは見事だったと思いますしね」


「ほうほう、先生も生徒褒めることはあるんですね」


「当たり前でしょう、僕はああいうふざけた餓鬼が嫌いなんですから」


 無事眼鏡の戻ったハヤサカ先生は照れることもなく眼鏡を押し上げてそう言った。


「ボクは楽しかったから其れでいいッス!」


「フドウ君は体育祭なるふざけた行事が好きなんですね」


「はい! ……あれ、なんか嬉しくない聞き方」


 ハヤサカ先生は其れだけ言うと教室を出て行った。元々放課後になったらさっさと消えちゃう先生らしいしね、不思議は何処にもない。……そう考えると、少しは生徒との距離が縮んだのかな?




 でも、今日はとっても疲れたな~!  部活もないし、早く帰りたいよー!


「ね、アサ君! 家でゆっくりしたいね!」


「……うん」


「……どうかした?」


「……」


 此処でやっと気付いたけど、――アサキの顔色が芳しくない。


「アサ君、もしかして――」


「何でもない」


「何でもなくない顔色だけど」


「……」


「ほら、誤魔化しきれないときは早く言うべきだよっ!」


「……――い」


「何て?」



「――足痛い」


 一度顔を上げたのに、直ぐにまた机に伏したと思ったら、アサキの一言。

 え? 足って……。


「アサ君、触るよ」


「……痛ッ! バカヤロウいきなり掴むな」


「うっわアサ君足捻ったんじゃない? 超腫れてるよ?」


 我慢には至極定評のあるアサ君が痛いなんて言うものだからどうなのかと思ったけど、これ超腫れてるし! 痛がるアサ君に我慢して貰って靴下脱がしたら、足首が真っ赤に腫れ上がっていた。


「ひゃ、ヒコク君大丈夫なんスか!?」


「返事がないただの屍のようだ」


 自分で其処まで言うくらい痛いならもっと早く言いなよ! さっきならハヤサカ先生居たのに!


「え? コレさっきこけた時にやったの?」


「……多分、その時は痛くなかった、途中で異変が」


「気付けよ」


 ついツッコミを入れてしまったけれど、アサキから返事はなかった。

 さてはて、コレは一体どうすればいいんだろうか。


「アサキー、そろそろ帰ろ――あん? どーかしたんか?」


「あ、カイト君」


 実にナイスタイミングだ。

 カイト君を筆頭にゼン君とリョウちゃん、其れにミノルちゃんもやってきた。皆帰る準備万端なのに何かごめんなんだけど。


「ってうおっ、アサキ大丈夫かよ足」


「うるせえええええええ!!!!!!!!」


 痛みでキャラ崩壊のお知らせだよ。


「ふむ、大分酷いらしいな」


「そうみたいだねえミノルちゃん、じゃあ俺はあっ君をこんなにしておきながら謝罪のひとつもない五組の野郎を打ち殺しに――」


「だ、駄目ッスよゼン君! ゼン君加減を知らないんスから!!」


 アサキとはあまり面識がないミノルちゃんと、何やら物騒なことを言って幼馴染にぶら下がれているゼン君。ゼン君を止める為には文字通り全身を使わなくちゃいけないシギ君もわらわらとしている、皆体育祭後なのに元気だなー。


「だ、大丈夫ヒコクアサキ、冷やすものくらい貰ってくる?」


 そんな中でリョウちゃんは至って普通に心配してアサ君を労わっている。……流石リョウちゃん!


「いい、帰る」


 そしてそんな普通なリョウちゃんにはちゃんと返事をするアサ君、うん、普通の人には基本普通に返すんだね。


「帰るってどう帰るのさ、カイト君のチャリの後ろ乗って帰るったって此処四階だよ? 俺おぶろっか?」


「ゆっ君じゃ危ないんじゃない? あっ君より背の高い人の方がいいんじゃ?」


「――私か!?」


「何でミノルなのよっ! ……確かにアンタの方が身長あるけど!」


 素で驚くミノルちゃん、なんて可愛いんだ。


「いやあ、ミノルちゃんでも良いけど、此処にはオトコノコが居る訳だし?」


「……そうだな、しかし私だって不可能ではないぞ、頼ってくれ」


「何て男前なんだよミノル」


 此の中で一番の男前ミノルちゃんにカイト君が大爆笑な中、俺も少し笑いながらアサ君を見た。もう事切れてるんじゃないかと思うくらい動かなかった。



「……もう何でも良いから……病院……」



 普段怪我しないだけあってこういうときは弱いな我が弟よ。

 結局無難にゼン君におんぶしてもらったんだけどね、一番身長高いし。





 とりあえず、帰ったら直ぐに病院に連れてってあげようと思った俺だった。








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