230+梅雨の合間に体育祭。/後,2
「…………」
無言のシギ君の周りには何とも陰険な空気が。
「シギ、人は失敗をして大きくなってくんだぜ?」
幼馴染のそんな言葉も耳に入らないくらい落ち込んでいるらしい、でも確かにそうだよね、クラスの順位が掛かってるって言っても過言でないもんね。
「ヒコク君……本当にごめんッス」
「いや、別に僕気にしてないんだけど」
確かにお前は順位とか気にしないもんね。
「妙ですね」
落ち込むシギ君が回復に向かう最中、ハヤサカ先生が呟いた。っていうか一人トラック一周半って長いよ、未だ来ないよ。
「さっきから、バトンを落とす人が多過ぎる」
「え?」
先生は眼鏡を掛けてない癖にそんなことを呟いた。
でも確かにそうだ、さっきからバトンミスがとっても多い、幾ら練習不足って言ったって、俺達は数ヶ月前まで中学生で、バリバリ運動してた訳でそんなに下手な訳がない。
「でも、偶然ってことは――」
「ないね」
「……え、何で分かるの?」
「今、お前のクラスのカトウの友達……エノミヤって言ったっけ? そいつとカイトが――バトンパスミスった」
――確かに。
アサ君がミノルちゃんを認識してたのは驚きだけれど、でも。陸上部のミノルちゃんとあのカイト君がそんなミスする訳が無い。
「せ、先生!」
「今更止める訳には行かないでしょうけれど……理由は明白ですよ、はい此処で問題ですヒコク君達」
ハヤサカ先生は鋭い眼光を此方に向けて、何時もの無愛想な調子は崩さずにこう問うた。
「たった今、此処で起こっているのは何でしょうか――?」
馬鹿な俺でもよく分かる、たった今俺達の前にまで走ってきて、ちょっとキレ気味なカイト君を見なくたって、バトンミスが起こる場所が決まって一箇所――先生が誰も居ない其処――なこととか、後は口にするのは難しいことばかりなんだけど。きっとアサキやハヤサカ先生はもっと分かってる、
答えは簡単、不正行為――だ。