229+梅雨の合間に体育祭。/後,1
「……はあ」
「まーまー、お前は頑張ったよシギ」
借り物競走の結果に落胆しているシギ君を慰めるゼン君、最後の箱で手間取ったらしくて最下位になっちゃったらしいんだよね。
「最後に出たの、“身長二メートル以上の人”だったんだろ? 滅多に居ねえよそんなの」
「そうッスよね……よ、よしっ、気持ちを切り替えるッス!」
二メートルって何なんだろな、居るかよ。
とは思ったものの、シギ君は直ぐに切り替えが済んだらしくて、今競技中のクラス対抗リレーに向いたみたい。もう直ぐ順番来るしね! 敵だけど頑張れシギ君! そしてゼン君も頑張れ!
「……ユウヤ、あれ見て」
「んー?」
俺も切り替え! とか思ってみたら隣に居たアサ君が珍しく(ここ重要)声を掛けて来た。
「先生も走るみたい」
「え、あ、ホントだ! ほのちゃん走ってる!」
生徒に混じって参加してるらしい教師チーム。おお、ほのちゃん速い!
「――ってーと、俺達と走るのって誰?」
「僕ですよ」
「やや、ハヤサカせんせ」
きょろきょろと周りを見渡せば、相変わらずの生真面目が其処に居た。本日は眼鏡レスでありますハヤサカ先生。眼鏡が無くともクールだね!
「……」
「何ですヒコク君、何か言いたそうな顔ですね?」
「……先生って、どう見てもインドアだから」
「そっくりそのままお返ししましょうか? ――教師の中で僕が一番若いですしね、こう見えても足には自信があります」
確かにそうだよね、先生まだ新任って言ってたし。
「ゆっ君、そいじゃアンカー頑張ってねん☆」
「あ、うん! 頑張ってねゼン君!」
もう結構進んでたらしくて、ゼン君は相変わらずのキザさで俺にそんなことを言った。……周りの女の子がちょっとどよめいたのは聞かなかったことにする、うん。
「あ」
「え?」
アサ君の声。
どうかした? と声を掛けようと思ったけど、その前に原因が分かった。
「あらー……」
今走ってたのシギ君だよね? ――バトンミス、かな。
「一組は大幅に遅れましたね」
「あいつはテンパると終わりだからな」
担任と友達が冷静にそんなこと言ってるけど、当の本人は確かにテンパっているみたいで今やっとバトン拾って走り出した。あはは、……シギ君軽く泣きそう。
さって、俺達まではもう少し。
どうなるんだろうね。