228+梅雨の合間に体育祭。/中
「アンタ足速いわねー、さっすがは陸上部」
「ふふっ、そう褒めるな、照れるよ」
体育祭中はずっとユウヤです!
百メートル走が終わって、リョウちゃんとミノルちゃんが参加してたみたいで若干暑そうに会話していた。
「ホントにミノルちゃん速かったね! でもリョウちゃんもすっごく速かったじゃん! 二位でしょ?」
「二位は二位でも、ミノルに比べれば凄く遅いわよ」
リョウちゃんはそう言いながらもちょっと照れ気味だった。素直な子って良いよね!
『次の競技に参加する生徒は、入場門に集まって下さい』
「ヒコク君のお兄さんっ! 借り物競争出るんでしたよね!」
「あ、もう? シギ君も出るんだよね? よ~っし、負けないよッ!」
「ぼ、ボクなんかが張り合える訳もないッスよ……」
嗚呼落ち込ませちゃった、……とりあえず、行こうか。
借り物競争のルールは簡単、コースの三箇所に設置されている三つの箱、そしてその先々にある三つのゾーンで箱から取り出した紙を開いて、それを其処まで持って来て次の箱に行く――っていう単純ルールらしいんだけど。中にはハズレもあるらしいから、そしたらまた箱まで戻ってもう一回紙を引くんだって、持って来れないものも然り。
「よーい、――」
パァン!!!!
一レーンってこう響くから嫌だ!
でも怯んでる訳には行かないぞ! 狙うはトップだし!
最初の箱は直ぐだった、ようし、良いの引くぞー!
ええと――胡瓜。
「ねえよ!」
「な、茄子……?」
隣のシギ君もそんなことを呟いていた、最初の箱のお題は夏野菜って訳か!
え、えと、キュウリ? 何でキュウリ? ええと、お弁当には胡瓜の漬物入れたけど教室だしさっ、……――よし、戻ろう。
という訳で戻りました。
他の人がおろおろしてるけど俺は戻る! もう一回引いてやる! 懸命だよね!
ようし今度こそ……――みかん。
「冬じゃねえか!」
一つ目はもうどうにかクリアして二つ目の箱!
結構皆時間掛かってたしね! 俺は飴でクリアしたよ、ポケット入ってて良かった!!
「次ー!」
引く! 走る! 見る!
――跳び箱。
「運べるかい!!!!」
戻るよ! そりゃ戻るっつーの! 馬鹿じゃないのコレ考えた人……!!!!
次次!
ええと、――長机……?
「ヒコク君のお兄さん」
「うん?」
「校長室のブロンズ像、……どう持って来ればいいんスかね……?」
「……引き直せばいいと思う」
ハズレばっかじゃないかコレホントにもう!
や、やっと最後の箱……! たった三つなのに疲れるんだけど!
ちなみに俺、長机運んだからな、もう会議室から運んでやったからな!!
周りに驚かれたよ! 何か文句言うなら体育祭の関係者にどーぞ!
「……ん?」
俺より前に結構人がいるんだけど、皆凄く難しい顔してる。
何が書いてあったんだろ……俺も見てみよう。
――汚いことなんて何も知らなかった、未来は明るいと信じていたあのときの彼……。
「ばーか!」
つい紙を投げ捨ててしまった、何なんだよホントにもうっ! 序々に胸糞悪くなってきたんだけど!
って畜生! 裏にピンクで“ハズレ”って書いてやがる……!!!!
「はいっ、次!」
さあ来いやあ!
――あ。
「あれヒコク君のお兄さん、コレならいけるんじゃないッスか? ボクなんか知らないけど下僕って出ましたよ、引き直して来るッス」
「俺も引き直す」
「え?」
いーの、コレは無理。
確かに居るけれど、――“親友”っての、今居ない奴に使いたいの!
結局もう一回引いて。
「あ、アサ君! コレ見て!」
「……?」
読めたけど意味分からなかったから近くに居たフウカ先輩に意味を聞いてみた。したら「アサキ君のところに行くといい」って言われたから急いで聞きに行った。え、敵チーム? アサキがそんなこと気にする訳ないじゃん。
「……あー……」
あ、何か面倒臭そうな顔した。
ついでに溜息もつかれた何もしてない我が弟だけれど、次には立ち上がっていて、
「行くよ」
って。……うん?
「どういうこと?」
「ソレ、僕のこと」
「え?」
そなの? ……全然分かんねえ。
「“二親等”――兄弟のことだよ、……面倒、マヒルが居りゃ良かったのに……」
アサ君はぶつぶつ呟きながら一人で向かっていってしまった。
……ふむ、兄弟ってことはこれもある意味ハズレ札の一種だったんだろうな、同じ学校に兄弟居る人って珍しいし。
「待ってよアサくーん!」
最後の箱は人関係らしく、皆試行錯誤してるみたいだし?
これで一位は頂きだねっ!!