226+電話します。
こんにちは、ふふっ、久しいね、ユキだよ!
折角の休みだというのに私は凄く暇なのだよっ! という訳でとりあえず皆に電話してみようと思うのだが……そうだね、携帯に掛けるのは初めてだな……ふふっ、そうだ、暇潰しに非通知設定で掛けてみようじゃないか!
『――はあい? どちらさーん?』
最初にカイリに掛けてみた。ふむ、なんとも慣れた取り方だね。
「ふふっ、私だよ」
『あん? ユキか?』
「流石はカイリだね! 声だけで私を判断してくれるだなんて! しかし関心しないのは、もし此の電話が私に似せた誰かがカイリに電話していたパターンだった場合、どうするつもりだったんだい!? ということさっ!」
『……何言ってんだよ、どんだけ似てようが俺がユキの声間違える訳ねぇじゃん』
「……」
ふむ、不覚にも少々ドキッとしたね。
『……もしもし?』
何やら面白そうな反応をしそうなリョウコに掛けてみた。なんと言う警戒心、三度目のコールでやっと出てくれたよ。
「……ふふふっ」
とりあえず笑ってみた。
『え、えと、どなたなんですか?』
「ふふっ、ふふふふっ」
『ちょ、ちょっと、あの』
「うふふふふふふふっ!」
『こ、怖っ!』
あ、切れたね。
……後で謝罪のメールをしようと思うよ。
『はい、ランですけど~どなたですか?』
自宅の電話如く出てくれたね、モモ。
「久しぶりだね、モモ」
『あ、もしかしてユキ君? お久しぶりー!』
うむ、彼女の声を聞くとやはり和むね!
「少々暇を持て余していたのでね」
『私も暇だったよ~? んとね、弟の作ったお菓子食べてたの』
なんとも有意義な時間だね全く、羨ましい限りだ!
『美味しいお菓子食べてるとね、嫌なことも忘れられるんだよ~』
「そうなのかい? それはよか――」
『明日の小テストも忘れちゃうな~』
「それは駄目なんじゃないかな」
モモを相手にすると、誰しもツッコミに回らざるを得ないね。
『……』
まさかも無言とはね! 相手は勿論アサキなんだけれど。
「……」
『……』
「……」
『……』
「……君は本当に喋らないね」
『何だ、ユキか』
アサキが喋り出すまで黙っていようと思ったが、流石に此れはない、もう一分経ってしまった。
『何処から電話してんの?』
「うん? 携帯だが?」
『何でいちいち非通知なんだよ』
「暇だからさ☆」
『……』
ふっ、このスルーされ具合、流石はアサキといったところだね!
あ、そうそう、そういえば聞きたいことがあったのだった。
「ねえアサキ、ユウヤは今何をしているんだい?」
『ユウヤ? ……アスカ君と電話してるみたい』
「やはりそうか」
先程二人にも掛けたのだが、繋がらない理由がようやく分かったよ。
『……用事ないなら切るけど』
「ふっふっふ、相変わらずだね君は! そんなところが良いのだけれど!」
『お前も変わらないな』
褒め言葉として受け取っていいのだよね? うん、そういうことにしておこうじゃないか!
「でもまあ、本当に用事も無いのでね、忙しいようであれば切ってくれて構わないよ?」
『……』
「……うん? アサキ?」
『何』
「切らないのかい?」
『うん』
「うん?」
『――だって、忙しくないもん』
……うんうん、やはりアサキも変わらないね、何と優しい御仁でありましょうか!




