218+初めまして会長さん。
「こんにちはー!」
「ちわーっす」
ユウヤです! 最近放課後が楽しみなんだよね! 皆でわいわいやってるのが好きだから、部活って名目で皆でゲーム出来るのはすっごい嬉しい!
って訳で今日も今日とてカイト君と一緒に旧生徒会室にやって来た――のは良いんだけど。
「静かに」
中に居たのはフウカ先輩だけで、他は誰も居なかった。……いや、違う、もう一人居る。生徒会長が座る様な机――まあ元生徒会室だしね――にて、誰かがうつ伏せていた。……誰?
「ハヤが寝ている、びーくわいえっと」
「何で英語で言ったんすか先輩」
口元に人差し指を突き立ててそう呟いた先輩に、カイト君がそうやって言ったけど、びーくわいえっとってなんて意味だろう。……聞いたら馬鹿にされそうだから帰ってからアサ君に聞こう、アサ君にはもう馬鹿にされ慣れたからいいんだ。
って、驚き忘れたけど生徒会長さん? 部活来るの初めてじゃない? 俺はそろーっと其方に行って顔を覗こうとしてみたけど、上手い具合に腕で見えないやー。
「ユウヤ君、ハヤを起こさないように」
「ふーい」
そっか、生徒会のお仕事で疲れてるんだもんね、俺は近くのソファに座って、
「起こさないようにしたいなら、フウカ先輩もゲームの音量下げれば?」
それだけ言っておいた。
結構大きいよ、うん。
「おーっし、俺の優勝だな!」
「キスギ先輩強ええ!」
「俺は格ゲー最強だぜ☆」
生徒会長が起きないまま、珍しく全員が集まった。計八人って訳か、こう見ると結構多いね。
サチ先輩とフウカ先輩、それにカイト君がテレビ使って格ゲーしてて、ゼン君とリョウちゃんは俺とソファ一杯使って寝転がってるアサ君がやってるゲームを覗いてる。ゼン君はこっちの覗いてるんだけど、リョウちゃんってばあんな近くでアサ君の見てるのに案外普通だよねぇ。
「うっわ、今アンタすっごくえげつない手使わなかった?」
「勝てば良いのさ、勝利こそジャスティス」
本人無自覚なんだと思うんだけど。……言ったら面白い程反応しそうだけど黙っておこう。
「よっし、またもサチト様のかっちィ!」
「サチトめ、無駄に腕を上げおって」
フウカ先輩は負け過ぎてどっかの玄人みたいな口調になってるし。カイト君はそうでもないけど「アサキー、パス」とか言ってコントローラーを更なる玄人に受け渡している。
「ふっふっふ、次はアサキが相手かな? 俺に勝てるとでも?」
「勝てるとでも、でなく、勝つんですけど」
ゲームのことになるとなんて頼もしいんでしょうか此の弟は。不適な笑みを浮かべるサチ先輩と無表情と見せかけてニヒルに笑うアサ君は、火花を散らすでもなく二人で格ゲーに向かってしまった。やってるのゲームなのに何で格好良く見えるんだろう。
「俺もやろう」
『え?』
「あ、」
何人の声が被ったかは分からないけれど、皆の背後からした声にフウカ先輩がコントローラーを渡したのが分かった。
「げ、ハヤやるんかい、まだ寝てりゃいーんに」
入学式の日に聞いた声と同じく響いた聞き覚えのある声、だけど凄く久し振りに聞いた声が俺達の横にやって来た。
「お前が下級生相手に大人気ないらしいからな? 少しは身の程を弁えさせてやろう」
「ふっ、ぜってー負けねぇ」
「第一な、お前達俺を寝かせる気があるならもう少し声を抑えろ阿呆」
おお、どうやら生徒会長さまも参加決定みたいだ……! 溜息混じりの其の声が何だか様になっていて随分心配だけど、生徒会長さまの実力もちょっと楽しみだ。先輩は画面を見る前に俺達の方を見て、
「挨拶が遅れた、サチト達から聞いているだろうが、二年のクロガネハヤだ。今後世話になる、宜しくな」
と、簡潔な自己紹介をニッと何ともイケメンな笑顔でして寄越した。……ストイックなイケメンだ……!(※死語)
皆もそれぞれ好印象を得たらしく、彼を見てほわー、っと唖然としている。反応していないのは既に画面にしか興味がないアサ君と、何やら面白くないらしいサチ先輩くらいかな。
何だか素敵な先輩さまだ、ふふふへへ。
ちなみに格ゲーの結果はサチ先輩が最下位だった。天狗っ鼻折られたり。