217+寂しい子は何時だってめげない。
「ひ、ひこっ、ヒコク君!」
「あ?」
「え、あ、何でもないっす……」
自分から呼んでおいてそれはないんじゃないかフドウ、何か意気込んだ様子だったのに何なんだか。アサキです。何落ち込んでんの此の馬鹿。
「何でもないなら最初から呼ぶなよ」
「え、いや、何もないっていうか何もない訳じゃないんスけどヒコク君機嫌悪そうですし今は時期じゃないというか……」
「高校生に時期なんざ考える頭ねぇだろうが、特にお前には」
「そうっすよね! あははっ! ……はあ」
相変わらずこいつは面倒臭いけど、見てて飽きないから良しとしよう。
今は放課後帰宅中、部活が無い&カイトが諸事情により休み――要するにお得意の風邪で――なのでこいつと帰ることになったのはいいんだけど、相変わらず面倒臭い。
「で、用件は」
「嗚呼、ええとっすね……言って怒らないっすか?」
「言ってみないと分からないけど、僕の沸点はそんなに低くはない」
ゲームか金に関わらなければそんなに怒ることはないんだけど。後最低限のプライバシー。
フドウは更に意気込んだ様子を見せれば僕を見て、
「じゃあ言うっす! えと、あのですね、あー、そのー」
とか何とか吃り続けていたのがうざかったので一発蹴り飛ばしました。
「あうっ!ちょ、今いった!!」
「早く言わないともう一発蹴るけど?」
「言うっす! 言うから蹴るのは止すべきっす!!」
ふん、初めからそうすれば良いものを。
「だから、あの、――此の後……暇、っすか?」
「は?」
何時もと変わらぬおどおどとした態度で何とも普通なことを言うものだから、つい呆れてしまったのだが。暇か暇じゃないかと問われれば……
「家でファミリーコンピューターが俺を待っている」
「い、一段と古いゲームっすね」
今は其れにはまってるんだから仕方ない。でもまあそれは後にしてやっても良いが、暇だと如何なるんだ?
「あの、実は……こ、此の後寄りたい所がありまして」
「ふうん、寄れば?」
「だからあのっ! ヒコク君も一緒にどうかと……!」
「何処」
「本屋……」
「良いよ」
「本当っすか!?」
「え、どっちでも良いけど。行くの、行かないの?」
「行くっす!!」
フドウは意気揚々と手を上げて、輝かんばかりの笑みをみせた。そんな大袈裟な。
「ボク、あんまり友達とかと出掛けることがなかったので、ちょっと嬉しいんですよね」
「嗚呼そう。……ゼン君は?」
「ゼン君は基本あっちから誘ってくれますもん」
唯一居た友達がゼン君だった、と解釈すべきか否か。……寂しい、寂し過ぎんぜ此のちっさいの。
「それじゃあ行きましょうヒコク君!」
照れたようにして己の過去を暴露した訳だが、今はもうどうでも良いのか笑顔で天に拳を掲げていた。
「だが断る」
うざかったのでそう言っておいた。
「ええ!?」
「冗談、行くよ」
「え、冗談? ……行くっす!」
まあこいつを弄ぶのはまた今度にして、僕は先を歩いていたフドウを追い抜くようにした歩き出した。
さーて、今日の夕飯何だろう。