212+謎に包まれる生徒会長。
「んでは諸君、本日の部活動を開始する!」
旧生徒会室に集まった俺達にそう言ったのは部長ことキスギ先輩で。ソファに座ってそれを見ているは俺含む一年生だ、カイリですけど。
「其の前に一言。ごほん、――今年の一年生入部数は五人、何とも嬉しきことかな! ぶっちゃけゼン以外望み無ぇかと思ってたから嬉しいったらありゃしない! こんだけ居るならもうゼン要らないかなみたいな」
「さっちん、愛しのゼン君も泣いちゃうわよ」
ゼンが冗談を言うのはさておき。
「今日は不在だがまさか女子部員が入るとも思わなんだしな、見て分かる通り副部長も喜んでおられるぜ!」
キスギ先輩はんなことを言って、お茶汲みに徹底しているヤコウイン先輩に視線を向ける、――相変わらず表情が読めない先輩だ。
「嬉しい」
わざわざ口で言ってくれちゃったよ、ちなみにリョウコは用事で居ないっつー訳。
「そしてもう一人、我がゲームクリエイト部の会計兼我が校生徒会長ハヤからも一言授かっている!」
「生徒会長さんって苗字何だったっけ?」
「僕が知るか、入学式寝てたよ」
双子がそんなことを言ったのはスルーされ、キスギ先輩はただ一言、俺達を指差しながら言った。
「“キスギとヤコウインを宜しく”――だ、そうだ!」
「「――任されてる!!!!」」
つい叫んじまったけど、ユウヤも同じだったらしく立ち上がってた。ゼンはけらけらと楽しそうに笑ってるけど、生徒会長さんって一体……。
「うちの会計は忙しいからなー、あいつが居なかったらうちの生徒会は回らないし」
「ハヤはうちの生徒会の書類仕事を、全て一人で回している」
「え、ちょ、大丈夫なんスかそれ、先輩達何の為の生徒会役員……?」
「私は力仕事専門、ハヤが動くの苦手だから」
「俺は飽きるから」
なんつー生徒会なんだよ……書記と会計のやる気の無さが――ってキスギ先輩今飽きるって、此の人生徒会の何担当してんだよ。
「生徒会長、動くの苦手って……」
俺が心中でツッコミを入れいる隙にアサキが呟いた。確かに動くの苦手とか馬鹿みてぇなことだとは思うが、動くの嫌いなお前にゃ生徒会長さんも言われたかねぇと思うけどな。
「嗚呼、そりゃあだって――」
バタンッ!
「キスギッ!!」
と、アサキの呟きに口を開いたキスギ先輩を遮ったのは、部室の扉が勢い良く開く音、そして見知らぬ先輩がキスギ先輩の名を呼ぶ声だった。
「あん? 今は神聖なる部活動中だぞ?」
「いや、だって――クロガネが」
不満そうなキスギ先輩、けど相手の先輩がそうやってとある名前を口にした途端、キスギ先輩は開け放たれた扉へと向かって行った。
「ったくあんの馬鹿は……フウカ、ちょい行ってくらぁ」
「いってらっしゃい」
そしてその先輩共々、何処かに行ってしまった訳だが。クロガネ、とか言ってたよな確か。
「あ」
「ん、どしたアサキ」
「思い出した」
ぽん、と手を叩くかのようにアサキが呟く、今日はテンションが低いようで――何時も低いけどよ――声がちっさいけど、そんなテンションのままで続ける。
「クロガネハヤ、生徒会長の名前だ」
「其の通り」
そういうことかー……、キスギ先輩は、ハヤ先輩ことクロガネ生徒会長関連で出てったんだな。ヤコウイン先輩もこくこく頷いてるし。
「サチトの役目はハヤのお守り」
「お守り?」
「ハヤは多分――貧血でくたばってる」
……はい?
「人一倍真面目だけど、ハヤは重度の貧血持ち。よくぶっ倒れる」
「よく、って?」
「無理をしなければ問題無い――ことも無いけど、無理をするから直ぐにばたんきゅー」
可愛くばたんきゅー、とか言ってくれちゃうヤコウイン先輩だけど、……其れって問題じゃね? っていうか何か小声で聞こえた、聞こえたけどスルーだ。
「だから、ハヤのお守りがサチトの役目」
「嗚呼……そうなんスか」
入学式でしか見たことない生徒会長さんの印象が、此の人達の手によって変わってきてしまっている。
ホント、早く部活来ないかな、生徒会長。