208+場所が変わっても少女の想いは変わりません。
「げ、ゲームクリエイト部?」
昼休み、リョウちゃんに部活のことを聞かれたから答えたら、すんごい驚かれましたユウヤです。
「何よその部活、明らかに変なオーラ漂ってんじゃない」
「んなことねぇぞリョウコー、生徒会長所属の部活だ」
「生徒会長は忙しいからそういうあまり行かなくていい部活に入るんじゃなくて? ――ってロクジョーカイリアンタは何時まで昼ご飯食べてんのよ!」
隣の席のカイト君が口を挟めば、リョウちゃんががなる。俺と同時に食べ始めたはずなんだけどね、食べる量がぱないんだよカイト君は。
「まあまあリョウちゃん、そういうリョウちゃんは?」
「何がよ」
「部活だよ、何入ったの?」
「……」
「未だ入ってねぇとみた」
「五月蝿いわねっ、吟味してんのよっ吟味!」
中学時代は確かバドミントン部だったはずのリョウちゃんだけど、もうバドミントンはやらないのかな? 結んでた長い黒髪も今じゃあ綺麗に背に流しちゃってるし、……さっすが女の子って感じだよね。
「リョウコはバドミントン部じゃねぇの?」
「私は続けるつもりないの、だからどうしようかなって」
「だったらリョウちゃんもゲーム部来ればいいのに、リョウちゃんゲーム出来るよね?」
「で、出来なくはないけど……」
「それいーじゃんいーじゃん、女子ヤコウイン先輩しか居ないんだし、ゲームクリエイト部の皆も賛成してくれんぜ?」
「はいはいはーい、今俺の話してたっしょお三人方?」
「ひゃあ……!!!!」
「あ、ゼン君」
噂をすれば何とやら、リョウちゃんの背後に現れたのは某噂の部活のゼン君だった。真後ろだからリョウちゃんは驚いてるけど、俺達は見えてたからぜーんぜん。
「ななななななな、何アンタ誰!?」
「同じクラスのワタヌキですケド。一年同じクラスなんだからヨロシクカトウちゃん」
恐れ戦くあまり座るカイト君の後ろに回り込んだリョウちゃん、俺の方来た方が早かったのに心外な。
「そんなに怖がらなくても、女の子にはヤサシーのよ? 貴女の為のゼンです」
「何処のホストよアンタは! 無駄な決め顔やめなさい!!」
リョウちゃんは初対面から飛ばしてます、ゼン君も初対面からボケ倒してます。……うん、仲良く出来そうだね!
「んでカトウちゃん、何々、うち来んの? カトウちゃんみたいなカワイー子なら大歓迎」
「かっ、かわいっ!?」
「あー駄目駄目、リョウコには先客居るから」
「先客? それは惜しいね、カトウちゃん超カワイーのに。一体何処の馬の骨だ」
「一組の馬の骨だよつーかテメェ人の弟馬の骨つったかあぁ?」
「ユウヤ落ち着けお前も馬の骨って言ったっしょ今」
いけないいけない、つい眼飛ばしちゃったよ。ゼン君も若干ビビってるし気をつけなきゃ。
「何だ、カトウちゃんあっ君のことが好きなの?」
「ばっ、だっ、だああああああ!!!!!!」
「ごめんカトウちゃん聞かないから正気に戻って」
リョウちゃんは高校に上がって、よりアサ君の話題に弱くなりました――話題に触れなければアサ君とだって話してられるのにね。本人の前だとそうでもなくなってきたのにどうしてだろう? 人間の神秘だよね。
「でっもまあ、カトウちゃんの恋なら俺は応援するよ、ゼン君ヤサシー」
自分で言うかなこの優男は。茶髪で優男っていえばアスカもそんなだけど、全然人種が違う気がする。多分此の話をアスカにしたら『似ても似つかな過ぎて虫酸が走りますね(笑)』くらい言ってくれちゃいそうだもん……うわあ容易に想像出来て怖い。
「え、えと、ありが、とう」
「どいたま。……で、部活の話も丁度良いじゃん、あっ君も居るし、サチとかフウカ先輩も女子部員大歓迎だと思うし」
にっこりと笑みを浮かべた後には人差し指を天に向け、此の見た目は不良に近い長身はそう言った。
「ゲーム出来る女の子って貴重だし、是非是非だね」
「ほんと? じゃ、じゃあ、入部……しよっかな」
照れた様子を見せながら、リョウちゃんは小さく首を傾げそう言った。やった! これでまた部員も増えた訳だ!
「よっしゃ! そんじゃ改めましてヨロシクカトウちゃん、俺サチに報告してくらあ!」
「え、ちょ、もう授業始まるわよ!?」
「サボるー!」
「ゼーン、次ハヤサカの授業だぞー?」
「――五分で戻る!!!!」
シュタッと格好良く出てった割になんと潔くないんだゼン君。一階下の二年の教室にひとっ走りしに行ったゼン君を三人で見遣り、元気な不良だなあと思ったのは絶対俺だけじゃないと信じたい。
「迷惑じゃ、ないかしら」
「は? 今大歓迎って――」
「そうじゃないわよロクジョーカイリ!」
「アサ君なら多分迷惑だなんて言わないよ」
「……そうかな?」
「うん!」
だってアサ君、基本他人気にしないもん。――流石に口にはしなかったけど。ゼン君じゃないけど、俺ってばヤサシー!