203+俊足の貴公子?
リョウコです、リョウコですったらリョウコです。いきなりごめんなさい混乱してます。
ガヤガヤ
高校に入って、私にも友達が出来ました。
ガヤガヤ
地方に住んでる子なんだけど、部活が忙しくてよくバスを逃すらしいのよね。そんなちょっと抜けてる子。
「キャー! エノミヤセンパーイ!」
「お疲れ様ですエノミヤセンパイ!」
「あ、来た」
けれど優しい子で気の効く子――そして。
「すまないリョウコ、待たせたか?」
「ううん、今来たわ」
――よくタオルま塗れになっている子です。
――って違う! なんか私のテンションじゃないわよこんなの! やっぱ直すわ!
真っ白いタオルを幾つも投げ付けられた様子の彼女、名前はエノミヤ ミノルって大層男前なんだけど、性格も男前なんだから仕方ない。
中学の頃から同性にモテてたらしくって、放課後の部活終わりにはこんな感じで後輩の中学生がミノルを見にわざわざ学校までやって来るみたい。タオル渡すってったってほぼ投げ付けてんじゃない……当番制にしなさいよね、というか断らないミノルも悪いんだけど!
「リョウコ、リョウコ、見てくれ、今日は十二枚だ」
「何数えてんのよ」
「新記録かもしれないな、受け取れた枚数」
「まず避けなさい」
厚意を無駄に出来ないっていうのは分かるけど、流石にタオルそんなに沢山要らないでしょ……。
高校に入って髪を下ろした私、でもミノルは元から結んでなかったのか凄く綺麗な黒髪をひとつ縛りにしている。何であんなに綺麗なんだろう……ホント羨ましいわ。
「ではリョウコ、帰ろうか」
「そうね、またバス逃すものね」
一緒に帰らない時はほぼバスを逃してるらしいミノル、どんだけ部活命なのよ。確か陸上部の期待のルーキー、とか言われてるの聞いたけど凄いわよねー、競技は短距離って言ってたかしら……?
「涼しい時期は良いけど、これから熱くなると大変助かる」
「何が?」
「此のタオルだ」
たまに主語ないのよね此の子。
「でもさ、タオルどうしてるの?」
「洗って帰すに決まっているだろう? 彼女達に」
『お疲れ様でしたー!!』
未だ居たのミノル親衛隊(命名)。ってよく見たらタオルに各々名前書いてあんじゃないの、返して貰う気満々なのが何か嫌ね!
「……昔からああなの?」
「気付いたらああなっていた、困ることは無いからいいんじゃないかと思ってる」
「さ、騒がしくない?」
「部活中は静かなんだ、ちゃんと配慮のなっている子達で助かっている」
……まあ、ミノルがそう言うならいいんだけど。ああいう子達って普通ミノルと仲良い人を怪訝にするのかとビクビクしてたんだけど、さっき満面の笑みで、
『あ、ミノルセンパイ! カトウ様がお見えになられました!』
って連絡してくれたしなぁ……。悪い子じゃないなら、とりあえずいっか。
今はまず、鞄にタオルを詰めてるミノルの手伝いをしてあげることにしようかしらね。